ヤマワケエステートWebサイトにおける掲載情報
まずは、ヤマワケエステートの公式サイトでの掲載情報を抜粋します。
売却益を稼ぐための事業モデルや、売却先候補に関する情報がないため想定利回りの妥当性検証はできませんが、土地を取得して転売するだけで利回り13.4%が得られる可能性がある、という内容からは、リスクも高いもののリターンも高いファンドと言えそうではあるのですが・・・
・東京都大田区東馬込一丁目にある、79.12㎡(約23坪)の土地の所有権を取得
・土地の売却益や賃料収益の一部などを分配するファンド
・想定利回りは13.4%(税引前)、運用期間は約4ヵ月を予定
重要事項説明書などを確認すると、
管理人としてはWebサイトで開示されていない気になる点があったので本記事で後述します。
ファンド基本情報
想定利回り |
13.4% |
募集期間 |
2024-05-23 09:00:00~ 2024-05-27 09:00:00 |
運用期間 |
4ヵ月 |
募集方式 |
抽選式 |
タイプ |
キャピタル |
募集額 |
2,700万円 |
劣後出資額 |
0円 |
出資総額 |
2,700万円 |
劣後出資比率 |
0% |
土地の一部は共有持分となっており、土地上で行う事業内容の情報も不明
共有持ち分の土地を扱うファンドとなっている
契約成立前交付書面を確認したところ、本ファンドでは以下のような内容となっています。
「持分1/3」というのは、ファンドでは、
土地の所有権のうち、1/3分の権利だけを持っており、残り2/3は他の方が所有している、いわゆる「共有持分」という状態です。
共有持分の場合の制約として、抵当権の設定や借地権の設定などの変更を行う場合に「共有持分者全員の同意」が必要となりますので、土地売買時の価格や流動性(売却のしやすさ)に大きな影響があります。
3-ⅰ.対象不動産の特定及び当該対象不動産に係る不動産取引の内容に関する事項(契約成立前交付書面より)
所在 |
地番 |
地目 |
登記簿面積 |
その他事項 |
東京都大田区東馬込●丁目 |
●番● |
宅地 |
49.76㎡ |
持分1/1 |
東京都大田区東馬込●丁目 |
●番● |
宅地 |
9.35㎡ |
持分1/3 |
東京都大田区東馬込●丁目 |
●番● |
宅地 |
20.01㎡ |
持分1/3 |
情報開示について感じたこと
投資家が申し込み前に必ず交付を受ける「契約成立前交付書面」などには記載があることから法的には問題にならないのかもしれませんが、こういったリスクはWebサイトや書面でのリスク事項として説明する方がベターではないか、と感じました。
投資商品に関する重要事項説明に記載していないリスクがあり、そのリスクによって投資家に損害を与えてしまうようなケースでは、裁判沙汰になる可能性も否定できないのではないかな?という心配も感じます。(管理人は弁護士からそういうアドバイスをもらったことがあります。)
最後に補足ですが、本ファンドのリスクについて個人的に「想像」したことにも触れておきます。
共有持分の所有者にとっては、土地が有効活用されるのであれば、メリットもあります。
というのは、土地から収益が得られた場合に、持分に応じた収益を得ることができますので、土地を寝かせておくより活用できる方が望ましいケースもあるでしょう。
共有持分を持つ所有者とは本件事業についても協議の上で、既に同意を得られる関係性が構築できている可能性も感じますので、そう感じた情報についても触れます。
ファンドではこの土地をヤマワケエステートと協力関係にあるエムトラストから取得するのですが、
現在の登記情報を見ると、株式会社エムトラストが債権者として設定されている抵当権の共同担保目録に含まれています。
共有状態となったタイミング前に抵当権を設定していたケースという可能性を除けば、共有持ち分の所有者がエムトラストの抵当権設定に同意したという想定ができます。
であれば、ヤマワケエステートと協力関係にあるエムトラストが計画しているバリューアップ方針に反対せず同意してもらえるという可能性もありますね。
(何かのトラブルがあった場合に、権利関係者との協議が必要になるようなリスクが全くとも言えないようにも感じますが。)
とはいえ、土地の上でなんらかの建物が完成し、土地と建物を売却する場合に、共有状態のまま売却するか、共有持分を買い取り完全な所有権として売却するかでも、ファンドで行う事業の設計は異なってくるはずです。
本記事後半は、開示資料を元に「勝手に想像した」部分もあり実際の状況が把握できないのが本ファンドで感じた課題です。
こういった情報は、ファンド運営者から投資家にしっかり情報開示して説明をしてもらう方が望ましいように感じます。
共有持分に関するリスクも含めたリスクとリターンのバランスの判断ができないため、管理人の判断としては投資「不可」という評価としました。
管理人個人としては、ヤマワケエステートは業界の認知度を大きく上げ、盛り上げていると思いますし、頑張って欲しいサービスだと思っています。
限られた人員リソースでこれだけのファンド分の不動産を仕入れ、運用していくのは想像を絶する激務でしょうから、目の前の業務に追われて情報開示を丁寧に行う余裕がないのも仕方ない面があるかもしれませんが、やはり投資家の大事な資金を預かる以上、一つ一つのファンドを丁寧に審査し、情報開示にも細心の注意を払って行えるようなファンド運営を期待したいところです。