新生ヤマワケエステートで新たに登場した新型ファンドの特長
ハイリスクはリターン型で、10%を大きく超える高い利回りで立退き・更地解体型ファンドなど、多様なファンドを提供してきたヤマワケエステートですが、2024年後半から2025年3月までには運用期間延期、償還遅延、親会社の代表取締役退任など様々なことがありました。
運営体制の見直しなどの影響もあり、ヤマワケエステートでのファンド組成は、2025年2月3日募集開始の「東京都板橋区成増 レジデンスファンド」から、2025年3月19日の「江東区亀戸エリア 新築ファンド」他1ファンドまで1カ月以上の空白期間を持つこととなりました。移行3月21日の2ファンドもシンプルな戸建分譲ファンドで、募集額は1ファンド4,000万円程度という、これまでにも多数組成してきたパターンのファンドでした。
今回募集のファンドは、これまでとは特長が少し異なるファンドとなっていますので、違いや特長を解説したいと思います。
ファンドで行う事業は、「権利調整案件」で、借地権付建物の底地取得をめざすもの
今回取得する不動産には「借地権付き建物」や、「共有持分の土地」が含まれる状態です。
「借地権付き建物」とは、土地の所有権がなく、借地上に建物を保有している状態です。
借地権というのは強い権利で、契約期間の満了、かつ、現有の建物が存続している状態の場合、違法行為等がない限り借地権を存続させることが基本的に可能ですが、建物の建替えは自由にできません。
そのため、
再開発などが自由には行えないという課題があり、資産価値が低くなったり、買い手が見つかりにくくなります。
また、「共有持分」は、複数の方が同じ土地を共有している状態で、建替えや抵当権設定に制約が生じるため、資産価値が低くなったり、買い手が見つかりにくくなります。
このような物件は、再開発が円滑に進まず、土地の価値が最大化できないままの状態となっているケースがあります。
本ファンドは、そういった不動産を取得し、
権利調整して再開発ができる状態にすることで資産価値を向上させ、売却益の獲得をめざす事業となります。
ヤマワケエステートではこれまで、
こういった権利調整事業やリスクについてあまりサイトで触れていないケースもありましたが、本件では、明瞭に説明されています。
新体制において、情報開示に対する積極姿勢にある、と捉えて良いのではないでしょうか。
本ファンドでは、底地権と借地権を取得し、土地の所有権化を目指します。
一般的に借地権が付いた底地は、不動産価値が低いとされています。本ファンドでは土地を所有権化して更地にすることにより、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
ヤマワケエステート公式サイトの解説
どのようなリスクがあるの?
共有状態は、例えば相続において複数の親族に分割されることで生じます。
対処策としては、共有持分を持つ所有者に交渉して、共有持分を譲渡(買い取る)いただくことで、完全所有権を確保することができます。
ただ、親族が不仲な場合や、例えば先祖伝来の土地を売って現金化したい方もいれば、子孫に残したいと考える方もいるような場合、「お金を積まれても売らない」と言われてしまえば、この交渉は前に進みません。
特に地方部や、歴史のある土地などでは、何世代もかけないと解消できない、といったケースもありますので、共有持分の所有者の意向次第、ということになります。
建物の安全性に問題が生じているケースや、再開発することによる経済効果が非常に大きい場合など、いくつかの条件を満たすことで裁判などの手段で解消できる可能性もありますし、交渉の結果想定より高額な価格での買取を求められる可能性もあります。
容易に解決できるケースももちろんありますが、まとまらない時には本当に時間も金もかかるため、それなりにリスクのある事業だという理解をすべきでしょう。
また、借地権付き建物の場合も同様で、過去にはなんらかの事情で、土地は売らずに借地権を設定してその土地上に他人の建物(現在の建物)が立っているわけです。
「絶対に土地を売らない」といわれれば、借地権付き建物の状態は解消できません。
この対処としては、土地オーナーが、「地主」としてその土地の継続保有を志向しているのであれば、建替え交渉をして、新たな建物についても借地権を取得することで、再開発が可能になりますので、土地の取得ができなくとも、対処策がいくつかある、ということになるでしょう。
ただし、ワーストケースとして、土地保有者が、現借地権契約終了後、自身で建物を建てたい(例えば収益マンションの他、たとえば自宅用というケースもあるかもしれません)と考えていた場合には、建物の建替えを承諾してくれないかもしれません。
そうなると、この借地権建物は、原契約と建物の存続期間終了後には、解体して更地にして土地を返す必要が生じます。
それまでの期間に建物から得た収益(賃料など)は得られますが、再開発はできない、という可能性すらあるわけですから、
事業収益の触れ幅はかなり大きい事業と言えるのではないでしょうか。
こういったリスクも踏まえると、ファンドの
想定利回り11%というのは不動産クラウドファンディングの中でもかなりのハイリターンですが、相応のリスクもある、ハイリスクハイリターンファンドとして、それなりのバランスが取れていそうです。
各投資家のリスク受容度にもよりますが、分散投資先に加えることで、期待リターンを高められる可能性はあると感じますので、投資先候補として検討する余地はあるのではないでしょうか。
同様のファンドはあるの?
