らくたまならではのリスク抑制工夫はあるが、系統用蓄電所には固有リスクもあることは理解の上で投資を
「らくたま」は、不動産の長期保有などの資産運用で収益を上げてきた不動産会社が運営しています。
2024年4月のサービス開始から、安全性の高いインカム型ファンドで劣後出資比率も確保しながら、利回り6%代というかなり魅力的な条件のファンドを提供し続けています。
運営会社は資産運用のプロとして300億円規模の長期保有不動産を運用しており、安定稼働中でファンドに適した不動産によってファンド組成されており、運営企業のノウハウやファンドの商品設計(リスクとリターンのバランスの良さ)についてはかなり信頼感が持てるサービスです。
そのらくたまとしては珍しいのですが、今回の「らくたま21号(小樽①)」は、少しリスクも感じさせるファンドです。
本記事では、このリスクと、それに対してらくたまが用意しているリスク対処策を解説します。
「らくたま21号(小樽①)」のリスク抑制策とは?
今回、らくたまではそのリスクを抑制するために、3つのの投資家保護プランを用意しています。
1.劣後出資比率40%で、不動産の資産価値が40%まで下落しても投資家の元本を保護
2.系統用蓄電地としての整備を進める事業者に土地をリースバックすることで、インカムゲインも確保
3.ファンド運用終了時の売却先は3プランを用意
今回のファンドでは、系統用蓄電所を実際に構築、運営希望する事業者かららくたまが土地を取得し、その土地をリースバック(元の所有者に賃借)する形を取りますので、2のインカムゲインが確保できます。
また、3の最終的な土地の売却先としては、系統用蓄電所の構築運営を希望する事業者が基本ですが、もし系統用蓄電所ビジネスがうまく行かないと判断した場合には、ゴルフ場用地として売却するシナリオを用意しています。
本土地はもともとゴルフ練習場として稼動していたものが、運営者が系統用蓄電所ビジネスを検討したことで営業を休止しており、ゴルフ練習場用途での利用が可能な土地となっています。
最後に、このいずれのプランでも売却が出来ない場合には、らくたま運営事業者である「フロンティアグループ」が買い取る前提にて、その買取資金も事業者が確保していることを宣言しています。
大きな課題となりうる売却先の確保について、このように3つの対処策を用意しているのは、らくたまならではの強みと言えそうです。
ただし、売却時に損失が発生しないという保証がないことには、注意が必要です。
後述しますが、系統用蓄電所ビジネスは、将来の収益の安定性が高いとは言い切れない事業です。
らくたまが最終買い取る場合も、「市場価格に照らして合理的かつ公正な価格」である必要がありますので、蓄電所としての市場価値、ゴルフ練習場としての市場価値が想定より下落した場合に、フロンティアグループによる買取価格が低下する可能性は否定できません。
不動産特定共同事業法では、事業者による「損失補てん」が禁止されていますので、そもそも、市場価格を超える買取をするのはこの法律に抵触することになります。
系統用蓄電所ビジネスの概要と、そのリスクとは?
まず、「系統用蓄電所」と言われても、事業内容や収支イメージがピンとくる方はそうそういないと思いますので、ばっくりとしたイメージを解説します。
系統用蓄電所の構築には、例えば8MWhの蓄電所だと、蓄電池等設備の購入・搬送・据付・試験等に数億円のコストがかかる他、電力系統との接続にも数千万円から1億円を超えるような系統接続コストが発生する可能性がある事業です。
そうして構築した蓄電池を電力網に接続し、各種売買電市場で、安く買える時間帯に電力を購入・充電し、高く売れる時間帯に電力を売却・放電することで、差益を稼ぐというのが基本の事業モデルです。
海外製/国内製どちらの電池を使うかの他、アグリゲーターと呼ばれる売買電の入札や充放電制御を担う事業者のノウハウにより収益性は異なりますが、うまく開発を進めればNOI利回りベースで20%~50%といった高い収益性を得られる可能性があるビジネス、として注目を集めています。
