同タイプの開発型ファンドで既に17ファンドの運用終了実績があり、運営事業者のノウハウ蓄積に期待
DARWIN fundingでは、2022年12月の「開発型1号」ファンド以降、土地を取得して一棟マンションを開発する開発型ファンドを組成してきており、本ファンドは28号ファンドとなります。
開発型ファンドでは、開発コストが上振れや工期の延伸リスクがある他、売却価格が想定ほど伸びない、といったリスクがあることは織り込んで投資判断が必要です。
一方、
2025.5.1時点での開発ファンドの組成、運用実績を見ると、28ファンドを既に運用している中、17ファンドが運用完了となっています。
つまり、ファンドにより開発したマンションを無事に竣工し、売却(ファンド償還に必要な現金化)まで進捗させている、ということです。
鉄骨造マンション開発プロジェクトの収益力を元に、不動産クラウドファンディング投資家への配当やキャンペーン特典まで出せる(かつ、それで開発営業チームの給料まで支払える)というのはそれなりの開発ノウハウ(と、良いゼネコンの確保)が求められることだと感じますが、
この期間で17ファンドの償還まで無事に終えられていることを考慮すれば、それなりのノウハウを蓄積している、と見てよい状況になってきているのではないでしょうか。
現在は、運営事業者のサイト上にも、
自社開発のマンションブランドが紹介されており、運営事業者の主要事業のひとつとして取り組まれていることも確認できます。
なお、開発型27号と28号は最寄り駅がどちらも同じですが、27号に比べると28号の方が収益力で劣るように見えます。
本記事後半で簡単に開発後のマンション収益力を想定していますので、参考にご覧下さい。
出資額に応じた「選べるペイ」がもらえるキャンペーン特典で、想定利回り以上のメリット有り
DARWIN FUNDINGの特徴として、配当利回りとは別途、出資額に応じて「選べるペイ」が必ずもらえるキャンペーンが頻繁に実施されています。
出資額に応じて、出資額の1%から最大2.4%相当の選べるペイがプレゼントされる特典がついています。
ファンドで利益が得られた場合に投資家に分配される「配当」とは異なり、キャンペーン特典は、ファンドの利益に関わらず、投資家にプレゼントされますので、投資の期待リターンを「想定配当利回り7.6%+選べるペイ特典分」で考えてよいのではないでしょうか。
もちろん投資には元本保証はなく、ファンドで損失が出た場合には元本が棄損することで、特典で得た「選べるペイ」以上の損失を受けるリスクはあるのですが、それでも先に(時間軸的にも)リターンが得られていることの価値は大きいです。
DARWIN funding 開発型28号 キャンペーン特典
開発するマンションの収益力見通しはどうなの?
JR南武線「浜川崎」駅まで徒歩5分の立地となっており、周辺マンションを調べてみても、立地面での競争力は悪くありません。
ただ、
開発型27号と比べると敷地面積も延べ床面積も半分以下ながら、募集額は6割弱の水準と、総事業費に対して収益力が少し見劣りする可能性がありそうです。
周辺の22㎡前後のワンルームマンションの坪単価は1.2万円前後ですので、新築ということに加えてDARWIN独自の工夫で賃料アップを狙うことも期待して1.25万円/坪と想定してみましょう。
開発するマンションのレンタブル比率(廊下等共用部を除き、貸し出し可能な専有部の比率)を80%で見ると、年間賃料水準は2,300万円水準になります。
専有面積 |
280.6㎡ |
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想定レンタブル面積 |
224.48㎡ |
レンタブル比85%想定 |
想定1室平均専有面積 |
22.4㎡ |
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22㎡・1Kタイプの近隣坪単価 |
12,500円/坪 |
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想定月額賃料 |
84,881円/1室・月 |
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想定年間総賃料 |
10,185,765円/年 |
|
この賃料水準だと、総事業費に対しての賃料水準は3.1%となるため、決して収益力に余裕のある数字ではありません。
売却利益を取るためには当然総事業費より高い金額で売却する必要があり、そうすると、売却額ベースの表面利回りは3%を切る水準となります。NOI利回り3%を切るとなると、富裕層向けの相続対策商品として販売するとしても、なかなか厳しいという試算になってしまいそうです。
優先出資 |
297,000,000円 |
劣後出資 |
33,000,000円 |
総事業費 |
330,000,000円 |
想定表面利回り(対総事業費) |
3.1% |
