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ヤマワケエステートの償還延期問題の経緯・問題点と不動産クラファンの注意点

【2025年3月7日 11:30 PM】

ヤマワケエステートの償還延期問題とは

SNSやWebサイトなどでヤマワケエステートの契約期間延長や、償還延期問題が(投資家界隈では)大きな話題となっています。
当記事では、この問題の中身や問題点などについてまとめてみます。

起きたこと

・投資家に伝えていた償還予定日までに対象不動産の売却/決済が完了せず、投資家への償還が延期となった
・契約期間自体が延期されておらず、契約期間は終了している
 ※契約期間は、契約期間終了の1カ月前までに投資家に通知することで可能だが、今回はそこでの延期通知はされていない模様なため、契約自体は延期されず終了したが、償還のみが延期となっている

ヤマワケエステート開示資料:運⽤終了後の償還延期に関するご説明(2025-03-07)

償還遅延となった対象ファンド

・62号.札幌市宮の森 2nd隈研吾&Knight Frank社
・106号.札幌市宮の森 3rd 隈研吾&Knight Frank社
・119号.札幌市宮の森 4th 隈研吾&Knight Frank社

ヤマワケエステートは、償還を今する義務があるのか

投資家との契約上は、約款第10条の1項(1)の定めで契約が終了し、同第10条2項の定めにより、対象不動産を換価処分(要は売却して現金化する)した上で、諸経費を引いて残った残額を、投資家の出資額に応じて出資の価額として返還する義務があります。
不動産特定共同事業法(不特法)に基づく匿名組合契約では、不動産現物の出資も返還もNGのため、とにかく現金化しないと、償還できませんので、不特法に基づく不動産クラファンは、いずれもこのような考え方になっています。

(本契約の終了・本事業の清算)
第10条
1. 本契約は、以下のいずれかの事由が生じた場合には終了する。かかる事由の発生により本契約が終了した場合、本事業者は、本出資者に直ちに通知するものとする。
(1) 第9条に定める本契約の契約期間の満了
(2) 対象不動産全部の売却等の完了
(3) 本事業の継続の不能
(4) 本事業者に係る破産手続開始の決定
(5) 出資総額が第2条第1項に定める出資予定総額に満たない場合であって、本事業者
が第2条第3項に基づき自ら出資を行わないときその他のやむを得ない事由があるとき。
2. 前項の規定によって本契約が終了した場合、本事業者は、本事業において金銭以外の資産があればこれを換価処分した上 、本事業に係る資産から本事業者報酬を含む本事業に係る一切の債務を弁済し、第8条第4項に従い、速やかに最終の計算期間に係る匿名組合損益及び本出資者に分配すべき匿名組合損益を確定し、本事業に属する金銭から清算手続に要する費用その他の残余財産から支払われるべき費用を控除した金額をもって、以下の順序で優先出資者及び本事業者に対して出資の価額の返還を行うものとする。

なぜ起きたか

(1)ヤマワケエステートは、売却・償還可能と想定していた
運用期間の延期が可能であった契約期間終了の1カ月前時点では、ヤマワケエステートは、売却・償還可能と想定していたとのことです。
不動産の売却は大きく、以下のような3ステップで行いますが、①までを受領していたため、期限までに決済できると想定したことものの、②の手前で商談がストップしてしまったとのこと。

①買い付けを受領する
②詳細条件を具体化し、売買契約を締結する
③準備期間を経て、不動産の引き渡しと資金決済(銀行への入金確認)、不動産移転登記を同日に実施する

①の段階では法的拘束力がないケースが多いのですが、不動産業者の場合は、買い付け後に正当な理由なくキャンセルすると、業界での評判に傷がつくため、それなりの意味があります。
②の段階では法的拘束力がありますが、手付金を放棄することで解除することができます
また、例えば外国人富裕層などの場合、母国から資金を日本に持ってくるのが容易ではないケースもあり、しっかり資金決済までが行われるまで、油断ができない、といったケースも有ります。

余談ですが、ドラマや書籍「地面師」の事例では、③で資金決済が済んだのち、移転登記を申請して地面師詐欺であることがわかったものの、既に資金が相手方に渡っており、被害にあった、という内容でした。

今回は相手方が明示されていませんが、協業先が海外富裕層チャネルに強い企業出会った案件ですから、正直、②、③まで完了して初めて安心できる、という案件かもしれませんね。

配当はいつまでの期間分支払われるのか

契約上は、契約で定める「当該計算期間の前の計算期間まで」分の想定配当利回りを乗じて配当金を算出します。
そのため、この「計算期間」がいつからいつまでと考えるかで、配当がつく期間が決まりそうです。
考え方については判例などがあるわけでもなさそうですし法律の専門家の範疇になりそうですので、ヤマワケエステートの考え方の通知を待っていただければと思います。

ただし、この配当も元本償還も、あくまで、「不動産の運用、売却を経て残った資産」が上限額です。
優先出資者である投資家は、劣後出資者である事業者よりも優先的に配当を得る権利はあるものの、それはあくまで、利益が出た範囲で、になりますので、配当が保証されるものではありません。

ヤマワケエステートの今回の対応の問題点

今回はSNSなどでも大きな騒ぎとなっています。
これまで、他のサービスでは同じことは起きなかったのでしょうか?それとも、ヤマワケエステートで特に大きな問題があったのでしょうか?
簡単に解説します。

