TSON FUNDINGとは?
2020年12月のサービス開始以降、なんと既に152ファンドを組成し、既に85ファンドの償還を完了した業界有数の実績を持つ不動産クラウドファンディングサービス(※)です。
※不動産クラウドファンディングサービスは、不動産特定共同事業法に基づき提供される不動産投資から得られる利益を原資に配当、元本償還を行う投資商品です。
不動産クラウドファンディングサービス共通の特徴については記事後半で解説します。
TSON FUNDINGを他サービスと比較してみる
まずは、定量的なデータから、他の不動産クラウドファンディングサービスと比較して、サービスの特長や傾向をチェックしてみましょう。
半年間で33ファンドと、ファンド組成頻度が非常に高く、投資チャンスが非常に多いサービスとなっています。
劣後出資比率も11.5%と、当サイト掲載サービスの平均には届きませんが、10%を超えていますので、それなりに安全性を担保した設計となっていると言ってよいでしょう。
利回りはここ最近の不動産クラウドファンディングサービス全体の利回り向上の影響もあり、平均を下回っていますが、ヤマワケエステートなどの特に高利回りなファンドを除けば、安定して5%~6%のファンドを提供しているそれなりの利回りのサービスと言えるのではないでしょうか。
TSON FUNDING ファンド提供状況
項目
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直近6カ月
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累計
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全サービス平均
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利回り
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5.4%
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5.2%
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6.24%
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劣後出資比率
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11.5%
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10.6%
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19.72%
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組成件数
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33件
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152件
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資金調達額
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26億1,820万円
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117億1,994万円
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運用終了額
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61億8,884万円
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※2024年10月10日時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選32サービス」の平均値です。
TSON FUNDINGのサービスの魅力、特徴
TSON FUNDINGの魅力、特長をまとめると、以下のようなポイントになります。
TSON FUNDINGのサービスの魅力、特徴
- とにかく組成頻度が多く、投資機会が潤沢に得られるため、分散投資先候補に加えると投資効率向上が期待できる
- 名古屋本社の企業が運営しており、東海エリアへの分散投資が可能
- ほどほどの利回りと劣後出資比率で、投資商品といてのバランスもそれなりの水準
TSON FUNDINGを運営する株式会社TSONとは?
不動産クラウドファンディングは、「面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ」する投資商品です。
投資先を選ぶ際には、ファンド運営事業者の不動産事業のノウハウや財務状況を確認することが非常に重要になります。
そこで、TSON FUNDINGを運営する「株式会社TSON」をチェックしてみましょう。
株式会社TSONの基本情報
株式会社TSONは2008年設立の不動産会社で、1棟アパートや戸建て住宅の開発を中心に、それらの資金調達に不動産クラウドファンディングも活用することで事業規模を拡大してきています。
2023年に上場廃止したものの、それまでは東証「TOKYO PRO Market」に上場していた他、2028年までに売上100億円規模を超えることをめざしており(2024年6月期は41.17憶円)、成長意欲の高い企業です。