ただ、本件は開発型ファンドのため、総事業費全てが開発原価とはならないはずですので、実際の利回りはもう少し高くなることが期待できます。
というのは、調達した資金の使途は、「土地の購入コスト」「建築コスト」「税金等の諸経費」「キャッシュリザーブ+リスクバッファ(予備)」といった用途となり、必ず現金として残す余剰分が含まれるはず(そうでないと、開発コストが1円でも増えたら資金ショートすることになります)なので、総事業費からキャッシュリザーブ、リスクバッファを除いた金額が実際の開発原価となります。
このため、実際の事業原価は、総事業費より小さいと想定すると、本件の場合、どの程度の開発原価に納めれば、投資家に満額配当できる売却益が確保できるか大胆に想定してみたサンプル事業モデルが以下です。
①売却額が2.8億円で配当ができる開発原価であること、②賃料は周辺相場より高めの1.35万円/月・坪まで引き上げる工夫をできるとすると、売却価格ベースの表面利回りが3.9%となります。(下表)
これでも少し売却シナリオとしては厳しい試算という印象もありますが、強い個人富裕層向け売却チャネルまたは、任意組合ファンドへの売却手段などがあれば、これくらいで事業収支が描けるかもしれません。
DARWINではこれまでもこれくらいの収支感の物件を満額配当してきていますので、収益性を高める、または出口売却先で独自の強みがあるのかもしれません。
■収益性がまだ出そうな数値感を大胆に試算(開示内容に資金使途内訳がないため、大胆な想定)
募集賃料 |
13,500円/坪 |
月額賃料 |
91,672円/1室・月 |
年間総賃料 |
11,000,626円/年 |
売却額(仮置) |
280,000,000円 |
想定表面利回り(対仮置き売却額) |
3.9% |
DARWINの悪い点
DARWINについては、これまでも何度か事業収支の試算をしてみました。
管理人自身、実際に投資もして運営結果レポート(財産管理報告書)の確認を楽しみにしていたのですが、残念ながら、投資をしてみても、実際の事業収支の内訳イメージはつかめず、上記のような試算と実体の乖離を把握することができませんでいた。
DARWINの悪い特性だと感じますが、ファンドの運用終了後の財産管理報告書では、上記のような資金細目の記載が一切なく、総事業費全てが「不動産の原価」にまとめられてしまいます。
本来総事業費を1円も残さず開発費や税金支払いに使いきる、なんてことはありえないと思うのですが、現在の不動産特定共同事業法の運用では、このような記載が許されてしまうようで、実際の開発原価が見えない状態です。
このあたりは是非、監督官庁からの指導や業界自主ルールで改善をしていってもらいた点だと個人的には感じます。
運営事業者の決算の確認は推奨
本ファンドの設計では、劣後出資比率10%ということで、総事業費3.3億円のうち、0.3億円を事業者が劣後出資で賄う設計となっています。
開発型ファンドでは、開発コストが上振れや工期の延伸リスクがある他、売却価格が想定ほど伸びない、といったリスクがあることは織り込んで投資判断が必要です。
一方で、
劣後出資比率が10%あるということは、当初想定する事業収支が悪化して、10%の損失が生じても運営事業者がその損失を負担する、という構造です。
賃料が現状の想定より10%下落することは相当の経済環境変化などがあった場合に限定されますし、17ファンドの償還(マンションの開発、竣工)を行ってきた事業者であれば、ゼネコンの倒産(これはそれなりにあり得るため注意は必要ですが)や想定外の地下埋設物でもなければ、10%の損失が出るケースは限定されるでしょう。
劣後出資比率10%というのは、それなりのリスク抑制が可能な水準と考えられます。
1点
気になる点を加えると、現在公開されている直近データでは、運営事業者の2024.3末時点の純資産が3.3億円程度である、という点です。
不動産会社では、金融機関は基本的に運転資金に融資をしてくれませんので、不動産などを担保にして資金調達をするか、自己資金(純資産)から手元キャッシュを確保する運用となるケースがほとんどです。
純資産3億円の企業が複数のファンドを並行して運営する中で、各ファンドに0.3億円規模の劣後出資を行うというのは、かなりの資金繰りの工夫が必要です。
社債等の形で金主から資金拠出を受けるなど、いろいろなやり方はあるにはあるのですが、銀行融資ほど低利で得られるやり方は限定されますし、
仮にもう少し規模が大きいファンドでで0.5億円の劣後出資を行う設計の6つのファンドで大きな損失が発生すると、運営事業者の純資産をほぼ失う可能性もあります。
運営事業者の自己資本比率が低く、ファンドで大きな損失が出た場合に他ファンドに波及するリスクがあることは改めて確認していただければ、と思います。
とはいえ、1事業者に投資先を集中させるようなことがなければ、リスクは限定できますので、分散投資先としての魅力はあるファンドではないでしょうか?
管理人としては、現在投資中のファンドの償還後には、再度DARWIN fundingに同等規模以上の投資枠を確保しようと考えています。