太陽光などの再生可能エネルギーの普及拡大で、自然エネルギーの発電量が多い時間帯に電力を買い取る他、ベースロード電源と呼ばれる、常時発電している電源の電力を、需要の少ない時間帯に買い取る、といった取組みをすることで、電力網を安定的に稼動させることや、再生可能エネルギーの普及促進につなげることができる、社会的意義の高い事業でもあります。
ただ、この事業には厄介な点もあります。
1.系統接続コストが、接続先電力系統の空き状況など次第で大きく変動すること
2.蓄電所が収益をあげる電力市場(複数の市場を活用します)には歴史が浅い市場もあり、将来需給や収益性の見通しが立てきれないこと
1.については、数千万円から1億円を超えるコストが発生するケースが有り、かつ、そのコストを知るためには電力会社等への接続検討依頼を発出して、結果を得る必要があるため、22万円等の費用と、3か月ほどの期間が必要になります。
本案件では現在既に、接続検討依頼は提出済みとのことですが、この結果が想定より高い場合には、事業収支が悪化する可能性があります。
今回のファンドでは、1については、変電所の隣接値ということで有利な立地となっていますが、それでもその変電所の空き容量が足りない、といった可能性がもしあれば、コストが想定より高くなるかもしれません。(管理人の知識では断定しきれませんので、「かもしれない」という表現となります。)
【2025.4.24追記】本記事について、らくたまさんから補足情報がありました。
本件においては、事前に北海道電力と協議した結果、「32MWhなら容量が北海道電力の需要容量とマッチするため32MWhで提出してほしい」との回答を得ているとのことで、系統連携コストが高額になるといったリスクが低いことを確認済みとのことです。
ということは、北海道電力からの正式回答でも、事前協議時と同じ回答が得られるなら、系統用蓄電所用地して、高い収益性を発揮できる用地となる可能性が高いと考えられそうです。
2.については、最近でも、売電価格が低下したことで、古い石炭発電所が停止する、といった報道を見た方もいるかもしれません。
売電価格が下がりすぎると、コスト競争力の低いベースロード電源が撤退することで需給バランスが悪化するという可能性が実際あるように、将来の需給バランスがどうなるか、正確に見通すことが難しい課題があります。
逆に買電価格が高くなりすぎると、政府から価格に対する規制がかかるといった可能性もあります。(これは電力価格の過度な高騰により国、国民にとって悪影響が出るなどの場合)
このように、マンションなどと比べると変動要素が多く事業や収益の触れ幅があるという理解はしておいていただければと思います。
トータルで見ると?
管理人としては、系統用蓄電所というまだ新しい事業領域ということで、一定のリスクはあるもの、と捉えての投資判断をお勧めしたいです。
(私個人の知識が十分ではないため、お勧めしきれない、という意味もありますが。)
一方で、劣後出資比率40%で安全性を確保した上で、更に、らくたまを運営するフロンティアグループ自身が買取資金を確保しておくと宣言していることで、仮に土地の市場価格が下落(蓄電所としての事業収支が想定より低い場合など)する場合にも、損失が抑制されています。
トータルでは、系統用蓄電所ファンドのリスクに対応したリスク抑制策が備わっているファンド、と評価できるでしょう。
とはいえ、やはり市場参加者が多く、トラックレコードがあり将来需給の見通しがつきやすいマンションのインカム型ファンドなどと比べた場合に、こちらの方が優れているとも言いにくいため、らくたま自身が「地方応援ファンド」と銘打っている通り、地方への応援を志向する方や、新しいもの好きの方、などに適したファンドという感じではないでしょうか。
新規会員登録者には、デジタルギフト特典有
らくたまでは今回、「デビュー応援プログラム」として、新規会員登録向けに、以下のキャンペーンを実施しています。
4月23日から5月8日までに新規会員登録された方限定の特典となりますので、既に応募済みの方が対象外となってしまいますが、まだ未登録&投資応募未実施の方は、この機会にいかがでしょうか?
