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ヤマワケエステートやCOZUCHIで行うテナントとの権利調整(立退き)とは?

【2024年6月15日 12:00 PM】

テナントとの権利調整(立退き)は、そもそもどうして必要?

COZUCHIやヤマワケエステートでは、現在テナント(入居者、店舗)の入っている不動産を購入した上で、権利調整や建物の解体を行って売却することで売却益を得るファンドが提供されています。
※ヤマワケエステートの場合、公式Webサイト上では明記されていないケースが多いようですが、重要事項説明書を見るとテナントが入っており、解体前に入居者との交渉が必要となることが想定される案件が多数存在します。

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この権利調整はいわゆる立退きと言われるものですが、どうして立退きが必要なのでしょう?
また、立退きを行うことで、どうして不動産が高値で売却可能になるのでしょう?

不動産業界に関わる方以外では意外と知られていないのではないでしょうか。

そもそも入居者を退去させることは簡単ではない ~権利調整(立退き)のビジネスモデルとは~

不動産は生活やビジネスにおいて欠かせないものですので、「借地借家法」という法律で、賃借人の権利は手厚く保護されています
住居用マンションの一般的な賃貸借契約において、入居者側からは3カ月前に解約申し入れをすることで解約が可能です。
ところが、貸主(オーナー)側からの解約申し入れについては、「正当事由」がないと有効となりません

マンションの入居者にとっては、貸主の勝手な都合で簡単に追い出されては、安心して住むことができませんので、入居者を守るための規定として借地借家法に定められています。
(余談ですが、借地借家法は民法を上書きする特別法の位置づけとなっており、民法の条文を上書きして賃借人を保護するような構造となっています。)

借地借家法 第28条>
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

つまり、借地借家法の定めにより、賃借人には強い権利が与えられているため、事業者にとっては「建物を解体して再開発することでバリューアップが図れる」おいしい物件だとしても、テナントの立退きがいつでもできるという簡単なものではないのです。

1件1件のテナントと合意を元に契約を変更したり、退去の同意を得ていくことで初めて建物の解体が可能になりますし、退去調整の期間に一気に立退きが終了せず、段階的に立退きを行う場合、空室期間が長引くためテナントからの賃料収入が少ない状態で不動産を維持管理する必要がありますので、その期間の収益力は低い状態となります。
特定テナントとの交渉が長引けば、案件の収支も大きく悪化する
ことになってしまいます。

そのため、不動産を再開発するデベロッパーはこういった手間とリスクのある立退き案件は行わず、他の業者が立ち退きを完了し、更地となった状態で初めて購入するケースがあります。
多くのデベロッパーが購入可能で、かつ、立退きに関するコストやリスクが解消された状態となることで、不動産の価値があがるわけです。
これが、権利調整(立退き)を行うことで売却益を得るというビジネスの構造になっています。

権利調整では、実際には何をするの?

一般には「立退き」、「地上げ」といった言葉は、悪い印象を持つ方もいるのではないでしょうか?
バブル前などに問題になったような悪質なケースは減っていますが、それでも年に数回、メディアで乱暴な事例が掲載されることがあります。

が、入居者との交渉は丁寧に行うことがもちろんできますし、老朽化して耐震性や安全性に問題が生じた不動産については、立退き再開発を通じて再開発を行うことで、地域の安全性や利便性を向上することにもつながる、安全で住みやすい街づくりの一環でもありますので、適切な対応を行うことは、決して悪いことではありません。

実際の入居者との交渉プロセスとしては、建物の解体を行いたい理由や再開発契約の詳細など(正当事由)を説明し、契約解約の合意を得たり、「定期建物賃貸借権(定期借家権)」と呼ばれる、期間の定めのある(契約更新ができない)契約への変更を行うことで、入居者が住み続ける権利がない状態への変更を進めます。

権利調整(立退き)に失敗するケースはあるの?

権利調整にはリスクがあり、失敗するケースももちろんありえます。そういったリスクがあるからこそ、そのリスクを解消することで売却益を狙うことができるわけですから。

とはいえ、立退きを得意とする事業者は、そういったリスクを円滑に処理してきた実績やノウハウを持っており、多くのケースで利益を獲得できてきているからこそ事業が成立しているわけです。
業界ではいわゆる「立退き屋」「地上げ屋」といった事業を得意とするプレーヤーが存在していますし、だからこそ老朽化建物の再開発により、地域の安全や利便性が確保されているとも言えます。