不動産クラウドファンディングでは、こういった権利もの案件の代表格が、COZUCHI(ファンド運営:TRIAD)のファンド郡でしょう。
これまで多くのファンドを組成しており、時間をかけながら、利回りの上振れ事例も多数生んできています。
こういった権利調整が得意な事業者は業界でもある程度存在しており、これまで蓄積してきたノウハウや協力会社のネットワークなどを使うことで成功確率を上げることもできる事業、という見方もできるでしょう。
正直100件やって100件大成功に終わる、といった期待を持つより、一定確率で延期や損失が生じて不思議ではないと考える方が良い事業タイプですが、成功すれば高い利益率を狙えるケースが多い、というのも事実でしょう。
新しい経営体制で、何が変わった?
リスクや事業内容を積極的に情報開示する姿勢となった、ということをここまでに触れましたが、その他に変わった点はあるのでしょうか?
ここではファンド以外の開示資料にも触れて解説します。
WeCapitalの宣言
ヤマワケエステートの親会社であるWeCapital株式会社は、4月3日に
新たな経営体制のもとでのガバナンス強化についてというお知らせをWebサイトに掲載しました。
内容は以下の通りで、率直に言えば、一般投資家の出資金を預かり運用するファンド事業を子会社に持つ企業に対して、ごく普通に求めたいことがかかれているに過ぎない、という印象です。
しかし、それを
あえて宣言し、改めて新しい経営体制でガバナンス強化の上でサービスを継続していくことを宣言したことに意味があるのでしょう。
新たな経営体制のもと、改めて投資家との信頼関係を再構築し、サービスを再度成長軌道に載せていけるか、今後の取組みに注目していきたいところです。
ガバナンス強化の取り組みについて
WeCapitalグループは、投資家の皆様にとってより良い投資環境を提供することを最優先とし、以下の取り組みを進めてまいります。
1.投資案件の審査基準の厳格化
・新経営陣のもと、リスク管理を徹底し、主に都市部の資産価値が高い不動産を中心に案件組成を行ってまいります。
・親会社である株式会社REVOLUTION(不動産のプロフェッショナル)と連携を強化し、親会社のノウハウを活用した専門的な視点で物件の価値や将来性など精査いたします。
・上記の専門的な視点を取り入れることなどを通じて、取り扱う案件を優良なものに厳選。トラブルリスクを回避し、さらに信頼性の高い商品を提供いたします。
2.コンプライアンス体制の強化
・法令遵守の徹底とリスク管理を強化するため、社内の審査プロセスを見直しいたします。
・経営陣が参加する経営会議体にてファンド運用のリスク管理を徹底いたします。
3.投資家とのコミュニケーション強化
・お客様によりご満足いただける投資環境を整えるため、お客様からいただいた様々なご意見・ご要望を、新経営体制の会議体で定期的に精査し、1つずつサービスの改善に努めてまいります。
協力事業者は?
