「話がうますぎる??」大規模リノベーション済みの一棟アパート投資ファンド「まにわく12号」の概要
今回のファンドは平成元年12月築の一棟アパートですが、他サービスであるようなファンドの出資金でリノベーションするファンドではありません。
2024年5月に既にリノベーションを完了して入居者の募集(リーシング)の開始済の状態となっているため、
リノベーション工事のトラブルや工事費高騰等リスクのない、リノベーション完了後の物件による「純粋なインカム型ファンド」となっています。
この条件で、
「劣後出資比率50%」「マスターリース有」という安全設計で、「想定利回り10%」という、ちょっと考えにくいような好条件のファンドに見えます。
(劣後出資比率50%ということは、ファンドで50%の損失が出ても投資家の元本が守られるという安全性の高いファンド設計です。)

サービス開始当初のPR狙いのファンドならまだしも、ちょっと話がうますぎないか?と逆に心配になりました。
そこで、これまで調査できていなかったサービスということもあり、どこかに罠があるのではないか?という視点で重要事項説明書や事業収支計画をチェックしてみました。
「まにわく12号」ファンドの検証結果
ここでは、ファンドの収支計画の他、売却価格の妥当性、契約約款に定める条件を順に確認します。
「まにわく12号」ファンドの事業収支計画
本ファンドではマスターリース契約があるため、収入計画は明瞭です。
修繕、諸経費の情報については不明なため、賃料の10%と仮置きした上で、ファンドの想定利回り10%の配当に必要な収支計画を立ててみると、以下の通り、
ファンド運営期間終了後の不動産売却価格は、ファンドで購入した価格そのままで十分で、売却益を狙う必要はない、という結果になりました。
■8%配当可能となる売却額とファンドにおける収支イメージ
売却価格(売却額) |
39,000,000円 |
|
運用期間中賃料(マスターリース) |
1,860,000円 |
31万円×6ヶ月 |
物件取得費用 |
39,000,000円 |
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維持管理費(大胆な想定) |
186,000円 |
マスターリース費用の10%と仮置き |
売却時媒介手数料 |
0円 |
運営者が売却成功時は0円 (外部委託時は媒介報酬要か) |
投資家配当 |
975,000円 |
優先出資金×10%×6ヶ月 |
事業者残利益 |
699,000円 |
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「まにわく12号」ファンド運用終了後の不動産売却計画
前項の検証からは、ファンドの購入額で不動産が売却できれば、配当が満額得られそうです。
その場合、その不動産を購入する投資家にとっての表面利回りが何%になるか、確認します。
今回のファンドではマスターリース契約があるため、賃借人から得られる賃料が満額入るわけではないですが、空室リスクはマスターリース会社が負担する形となるため、マスターリースを前提として計算すると、
表面利回り9.5%水準という好条件となります。
本物件はリノベーション後とはいえ築30年を超える木造アパート私道負担があるなど若干の癖はあるものの、京王線「西調布」駅から徒歩7分という立地を考慮すれば、個人投資家にとってかなり魅力のある物件と見えるのではないでしょうか。
(かなり、というか、近隣の売物件の表面利回りと比べても破格の条件、とえる水準かと)
■売却価格と満室時の表面利回り(マスターリース適用後)
売却価格 |
39,000,000円 |
想定賃料(月額) |
310,000円 |
想定賃料(年額) |
3,720,000円 |
想定利回り |
9.5% |
「まにわく」を運営する「株式会社新日本コンサルティング」は、個人投資家向けに収益不動産を販売する事業も手掛けており、物件の売却ノウハウについても期待できますので、ファンド運営終了後の売却シナリオにも十分すぎるだけの蓋然性を感じられる結果となりそうです。
「まにわく12号」の契約約款に定める条件
不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングでは、運営事業者への報酬額が約款に明記されますので、契約条件についてもチェックしてみましょう。
不動産の取得や管理報酬を取るサービスも多いなか、
「まにわく12号」では、事業者はファンド運営報酬をほとんど取らず、投資家への配当後になお利益が残った場合にのみ報酬を受け取る条件となっています。
具体的に契約条件を投資家に事前に説明する「契約成立前書面」を確認すると、以下のような表記となっていますね。(※)
(契約成立前書面 抜粋)10.事業参加者に対する収益又は利益の分配に関する事項
前③による匿名組合損失の補てん後になお残利益がある場合、優先出資に係る利益の分配として、当該計算期間の末日時点における優先出資者の出資額に当該計算期間の実日数を乗じ365(閏年の2月を含む場合は366)で除し10%を乗じた金額に満つるまでの金額を、優先出資割合に応じて優先出資者に帰属させる。
⑤ 前④による匿名組合利益の分配後になお残利益がある場合、劣後出資に係る利益の分配として、残利益を本事業者に帰属させる。
ここで気になる点がひとつあるのですが、Webサイトで記載されている想定利回りは8%ですが、契約書上は、「余剰利益が有る場合は、最大10%分投資家に配当」する契約となっています。
【6/11追記:Webサイト上も利回り10%に記載修正されていました】
過去にはヤマワケエステートなどでもあったパターンですが、想定より高値で売却できれば、利回りが10%まで上振れる可能性がある契約条件です。
(ファンド運用終了時の売値を利回り8%相当に設定することも想定されるため、10%にならない可能性はあります。)
※運営事業者の報酬については「16.不動産特定共同事業者の報酬・手数料に関する事項」に記載されていますが、ここでは割愛します。
まとめ:「まにわく12号」ファンドの検証結果は?
ここまでの検証結果からは、
ファンドの収支計画は非常に実現性が高いもの、と管理人は評価しました。
当サイトでは、いくつかの不動産クラウドファンディングの収支計画をチェックしましたが、ここまで収支計画に余裕のあるケースはこれまでになかったため、もしかすると、管理人が何か見落としているのでは、と不安になる結果です。
(間違いに気づいた方は、掲示板機能でご指摘をいただければ幸いです。)
ただ、管理人個人の想定となりますが、「株式会社新日本コンサルティング」は、個人投資家向けの収益不動産の販売を主要事業としている不動産会社です。
「まにわく」というサービス自体が、現物不動産投資家向けを意識したサービスともなっています。
収益不動産を販売するサービス運営事業者にとっては、「現物不動産投資に関心を持ってもらいたい」、「現物不動産で利回りが得られることを体験してもらいたい」「間違っても不動産で損失が出るというイメージを持たれたくない」といった気持ちでファンド設計をしたくなるのではないでしょうか?
不動産クラウドファンディングを通じて信頼を得て、将来の現物不動産投資家を育てる、といった狙いがあれば、このような好条件のファンドを組成しても、企業としては元が取れるのかもしれません。
以上、ファンドの検証結果からは本ファンドはおすすめできる、という評価なのですが、当サイトではリスク分散の観点で複数のサービスに対する分散投資を強く推奨しています。
投資先サービスやファンド探しに役立つ情報の収集、掲載に努めていますので、他サービスについても是非ご確認下さい。