2026年3月26日に、国土交通省より「不動産特定共同事業法施行規則の一部改正案」及び、その改正案に関する意見募集開始が
案内されました。
施行規則改正のポイントと、改正が不動産クラファンに及ぼす影響について解説します。
なお、本内容は2026年3月26日から2026年4月26日0時0分までの期間、意見公募(いわゆるパブリックコメント)を実施します。
そのため、その意見を踏まえた見直しが入る可能性があります。
一般投資家寄りの立場、事業者寄りの立場いずれでも、Web経由で意見を出すことができますので、不動産クラファン愛好家にとっては、
法規制について意見を伝える貴重な機会でもありますので、改正案をご確認下さい。
不動産特定共同事業法施行規則の一部改正のポイント
国土交通省が開示している
改正に関する概要から、主なポイントを抜粋します。
利害関係人との取引について
利害関係人取引については、複数の点で規制強化が実施されます。
利害関係人取引に関する規制強化
施行規則の改正により、以下の規制が課されることになります。
○利害関係人に物件を売却する場合
第三者鑑定評価に相当する価額で売却するために必要な措置を行うこと
○契約成立前書面、Webサイト上での説明
ファンドにおいて利害関係人取引(物件取得、賃貸、工事委託等)を行う場合、価格妥当性根拠(第三者鑑定評価、近隣事例やその差額根拠等)を説明すること
利害関係人取引とは?
利害関係人とは、ファンド運営事業者自らやその運用ファンド、その親会社、子会社、主要株主等を指す言葉で、そのような利害関係がある相手との取引においては、利益相反関係が生じるため、規制が必要という考え方になります。
利益相反について具体例を挙げれば、例えばファンドで取得する予定の土地を、運営事業者やその関係者が先に安く仕入れて、その後にファンドに高く売りつけることができてしまえば、ファンドを組成するだけで運営事業者またはその関係者で利益を上げてしまうことができます。
事業者またはその関係者が利益を拡大すると、ファンドへの出資者が損を被る、こういった関係が成立することがわかります。
また、そのような取引で生み出した利益を元に、ファンドがその関係者に物件を賃貸し、賃料収入を得ているような事例もあります。
この場合、実際の物件の収益力と大きく異なる収益があがっているように見せることで、ファンドが保有する不動産の価値を実態より高く見せて投資家から資金調達するようなことも可能になってしまいます。
また、COZUCHIやTECROWD、TOMOTAQU、わかちあいなどで行われるケースがある、「フェーズ間取引(ファンド間での物件売買)」についても同様、利益相反関係があります。
フェーズ1の配当がフェーズ2出資者への売却益から得られるような場合、フェーズ1投資家への配当を確保するために、本来の市場価格よりも高い価格でフェーズ2投資家が物件を購入させられる可能性があります。
この際、ファンド間売買価格は公正な市場価格であることが本来求められますが、これまでの不動産クラファンでは、第三者鑑定評価などの客観性のある根拠に基づく説明は必要がありませんでした。
今回の施行規則改正だけでは、利害関係人への物件売却時に第三者鑑定評価取得義務が課されるのかがはっきりとは読み取れませんでしたが、これまで投資家にとっては不透明だった利害関係人取引についての透明性が向上することは、大きな改善になるでしょう。
もっとも、第三者鑑定評価といっても、多様な鑑定事務所が存在しますのでその質や公正性が保証される、とまでは言えませんし、そもそも不動産価格には一定の幅があるものであり、個別性の高い物件ほど需給影響で大きく価格が変動しますので、物件の特性や希少性、流動性の高さを見る必要がありますし、オペレーターの信用リスクなど、実際の市場価格に影響する多様な視点での検証が必要なことは、今後も変わらない点には注意が必要です。
情報開示の強化
情報開示の強化についても複数の点で改善が図られています。
情報開示の強化内容
○契約成立前書面における説明事項の追加
・想定利回りの根拠の開示
・不動産価格の妥当性根拠の開示
・利害関係人取引を行う場合は、価格妥当性根拠(第三者鑑定評価、近隣事例やその差額根拠)の開示
・出資された金銭の使途の開示
・造成や開発を伴う場合は許可等とその計画概要、資金計画、工事完了時期の開示
・水害ハザード内容の開示
○財産管理報告書の記載事項の充実
・資金使途の記載
・工事の概要及びその完了時期の記載
○Web掲載事項の充実
・利害関係人取引に関する事項の記載
・造成や開発工事に関する事項の記載
・利益分配に案する事項の記載
情報開示の強化で、投資家にとって何が変わる?
これまでの不動産クラファンでは、情報開示内容がサービスごとに大きく異なっていました。
事業内容から収支計画までを丁寧に紹介するサービスも有れば、その事業がどのような事業で、どうやって配当原資(利益)を生むのか解説がほとんどないサービスも有ります。
また、特に立退きや権利調整、更地解体などの案件では、資金使途内訳の開示があるサービスはほとんどありません。(汲むべき事情があるケースもあるのですが)
今後は少なくとも、こういったサービスは、情報開示の改善を迫られることになるでしょう。
投資家にとっては、不動産ビジネスをより深く理解でき、投資判断材料を得られる方向の変化が起きると期待したいところです。
いつから改正される?
