圧倒的な利回りの高さで注目のサービス
2023年にサービスをスタートした、比較的新しいサービスですが、想定利回りの中心レンジが10%代~20%程度という驚異的な高利回りのファンドを次々と提供しています。
WeCapital株式会社が運営する投資サービスブランド「ヤマワケ」の最初のサービスとして提供をスタートしたもので、不動産特定共同事業法に基づき現物不動産への小口投資が可能となるサービスです。
「ヤマワケ」ブランドの認知度や信頼を高めるという役割があるためか、現状はマーケティング的な意味合いで、特に高めの利回りを設定している可能性があります。
今後もこの高い利回りが継続する保証はない点には注意が必要です。
投資家保護の仕組みである「優先劣後構造」を取らない
不動産特定共同事業法に基づき提供される不動産クラウドファンディングの多くでは、
「優先劣後構造」と呼ばれる仕組みにより、ファンドで損失が生じた場合にも、運営事業者が劣後出資を行うことで、劣後出資金までの損失は運営事業者が負担します。
管理人はこの仕組みが不動産クラウドファンディング投資の大きな魅力だと考えていますが、ヤマワケエステートでは、この劣後出資を行わない方針のようで、ファンドで損失が出た場合に、投資家がダイレクトに負担する構造になっています。
ファンドが予定通り利益を上げれば投資家には高いリターンが得られる一方、損失が出た場合のリスクも投資家が負うという、「ハイリスクハイリターン」型のファンドですので、損失が出ても問題のない範囲で投資を行うよう心掛けてください。
リターンとリスクの関係にばらつき有り
ファンド組成頻度も極めて高く、2024年5月時点では、直近半年間で60件を超えるファンドが提供されています。
全てのファンドが「高利回り」と言える状態ですが、その中には、「リスクが低い割に特にリターンが高い案件」と、「リスクの割にリターンが低い案件」が混在しています。
ヤマワケエステートの場合、それでもリターンが高い上、意図的に投資家に対するリターンを低くしているわけではなく、物件の特性や仕入れ条件にリターンを設定しているようで、「騙されている」というわけではなさそうです。ファンドのリスクやリターンをよく確認して投資先を厳選できれば、非常に魅力的な条件のファンドが存在していますので、注目する価値があります。
複雑な権利関係のファンドや、不動産の所有権がないファンドも
ヤマワケエステートが扱うファンドでは、以下のような、他のサービスでは珍しい不動産に投資するケースがありますので、個々のファンドへの投資前によく確認を行ってください。
・賃借権のみしか持たないファンド
土地や建物の所有権は持たず、所有者から借り受けて、テナント(利用者)に転借するタイプのファンドです。
これまでのヤマワケエステートのファンドでは、テナントからの賃料収入に加えて、建物の内装工事などを実施することで、ファンド運用終了時にその造作物等を売却することで配当原資を出す仕組みとなっていますが、土地や建物自体の売却益は得られない他、当該造作物が看板など、特定のテナントにしか価値のないものも含まれているケースがあるため、特に注意が必要です。
・借地権付建物:土地の所有権を持たず、建物の所有権を持つファンド
土地の利用については借地権があるため問題なく利用できますし、所有権が不要なため建物を安く売買できますが、土地の利用料を払い続ける必要があります。
・共有持ち分:土地や建物の所有権を、複数の権利者が共有しているファンド
共有持ち分の売買はそれぞれの権利者が実施できますが、例えば土地への抵当権設定には共有者全員の同意が必要、など、利用方法に制限があるため、共有持ち分の売買は、完全な所有権を持つ場合に比べると安い価格となる他、抵当権が設定できないため、買主が限定されるという制約があります。
結論:ハイリスクハイリターン型ながら、リスクに見合う魅力のあるサービス
現状のまま、高い利回りが継続する間は、投資余力10%程度を上限に投資するだけの魅力がある、ハイリスクハイリターン型ファンドとしてお勧めします。
ただし、ファンド償還実績がまだ不十分である他、リスクの高いファンドもあるため、今後は想定利回りを下回ることや、元本が棄損する可能性もあるため、複数のファンドに分散して、小口投資を行うように注意してください。
なお、2024年5月頃より、ファンドに関するビジネススキームやリスク解説の粗さが目立つファンドが増加傾向で、管理人としては投資推奨できないファンドが散見されます。
あまりに多数のファンドを扱っているため運用が雑になっているのかもしれませんが、元本保証のない投資ですし、投資は自己責任です。
ビジネスモデルやリスク説明が不十分なファンドについては、納得いくまで確認の上で投資判断を行いましょう。
補足:自己資本比率の視方/注意点
運営企業の財務基盤を見る上で、当サイトでは自己資本比率をチェックしていますが、ヤマワケエステートの場合は、注意が必要です。
というのは、不動産クラウドファンディングサービス開始前は不動産の所有がほとんどなく、総資産規模が小さかった結果自己資本比率が高く見えていますが、不動産クラウドファンディングの資金調達規模をご覧いただくとわかる通り、現在は、大量の不動産を所有・運用しているため、総資産規模が急激に大きくなっています。
この点については、
「不動産クラウドファンディング事業者の決算チェックポイント」の後半で解説していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
ヤマワケエステートは劣後出資をほとんど行っていないため、ファンドで損失が出てもダイレクトに運営企業に損失が発生するわけではないですが、ファンドの運営責任者(匿名組合契約における営業者)としてファンドの運営に関する無限責任を負うため、ファンド運営がうまくいかない場合に企業の財務に影響が生じる可能性は十分あります。
本サイトの評価スコアの基準では直近の決算情報を元としているため評価が良く見えていても、ファンド運営の影響が企業の財務基盤にも響く状況であることには留意してください。