名古屋本社ですが首都圏にも進出し、1棟アパートを中心に、2028年度に84億円の売上げをめざすなど、事業領域の拡大にも積極的です。
不動産の仕入れにはAIを活用するなど、不動産テック領域にも力を入れていることを特長としています。
株式会社TSONの決算情報チェック & 業界平均との比較
次に、当サイトに掲載している株式会社TSONの決算をご覧下さい。
企業の稼ぐ力があらわれる「PL」を見ると、売上総利益率は当サイトに掲載する不動産クラファン事業者の平均を上回っています。
一方、営業利益率は平均を下回る他、経常利益は2期連続での赤字となっています。
2024.6月期は特別利益(債務免除益)を得られた結果、当期純利益5,736万円を確保していますが、2期連続での経常赤字という状況を考慮すると、来期以降の決算状況のウォッチは必要でしょう。
企業の財務の健全性があらわれる「BS」を見ると、自己資本比率がじょじょに低下し、直近では10%を切っており、当サイトに掲載する不動産クラファン事業者の平均を大きく下回っています。
ただし、この点については過度に悪く見る必要はないでしょう。
というのは、COZUCHIやトモタクなど、不動産クラファンでの資金調達比率が高い事業者では、不動産クラファンで運用中の資産の分、「総資産」が膨らみます。
とはいえ、TSONがクラファンで運用中の不動産に対して負っているリスクは劣後出資とそのファンド償還までの運営責任などに限定されています。
加えてTSONの場合、不動産クラファンで運用する不動産は主に完成済み、または完成直前の不動産であり、ファンドでは完成した販売完了までの期間をファンドで資金調達しているケースが多いため、ある程度流動性のある不動産が中心となっています。
開発型ファンドや権利調整型ファンドのように、バリューアップが完了するまで流動性に大きな制約がある事業者よりは、リスクが限定されていると考えてよいでしょう。
決算からは、稼ぐ力、財務の健全性ともに、少しきになる点は残りますが、株式会社TSONの直近の
決算説明資料を見ると、現在の保有しているファンド運営不動産28億円強は、売却完了により6.45億円規模の利益貢献が期待できる(※)とのこと。
今期の営業活動で、この目論見通りの利益を実際に確保できれば、再度成長軌道に乗せていける期待も持てるのではないでしょうか。
※28億円の資産で6.45億円の利益を上げるには、売上高総利益率が20%を超える必要があるため、2024.6月期までより大きく利益率を改善する必要がある点は注意が必要。
※決算の見方については、別記事「
不動産クラウドファンディング事業者の決算チェックポイント」で解説していますので、興味を持った方はご欄下さい。
東証「TOKYO PRO Market」上場廃止までに何があったか
株式会社TSONは2023年11月に東証「TOKYO PRO Market」の上場廃止申請を出し、現在は非上場企業となっています。
その前にはいくつかの気になる出来事があり、情報開示されていますので、その点についても触れておきます。
<時系列推移>
2023年 8月28日 2023年6月期 決算短信開示
2023年 8月28日 2023年6月期 会計監査人からの辞任通知受領
2023年 8月28日 2023年6月期 代表取締役の選任(それまでの代表取締役が取締役に)
2023年 9月 4日 2023年6月期計算書類及びその附属明細書に対する監査意見不表明
2023年 9月27日 支配株主等の変更
2023年10月 6日 2023年6月期決算短信[日本基準](非連結)の一部訂正
2023年11月29日 上場廃止申請の実施
内容と流れとしては、8月28日に決算開示したものの、その決算の監査を行う会計監査人が辞任するとともに、監査意見不表明:要は、監査意見を出せない、という状態となってしまいました。
会計監査人は開示資料中で「十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったため、監査意見を表明しない」としており、株式会社TSONが十分な証拠を提示しないことを要因としているようです。
そしてその後の10月6日に、決算数値の訂正がされた結果、黒字決算が赤字決算に訂正となった、という経緯です。
粉飾意図の有無などは当然外からは判断できませんが、結果として黒字決算として開示された数値は修正され、赤字決算が確定した、ということ自体は事実です。
その間、代表取締役や大株主もあり、現在の株式会社TSONは経営体制を大きく見直した上で、現在は新たな成長戦略を元に再度の成長をめざしている状況。
新たな成長戦略については、株式会社TSONの直近の
決算説明資料をしっかり確認の上で投資判断を行っていただければと思います。
まとめ:TSON FUNDINGとは?
ファンドの組成頻度が高く投資チャンスが多く、ファンドの利回り・劣後出資比率もそれなりに確保されたサービスです。
組成頻度の高さを考えると、分散投資に加えることで投資効率を上げることが期待できます。
運営企業の決算については来期の経常黒字化や売上高営業利益率などを確認したい部分もありますので、過度に投資先を集中させず、分散投資を前提に投資検討いただくと良いのではないでしょうか。
最後に
ここまでTSON FUNDINGの魅力と留意点をご説明しました。
不動産クラウドファンディング投資は堅実な利回り投資が期待できる投資商品ですが、万が一の運営事業者の倒産リスクの可能性も踏まえ、分散投資が非常に重要になりますので、新たな投資先候補として検討されるのは、いかがでしょうか?
なお、当サイトではリスク分散の観点で、複数のサービスに対する分散投資を強く推奨しており、投資先サービスやファンド探しに役立つ情報の収集、掲載に努めていますので、他サービスについても是非ご確認下さい。