少し残念なことに、施行規則の改正は、2027年4月を予定しています。
更に、一部規定については経過措置があるとなっており、一定期間の猶予期間が設けられる可能性があります。
投資家が変化を感じられるまでにはまだ少し待つ必要がありますので、注意が必要です。
不動産クラファンへの影響は?
大きく2つの変化を期待します。
より透明な情報開示がされるように
これまで、特にキャピタル型案件では、事業がどのように収益を生み、配当原資を生み出すのかの開設が不十分なサービスが存在していました。
また、どのような工事が行われるのかが不明瞭なサービスも存在していました。
そういったサービスでは、今後は、想定利回りの根拠となる事業内容や、資金使途についての情報開示が進み、情報の透明性が拡大することが期待できます。
例えば、ヤマワケエステートやTORCHESなどが行う事業用素地の転売案件の事業内容の情報開示の改善が期待できそうです。
また、例えばCOZUCHIやヤマワケエステート、TORCHES、利回り不動産、K-FUNDなどが行う権利調整案件(立退き解体や権利調整案件)の事業内容や資金使途についても、一定の情報開示の強化が期待できそうです。
利害関係人取引の透明性が改善し、事業によってはファンド運営に影響が出ることも
利害関係者取引については、価格妥当性の説明がより求められる他、「利害関係人への不動産売却時については、第三者鑑定評価に相当する額での売却をするために必要な措置」を取ることが求められるようになります。
フェーズ間売買
COZUCHIやTECROWD、TOMOTAQU、わかちあいなどで行われるケースがある、「フェーズ間取引(ファンド間での物件売買)」は利害関係人への売却に該当する可能性が高いと感じますので、今後、フェーズ間売買価格の透明性向上が図られると期待します。
一方で、これまでフェーズ間売買において、先行ファンドの投資家は、想定利回りを満額受け取れているケースがほとんどだと思いますが、今後第三者鑑定評価の取得とそれに基づく売買が求められるようになると、満額配当が得られないケースや、損失が発生する、といったケースが出てくる可能性があります。
これは投資家にとって一見デメリットにも感じるかもしれませんが、仮にそういったケースが生じたとした場合、継続フェーズの投資家が不当な損失を引き受けていた可能性があるわけですので、公正な市場価格での売買とするためのものであり、本質的には投資家保護のための変化だと受け止める必要があるでしょう。
事業者買取によるファンド償還
「事業者買取」で償還するケースも、利害関係人取引に該当します。
らくたまやTAMBOなど、運用期間中に売却できない場合も自社買取を行ってきた事業者にとっては、この際に第三者鑑定評価を求められる可能性が出てきます。
らくたまでは特に、外部売却時にも一旦自社買取を実施することで、投資家への償還日程の短期化を図る、といった運用も行っていますので、影響が大きく出る可能性がありそうです。
自社買取を行っているらくたまでも、市況変化時には自社買取の場合も元本保証がないことをうたっており、基本的な考え方はこれまでと変わらないものと想定しますが、投資家によっては、「自社買取なら満額配当で当然」と期待している方もいるのではないでしょうか。
公正な市場価格が下落した場合に、事業者が高値で買い取ることは法律で禁止される「損失補てん」に該当しますので、本来、元本保証はなかったものです。
今回の施行規則改正により、事業者買取時に損失が出る可能性があることを、改めて再認識する必要があるかと思います。
抜け穴はあるのか?
今回の施行規則改正内容からは、利害関係人取引について、濫用を抑止するようなルールが定められます。
特に、「利害関係人への不動産売却時については、第三者鑑定評価に相当する額での売却をするために必要な措置」を取らないと、事業者は「事業参加者の保護に支障を生じるおそれがある状況」と判断されることになりそうですので、安易な事業者買取や、フェーズ間売買などの透明性向上は期待できそうです。
ただ、第三者鑑定評価の取得義務について、上記以外では管理人には読み取り切れませんでしたので、運用上の抜け道とならないよう、監督上の留意事項等においてしっかり抜け道をふさいでもらいたいところです。
ただし、このルールでは大きな抜け道が存在していると感じます。
「利害関係人」が「ファンド運営事業者自らやその運用ファンド、その親会社、子会社、主要株主等」に限定されると、資本関係がない関係会社との取引が対象外になります。
例えば当サイトでは、TECROWDにおける特定企業との取引事例をいくつかの記事で紹介してきましたが、これらの企業との取引が利害関係人取引には該当せず、今回の規制強化の対象外になるようだと、取引の透明性向上が図られなくなってしまいます。
<関連記事>
・
TECROWD「AMANEKU」「大阪市 四つ橋なんば駅前ビル」等の取引関係から利害関係人取引について考えてみた
・
TECROWD93号ファンド「OME Data Center#04(青梅市新町9-A)」の取引先「ADM社」との取引を確認してみた
・
AMATUHI社の決算と、収益に占めるTECROWDの影響を調査してみた
資本関係以外の基準で対象企業を判定することは難しいとは思いますが、例えば一定以上の規模、比率の取引関係がある企業との取引の透明性向上について、規制強化や重点監督対象に加えるなどの、このようなケースに対する対応も検討を期待したいものです。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績50ファンド / 4,000万円以上。今後もコンスタントに年間15ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士