倒産隔離スキームで組成されたホテル投資ファンド
本ファンドは、不動産特定共同事業法に基づき提供されるファンドの中でも珍しい、「倒産隔離スキーム」型のファンドです。
対象不動産の取得、運用だけの事業を行うSPC(本ファンドのために設立する会社)が事業を行い、投資家は当該SPCと契約します。
当該SPCは対象不動産の運営のみを行うため、それ以外の事業の影響で倒産することがなく、投資家は(ほぼ)対象不動産で行う事業のリスク以外を追わないのが特徴です。
実際のファンドの運営は、Jointαの他ファンドと同様、穴吹興産が行いますので、大手企業がファンド運営者(アセットマネージャー)であるという点も安心材料でしょう。
プロ向け不動産ファンドの世界ではSPCを活用した倒産隔離スキームは基本的な構造ながら、一般の方には少しややこしい仕組みですね。
なぜこんな仕組みがあるか?と言われれば、シンプルに、「運営事業者の倒産影響を受けないファンド」、というのがメリットだと考えてもらえばよいでしょう。
これで、これまでのJointαの想定利回りより高めの5%というのは、かなりお得に感じる方もいるのではないでしょうか?
ただ、管理人としてはこのファンド、投資する気を失う点が多く、高い評価はできない、という印象ですので、悪い点についても触れたいと思います。
投資家にとってのデメリット1:劣後出資比率が低い
倒産隔離スキームでは、事業者の劣後出資は5%未満に抑える必要があるため、倒産隔離型ではないJointαの劣後出比率が15%であるのに対して低くなります。
劣後出資は損失発生時に事業者が損失を負担する仕組みのため高いほど投資家には有利になりますが、本ファンドでは2.73%と、制度上の条件5%どころか、大幅に低い水準となっています。
穴吹興産という運営企業の信用力の高さがJointαの魅力の一つであったのに、それが倒産隔離スキームになることで投資家が得るメリットは他の信用力の低い企業に比べて小さいというのが本音です。
その上で、ファンド自体の安全性につながる劣後出資比率が15%から2.73%まで下がるというのは大きなデメリットです。
ましてやホテルはレジデンスのように資産価値の安定性が高いわけではなく、景気や観光、海外の政治リスクなどの影響もあるアセットですので、せめて5%程度の劣後出資比率にできなかったものか、というのが管理人の感想です。
投資家にとってのデメリット2:ホテルアセットで変動が大きいのに、アップサイド時のメリットがない
今回のホテルオペレーターとの契約は、GOP(=ホテル側の営業総利益)の80%がSPCに支払われる変動型となっています。
現在の投資家市場では、固定賃料型より変動賃料型のアセットが望まれるケースが多いのですが、このファンドでは別です。
変動賃料のメリットがあるケースは、インフレやインバウンドの増加などで客室単価(宿泊料/ADR)や稼働率が上がることが期待できる場合に、アップサイド(利益上振れ)分が投資家に得られる場合です。
ところが、本ファンドでは、そのアップサイドが得られた場合には、2.73%しか出資しない運営事業者が総どりです。
投資家は変動リスク(例えばパンデミックの再来や景気悪化、海外との関係悪化など)による減収によるリスクは負うのに、増収時のアップサイドは得られないわけです。
本事業の主要な出資者である投資家の立場になってみれば、固定利回りしか得られないのであれば、ホテルオペレーターとの契約も固定賃料の方が間違いなくメリットがあります。
投資家にとってのデメリット3:融資併用のため損失にもレバレッジ
総事業費の60%弱が融資による調達となっており、利回りにレバレッジを効かせていますが、金利変動リスクがある他、ファンド精算時には融資返済が優先されるため、ファンドでの損失発生時には、損失にもレバレッジが効いてしまいます。
管理人の印象:まとめ
正直、事業者側の立場になれば、この条件で投資家からの出資が集まるなら、魅力的な条件だと思います。
事業者の立場では物件のオフバラ、なんなら利益確定もできてしまっている上、変動賃料のアップサイド期待を劣後出資比率2.73%分だけで享受できるわけですから。
投資家の立場では円滑にファンドが運営されば5%の配当が得られるものの、ホテルという変動リスク高めのアセットで、劣後出資比率2.73%=ファンドで3%の損失が出ても元本棄損が起こるという条件と言われると、かなり投資家不利な条件、というのが管理人の感想です。
トータルで見れば、パンデミックの再来のような大きなトラブルが起きない限りは巨額の損失を受けるリスクが低いファンドで、円滑に運営されれば利回り5%が得られるというファンドを、ダメ、というのは言い過ぎかもしれませんが、これまでのJointαの投資家層は、このようなファンド構造との違いや、事業者側にあるメリットを理解して投資せず、ただこれまでとの利回り差だけを見て投資してしまうのではないでしょうか?
正直、「事業者にとってだけ都合の良い設計だな」という印象が強いため、私が投資するなら、劣後出資比率5%弱、固定賃料または投資家にもアップサイドがある条件のファンドに投資したいですね。
・JR山陽本線「倉敷駅」徒歩5分に立地するホテルを取得し、変動賃料型で支払われる賃料(ホテルのGOP=ホテルの営業総利益の80%)を元に配当するファンド
・倒産隔離スキームのため、穴吹興産の倒産影響から隔離(対象不動産が例えば破産債権に組み込まれない)
(ただし、その場合ファンド運営会社(SPC)は、穴吹興産以外のAM会社に業務を委託する必要があるため、バックアップオペレーターの探索や委託費用は発生)