■キャンペーン特典
10万円以上投資した方:デジタルギフト2,000円分プレゼント
50万円以上投資した方:デジタルギフト6,000円分プレゼント+ベネフィットステーション使い放題+ファン会員維持で3カ月ごとにベネポ500円分獲得
らくたま デビュー応援プログラム
多様な「系統用蓄電池」ファンド
ここでは、不動産クラウドファンディングにおいてこれまでに組成された「蓄電池用地」ファンドを参考に比較しておきます。
系統用蓄電池はこれまでにも記載したとおり、事業収益の振れ幅が大きい可能性もあるファンドです。
その中でも、不動産クラウドファンディングでは独自の事業スキーム、例えば不動産特定共同事業契約の外で、売却予定事業者の構築する蓄電池に担保権を設定するファンドなどが存在しています。
ただ、これらの契約条件詳細は開示されておらず、担保権にどのような停止条件(一定の条件が満たされない場合に効果を発揮しない)があるのか、や、例えば電池の購入・据付が実施されない場合のリスクヘッジがどのように行われているかが確認でできないため、当サイトでは課題も指摘しています。
要は、投資家から集めた資金が、土地だけの価値に対するものではない構造である懸念があり、事業が破綻した場合に、不動産特定共同事業の裏付けとなる「土地」の価値が出資金と見合うという懸念を感じます。
そこで、今回の「らくたま21号(小樽①)」の土地取得単価(坪単価)を他ファンドと比べてみます。
都市部の土地と異なり、山林としか使えないような土地はなかなか価値評価が難しいのですが、単価感や、系統用蓄電所として利用しない部分の価値含めて違いを確認いただくと各ファンドには大きな違いがあることが感じられるかと思います。
| ファンド |
土地 |
優先出資額 |
坪単価(優先出資あたり) |
対象 |
| らくたま21号(小樽①) |
23,965㎡ |
90,000,000円 |
12,393円/坪 |
元ゴルフ練習場 |
| FUNDI長野県上田市 蓄電池 FUNDI プロジェクト#4 |
681.47㎡ |
510,000,000円 |
2,469,661円/坪 |
蓄電池設備に担保設定 |
| TECROWD73号ファンド 宮城県角田市 系統用蓄電池発電所 |
1,018,557㎡ |
1,423,900,000円 |
4,613円/坪 |
山林含む土地面積 |
| TECROWD73号ファンド うち造成対象 |
4,000㎡ |
1,423,900,000円 |
1,174,717円/坪 |
うち造成対象は4,000㎡以下 |
らくたま21号は、「全期間配当保証」で、短期売却時にはアップサイド(年利換算の利回りが上振れ)配当も
らくたま21号では、短期でファンド償還が実施された場合も、当初運用予定期間分の配当利回りが得られます。
もちろん、配当はファンドが得た賃料収入や売却益から実施されるため、あまりに短期間で償還された場合や売却損失が生じた場合などには配当が満額得られない可能性はありますが、短期償還時にも当初の運用予定期間分の配当が得られる可能性がある、というのは魅力的な条件です。
<らくたま独自の契約条件「全期間配当保証」>
また、本事業者が、11.に規定する契約期間の満了日前かつ別紙2規定の不動産取引の終了予定日前に対象不動産全部の売却等を完了した場合も同様とします。なお、その場合、本条第1項(2)号⑤に規定する本事業者に帰属する残利益について、本事業者はこれを放棄し、当該残利益は同号④の規定による優先出資に係る利益の分配の対象とします。
らくたま 全期間配当保証
「らくたま」は、翌日償還のため、資金効率・実質利回りが高い
不動産クラウドファンディングでは一般的に、対象不動産の売却によりファンドの運用終了後、配当や元本の償還までに2ヵ月程度かかるケースが多くなっています。
これは、運用期間中のテナントからの賃料収入の入金までに時間がかかることや、ファンドの清算に関わる会計処理などに時間を要するため、仕方ない部分があるのですが、らくたまでは、「翌日償還」ルールを策定し、それをこれまで遵守しているようです。
独自の工夫がされているためか、なかなか他社では真似ができないことなのですが、投資家にとっては、即座に次の投資先に資金を配分できるため、投資効率が高く、実質的な運用利回りが高くなります。
管理人自身、最初償還の早さに戸惑ったのですが、かなり運用面でのメリットが大きく、今後らくたまへの投資配分を上げようと感じる要因になっています。
らくたま FACT
「らくたま」は、運営企業の財務規律ルールが有り、財務もガラス張りの安心感
不動産クラウドファンディングでは運営企業の決算情報開示が義務付けられているものの、キャッシュフロー計算書の開示はなく、手元現金余力まで確認できるケースは少ないです。
らくたまでは、この情報開示を積極的に行っていることに加えて、独自にファイナンシャル・ターゲット(財務目標)を設定し、ファンド募集額に対して備えるべき純資産の比率や、投資家への配当に対して備えるべき現預金の比率を設定しています。
下の資料を見ていただくと、現在は設定したファイナンシャル・ターゲットに対して十分な余裕を持ったファンド運用規模にとどめています。
皮肉な話ですが、不動産クラウドファンディング事業では、投資家をたくさん集め、安定運用を繰り返して人気が出ればでるほど、この財務面の指標が悪化していく企業が多数存在しています。
当サイトの
トップページでは、「ファンド依存リスク」という指標で各社の純資産に対するファンドによる資金調達規模の大きさをスコアリングしていますが、著名なファンドの多くが、純資産に対して非常に大きい資金調達を行っていることが確認できると思います。
らくたまについては、今後投資家層を拡大し、ファンドの規模を拡大していくとしても、一定の規模を超えない方針を開示していますので、他サービスとの大きな差別化ポイントと言えるのではないか、と思います。
らくたま フィナンシャル・ターゲット