これまでのヤマワケエステートでは、
協力会社名が記載されているケースが多かったのですが、本件は、協力会社の名前がありません。
取得する不動産も、これまでの場合、協力会社の保有していた不動産をファンドが取得するケースがありましたが、一般個人の保有している物件のようですので、協力会社の存在を確認することはできなさそうです。
かといって不安を覚える必要はなく、ヤマワケエステートという企業の責任で、しっかり事業をやりきる、というようにフラットに受け止めるのが良いと思います。
なお、ここ最近の一連の騒動の中で、元OB等から、ヤマワケエステートのファンドが、あたかも協力会社が主体で運営されているように誤解されている方がいるかもしれません。
が、実際のところ、他事業者がファンド運営をするかのように説明することは、脱法行為との指摘を受けるリスクが高いでしょう。
不動産特定共同事業の許可を得ていない事業者が投資家から預かった資金に基づく不動産の運営を行うことはそもそもできません。これまでもこれからも、あくまで、ファンドの運用責任は、ヤマワケエステートにあり、投資家はヤマワケエステートにその運用や売却を一任するという契約形態です。
ヤマワケエステートが協力会社にどのような業務を委託し、責任を負わせていたとしても、これまでも特段の担保があったわけでも、投資家が当該事業者に直接責任を問えるわけではありませんので、本来あるべき姿に戻っただけ、と捉えるのが良いのではないでしょうか。
ファンドの組成規模や事業者報酬
ヤマワケエステートのファンドでは、ファンドの組成時に、投資家からの出資金を原資に、運営事業者であるヤマワケエステートへの報酬が支払われる契約となっています。
今回この点にも変化があったかもしれません。
具体的には、ここ直近のファンドに加えて、期間延長などの問題がまだ表だって騒がれていなかった、2024年末頃のファンドも含めて報酬条件や調達額を調べると、以下の通りとなっています。
今回のファンドは調達額が大きく、かつ、運営事業者の報酬率もこれまでの案件に比べて高いため、事業者としては効率的に収益を確保できそうです。
投資家にとっては、最初にファンドの出資金から引かれる報酬が増加することで、配当原資が経るというデメリットもありますが、管理人としては、デメリットだけではないと感じます。
というのは、現在多数のファンドを運用する中、更に投資家の信頼再獲得や、着実なファンド運営を行っていくことが必要なわけですから、
事業の持続可能性を確保する上では、一定の収益を得つつ、投資家に相応の配当も確保していけるという事業構造を確立することが重要です。
まだ、本ファンドの安定運営ができるという証明がされたわけでも、事業運営に必要十分な報酬がこの水準であると確認されたわけでもありませんが、新しい体制のもと、事業の再構築が進められていること自体は感じられるのではないか、と思います。
| ファンド名 |
募集開始日 |
募集額 |
事業者報酬 |
| 東京都品川区西五反田 宅地ファンド |
2025/4/7 |
627,000,000円 |
組成の対価として出資金額の5%を受領 |
| 東京都江戸川区瑞江 新築ファンド |
2025/3/21 |
34,000,000円 |
出資金額の3.5% |
| 東京都板橋区成増 レジデンスファンド |
2025/2/3 |
438,000,000円 |
出資金額の4.5% |
| 東京都港区赤坂 駅近収益ビルファンド |
2025/1/22 |
621,000,000円 |
出資金額の1.8% |
| 大阪 大国町 3rd 土地バリューアップ |
2024/12/18 |
266,000,000円
| 出資金額の3.5% |
| 兵庫・神戸三宮駅前 収益ビルファンド |
2024/12/17 |
117,870,000円 |
出資金額の3.5% |
権利調整もののリスク審査、WeCapitalに期待して良いの?
前述の通り、親会社であるWeCapitalが「1.投資案件の審査基準の厳格化」を宣言しました。
本件の審査については、どういったポイントを見るのでしょうか?
管理人が予想するなら、リスクに関わるポイントは大きく2つはあるでしょう。
①底地権者や共有持分からの買取ができるのか、できない可能性の高さはどうか
②できない場合に、どのようなリカバリー策があり、その際の最大損失はいくらになるか
ただ、管理人個人の見解としては、
①についての審査はかなり難しい類の案件ではないか、と感じます。
案件を持ち込んできた協力会社や営業としては、「●●という状態なので、これくらいの費用で対応できそう」という説明をしますが、仮にそこに過失や悪意があった場合に、そのクロスチェックが難しいです。
共有持分を持つ方が、「売るつもり」だとしても、その方に影響力の強い方が反対するかもしれません。
ましてや、営業担当がそこを軽く見ていて読み誤っていたとしたら、審査部門の確認には限界があります。
(審査部門がその方に、「ほんとに売ってくれるんですか?」って直接聞けるわけはありませんし、複雑な人間関係を直接入り込んで紐解けるか、というと容易ではないでしょう。)
もちろん、上記②で記載した、できない場合のリカバリー策や最大損失の他、完全所有権が確保できた場合に利益が確保できるか、などについては、デベロッパーとして事業収支を組んだ人間ならそこまで難しいものではなさそうですので、審査が充実することの価値がゼロという意味ではありません。
ただ、新体制初回がこの案件ということからは、やはり、
「手堅い」「堅実な」といったファンドというよりは、ハイリスクハイリターン型の、高利回りファンドという特性でサービスを再始動させていくということかもしれません。
元本保証がない投資であることは理解の上で投資判断を
本記事ではリスクについても丁寧に解説したつもりですが、改めて、元本保証がない投資商品であることはご注意下さい。
また、本ファンドは不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングサービスですが、運営事業者から倒産隔離されていないため、運営事業者が万一倒産するようなケースにはその影響を受けます。
特定のサービスに集中投資せず、分散投資することを前提に投資検討されることをお勧めします。
<その他参考記事>
償還遅延について:
ヤマワケエステートの償還延期問題の経緯・問題点と不動産クラファンの注意点
親会社(REVOUTION、WeCapital)との関係について:
ヤマワケエステートの償還遅延等がREVOLUTION、WeCapitalに与える影響は?