不動産クラウドファンディング業界でも群を抜く高利回りで話題のヤマワケエステートですが、「あやしい」のでしょうか?
Google検索で「ヤマワケエステート」と入力すると、管理人の環境では、2番目に「ヤマワケエステート 詐欺」という検索条件が表示されますので、高すぎる利回りが、あやしさを感じさせる面はあるのではないでしょうか。
そこで、市場に出回っている収益不動産で組成されたファンドの収支を想定することで、ヤマワケエステートがどのような不動産ビジネスを行おうとしているのか、検証してみました。
「東京都杉並区西荻窪 レジデンスファンド」の事業計画を想定してみる
このファンドは、物件名称から部屋番号までが明らかにされています。
そこで、この物件の過去の売却希望条件や、賃貸希望条件を元に、ヤマワケエステートが運営するファンドの事業収支を想定します。
「東京都杉並区西荻窪 レジデンスファンド」の配当に必要な売却益
まず、ファンドの出資額1,400万円から、想定利回りである12.5%の配当を投資家に行うために、必要な配当額を算出します。
ファンドでの物件購入価格 |
14,000,000円 |
想定配当利回り |
12.5% |
運用期間 |
3か月 |
満額配当時の配当支払い額 |
437,500円 |
次に、その配当原資を生み出すために、必要となる不動産売却益を算出します。
売却価格(売却額) |
15,000,000円 |
物件取得費用 |
14,000,000円 |
売却時媒介手数料 |
510,000円 |
売却益 |
490,000円 |
投資家配当 |
437,500円 |
事業者残利益 |
52,500円 |
本ファンドでは現在賃料収入がなく3か月でファンドを償還する計画のようですので、賃料収入は得られない前提で試算すると1,400万円で仕入れた不動産を1,500万円で売却できれば、投資家に12.5%の配当を行えることになります。
(もちろん、事業者が利益を上げるためにはもっと高値で売却する必要がありますが、あくまで投資家に配当できるかを検証します。)
「東京都杉並区西荻窪 レジデンスファンド」の収益力
では、1,400万円で仕入れた不動産を、3か月で1,500万円で売却するという計画は、「あやしい」のでしょうか?
続いて、この物件の過去の売却希望条件や賃貸希望条件を元に、この物件の収益力を想定してみます。
■賃料相場の想定(西荻コーポ募集賃料情報より)
部屋タイプ、広さ |
募集賃料相場 |
㎡単価 |
2F 35.25㎡(LDK) |
9.1万円~10.1万円 |
2,582円 |
5F 35.2㎡(1R) |
9.2万円~10.2万円 |
2,614円 |
8F 36.31㎡(1R) |
9.5万円~10.6万円 |
2,616円 |
募集賃料 ㎡単価平均 |
|
2,604円 |
(出展)
LIFULL HOMES
賃料については、平均値である、㎡単価2,604円と仮置きしましょう。
一般に、サイトに掲載される募集賃料と実際の契約賃料には一定の乖離がありますが、部屋の管理状況などにより異なるため、大まかな試算値だと捉えて下さい。
次に、この㎡単価を元に、「4F 29.92 ㎡」となっているファンドの対象物件の賃料想定を算出し、年間の賃料収入を算出します。
■賃料相場に基づく賃料収入 / NOI
想定賃料(月額) |
77,907円
|
管理費(月額) |
6,000円 |
修繕積立費(月額) |
3,600円 |
想定NOI(月額) |
68,307円 |
想定NOI(年額) |
819,687円 |
「東京都杉並区西荻窪 レジデンスファンド」の収益力から見た売却価格の妥当性
収益不動産の場合、物件価格は、その物件に求められる利回り(キャップレートと呼ばれます)で価格が試算できます。
逆に言えば、物件のNOI利回りから、価格の妥当性が検証できます。
今回のファンドの場合、当初の物件購入時の価格、売却時の価格のNOI利回りは、以下の数値になります。
ファンドでの物件購入時 |
5.9% |
1,500万円で売却できた場合 |
5.5% |
最後に、物件の所在する西荻窪駅周辺の収益不動産の利回り相場を確認しましょう。
購入可能な収益不動産のリスティングサイト「ラクマチ」で売却希望の出ている物件情報を見ると、表面利回り(費用を控除せず、賃料だけで見た利回り)で4%~7%程度です。
ファンドがめざす売却価格は、相場の範囲内にはあるようですので、実際にめざす利益を確保できるかは、プロの不動産会社であるヤマワケエステートや、協力会社であるエムトラスト次第、と見てよいでしょう。
(調査対象サイト)
ラクマチ
これもあくまで参考情報になりますが、ファンドの保有する物件について、過去に売却希望情報が掲載されていました。
NAGOMIYA 掲載事例
賃料以上に、売却希望価格と実際の成約価格は異なりますので、本当に参考程度の情報になりますが、この事例では、ファンドの売却予定額を大きく上回る1,780万円という価格設定となっています。
しかも、以下のような記載もあり、記載事項が事実であれば、賃料を想定より高めに設定する余地が出てくるかもしれません。
・ぺット飼育可!
・令和3年屋上防水工事実施済!
・令和2年外壁塗装済!
管理人の考え:ヤマワケエステートについて
ヤマワケエステートは劣後出資比率がないという、不動産クラウドファンディングにおける投資家保護の仕組みがないというデメリットはあるものの、リスクに見合う、または、リスクを超えるリターンが得られる可能性もある、「ハイリスクハイリターン型ファンド」と評価しています。
ただし、本記事の試算を見ても、「ファンド運営で事業者が儲ける気がないのでは?」と感じるケースが多いです。
なぜ、ここまで広告費や会員獲得コストをかけてまで、大量のファンドを組成しているか?という疑問も確かにあります。
とはいえ、集めた出資金で実際に不動産を購入しているため、出資金を持ち逃げするのは容易ではないですし、かけた広告費などの先行投資を考えれば、持ち逃げするうまみは現時点では大きくないとも感じます。
個人的には、ヤマワケエステートの親会社であるWe Capitalが「ヤマワケ」ブランドで投資サービスを提供していく上での先行投資と割り切って、採算度外視でのPRとファンド運営を実施していることを期待しています。うまくいけば、親会社の支援施策も含めて、ファンドとしてはしっかり全て配当を出し切れる可能性も感じます。
一方で、親会社や協力会社の強い支援なしでは、ヤマワケエステートが大量に組成するファンド全てで満額で配当を出すことも難しいのでは、とも感じています。
結論としての考えが「ハイリスクハイリターン」ですが、リスクを承知でかけてみるだけの魅力は感じており、これまでに2ファンド、150万円を投資しています。
もちろん分散投資が大前提ですので、過度に1つのサービスに集中させるべきではないですが、投資中のファンドが無事償還されえば、継続的に一定の比率で投資してみようと思います。
なお、当サイトではリスク分散の観点で、複数のサービスに対する分散投資を強く推奨しており、投資先サービスやファンド探しに役立つ情報の収集、掲載に努めていますので、他サービスについても是非ご確認下さい。