情報開示の不正確と遅れが、問題を大きくしたのでは

管理人は対象ファンドに投資しておらず、情報がタイムリーに把握できていないのですが、時間軸としては概ね、以下のような時系列となっています。

2024年12月31日:運用終了と満額配当予定である旨、償還予定日を通知/開示
2025年2月28日頃:上記記載の償還予定日だが償還がなく、償還延期の通知が投資家にだけ届いた
2025年3月7日:運⽤終了後の償還延期に関するご説明(2025-03-07)をにて、償還延期した旨や背景、今後の対応方針について開示

大きな課題と感じる点は、
①2024年12月31日に一旦投資家を安心させていたのに、償還予定日直前でいきなり十分な情報開示がなかったこと
②2025年2月28日頃に償還延期を通知する際に、対象投資家にだけ情報開示した上、投資家が納得できる情報ではなかったこと

から、SNSなどを中心に不信感が広がったのだと想定します。

ヤマワケエステートでも、早い段階で償還時期の延長が必要と判断された案件では、期間延長の通知と開示がされていますので、本件ではやはり、想定外に売却がまとまらなかったという事情はあるのでしょうね。
第25号 青森・八戸地方再生にアジアンエンタメインドアテーマパーク期間延期のお知らせ

管理人個人としては、2025年3月7日の開示内容は、不動産業界にいる管理人にとってはそれなりに理解ができる内容ではあるのですが、みなさんの受け止めはいかがったでしょうか。

SNSなどを見る限り、投資家には不動産クラファンの仕組み(売却しないと償還がされない)そのもの認知がされていないケースがあることや、不動産の売却時期がずれ込むといったリスクが認知されていなかった方も多いと思います。
当サイトは元々、「正しく仕組みやリスクを理解して、投資先ファンドや起業をよく調べた上で、更に分散投資を推奨する」という、投資リスクがあることを大前提としての情報発信を志向していますので、当サイトを以前からご覧いただいていた方には管理人に近い受け止めをしていただけた方もいるかもしれませんね。

ただ、不動産ビジネスは、なかなか一般業界の方には理解しにくいというのも、本当によくわかります。
全体に難解な内容も多いですが、今回を契機に不動産クラファンに不安を感じた方は、当サイトの不動産クラファンに関するノウハウやリスク解説記事を、お時間がある際でも覗いていただければうれしいです。

なお、このノウハウ系記事の中には、不動産クラウドファンディングで、対象不動産を売却できない場合にはどうなる?という、まさに本件のような事象を想定した解説記事も過去に掲載していますので、改めてご覧いただければ幸いです。

他サービスではどうしているのか?

実はこれまでも、多くのサービスで売却時期の遅れで償還時期が遅れることは起きています。

ただし、これまでのサービスでは、契約期間終了前に「延期通知」を行っている他、情報開示もしっかりしていることで、投資家が多少同様しても、結果として逆に信頼を勝ち取っているケースも多いです。
「延期通知」以外のやり方では、当初想定していなかった「フェーズ2」や「フェーズ3」を募集する形で、一旦現状のファンドを償還してしまうケースもありますが、売却で苦戦していることを指摘されることはあっても、ここまでの騒ぎにはなっていませんでした。

一度不信感を持たせてしまうと今はネットを通じて悪評が増幅されてしまいますので、今後は丁寧でタイムリーな情報開示を期待したいところです。

不動産における売却時期の遅延って多いの?

正直、不動産が想定した時期に売れない、ということ自体は、「普通に起こりえること」、というのが実態です。
少しややこしい物件を扱っている事業者であれば、今回の遅延事例よりも、もっと高い頻度で売れ残りや損失案件を経験していると思います。

不動産クラウドファンディング業界全体で元本棄損がなかったり、延期も限られている(それなりに起きてますが)ため、「これまでトラブルがないから大丈夫」などと安易なコメントを書くSNSやWebサイトがあるようですが、延期も元本棄損も、「いつ起きても不思議ではないこと」というのが、不動産業界の人間の本音です。

これまで、不動産クラファン事業者が相当に努力して販売活動をしたり、時には想定していないかった中での自社買取なども行って、投資家に損害や不利益を与えるケースが少なかったのですが、例えば今感染症のパンデミックが発生したり、リーマン・ショックのような経済危機が起きれば、多くのファンドで遅延や元本棄損が起こりえます。
これは株式だろうが不動産だろうが、投資に付随するリスクとして受け入れるしかないと管理人は考えます。

※そもそも、法律上も、投資商品(不特法、金商法に基づく)については事業者による損失補填は禁止されており、安全な投資などはありえないです。

改めて、投資に伴うリスクと法規制

不特法でも、金商法でも、投資商品については損失補填が禁止されており、法律の趣旨としても、「あくまで損失リスクを理解の上で投資家がリスクを受容する必要があるもの」というのが、投資の大前提になっています。

そのため、株式口座を開く場合でも、不動産クラファンの会員登録をする場合でも、しつこくリスクについての説明資料を確認させられます。
また、投資実行までには、「この投資資金は、余剰資金である」とか、「失っても生活に困るものではない」といったことを事前に投資家に確認を強いてくるのです。
このあたりは法律上の事業者の義務ですので何度も目にしていると思います。

投資ですから、リスクがゼロではないので、今回を契機に、改めて確認できたのではないでしょうか。

当サイトでは、運営企業の財務から、ファンド個々の不動産の収益性や流動性(売りやすいか)、劣後出資比率の確認などを投資判断前にしていただくようしつこく推奨していますので、投資判断の際の参考の一つとしていただければ幸いです。
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