さて、実際の借主との交渉プロセスは、大きく分けると、

①事業者から賃借人への「任意の交渉」
②裁判

の2段階があります。

では、裁判になればどうなるのか、というと、法律に定める「正当事由」が認められるかどうかを争うことになります。
判断には多様な検討ポイントがあり、事業者は過去の凡例なども踏まえつつ交渉するものの、裁判で正当事由が認められない結果となる可能性もあります。
その場合は正当事由が発生するまでの期間、賃借人は対象建物に住み続ける権利を得ることになり、再開発によるバリューアップが当面できない状態となりますので、想定していた立退きを通じた売却益確保が困難になります。
こういったリスクはCOZUCHIの マンション用地 プロジェクトの事例を見るとしっかりサイトにも記載されていますね。

<COZUCHI マンション用地 プロジェクト 記載抜粋>
テナントとの権利交渉が難航するリスク
テナントの意向によっては、必ずしも権利交渉が順調に進まない可能性があります。
しかしながら、仮に運用期間内にて交渉が完了しない場合でも、テナントからの賃料収入に基づき想定利回り年利2.0%程度の配当原資は確保できる見通しです。

不動産の流動性に関するリスク
外部売却によるキャピタルゲインを配当原資とする想定ですが、テナントとの交渉次第では想定する時期および価格で売却できない可能性があります。

不動産クラウドファンディングのルールを定める不動産特定共同事業法では、投資家にリスクに関する説明を行うことを事業者に求めていますが、投資家はこれらのリスク記載を確認し、納得した上で投資したということになりますので、立退きに失敗して損失が出るような場合も、投資家の自己責任になりますので、リスクを正しく理解することは重要です。

テナントとの権利調整(立退き)が失敗するケース、成功するケース

裁判となったケースでは、立退きが認めれるケース、認められず入居者が引き続き建物を使用する権利が認められるケースいずれも存在します。
そのため、立退きは見通しが立ちにくくリスクがあるわけですが、一般論として、ある程度難易度を判断するポイントがありますので、投資先選びの際の参考として紹介します。

個人向けより、店舗や事業用の方が難易度が高い

店舗はイメージがしやすいですが、「立地」が少し変わるだけで店舗の収益力が大きく変わますし、近隣に移転先が見つかったとしても、ほんの少しの立地の違いですら、せっかくつかんだ常連客を失ってしまうケースもあります。
その影響で店舗に与える損害を補填することが求められますし、その金額が膨大に膨らむリスクがあります。
立退きを行う事業者は事前に店舗の単価や客数を探って、ある程度の店舗の収益力の見通しを調べたりはするのですが、それでも見通しから大きくずれるリスクは存在します。
店舗側では、儲けだけでなく常連客とのつながりを大事にするケースもあり、金銭補償だけでは立退きに合意いただけないことも考えられます。

一方で個人の場合は、学区や最寄り駅などにこだわりがあっても、近隣の類似のマンションに空室があり、転居先を確保すれば了解が得られるケースも多く、店舗に比べると、難易度が下がります。

とはいえ、例えば老朽化アパートや借家に年金暮らしのお年寄りが住んでいるようなケースでは、賃料が相場と比べて非常に安い場合、転居先を確保しても賃料が上がってしまうため生活に支障が出る場合なども考えられます。
ファミリー層であれば、学区の変更がないことを条件にされるケースが多いというのも、想像ができやすいと思いますので、個人なら必ずしも簡単、というわけではないことは補足させていただきます。

ヤマワケエステートの東京都品川区東中延 宅地ファンドは、昭和34年建築の住居で、月額賃料3万円で入居者がついている案件となっていますので、管理人がサイトを見て把握できた情報の限りでは、丁寧な対応が求められる案件である可能性を否定しきれませんでした。

老朽化した建物より、安全性を確保した建物の方が難易度が高い

わかりやすいのが、「旧耐震」基準で建築された建物です。
耐震基準は1981年に大きな改正があり、同年6月1日以降の基準は「新耐震基準」、同年5月31日以前の基準は「旧耐震基準」と呼ばれており、旧耐震基準で設計された建物は、震度6強程度の地震を想定した耐震性が確保されていない可能性があります。
そのため、耐震改修促進法により、耐震診断が義務付けられていますが、耐震性が不足するからといって、即取り壊しが決定するわけではなく、現在も耐震性に劣る建物が使用されているケースがあります。
行政庁から改善指導を受けているようなケースも存在しています。

こういったケースで貸主が建替えを計画することは、地域や住人の安全性確保という大義名分が存在します。(現実的に大切な取り組みだと思います。)

では逆に、耐震診断の結果耐震性が足りないことが発覚し、耐震補強工事により安全性が確保されたところのビルではどうでしょうか?改修工事に協力してきた住人としては、住み続けることを期待するケースがありそうです。
そこで対象ビルを別のオーナーが取得して、いきなり再開発を行うことを決定する、ということが、「正当事由」として認められるか、となると、話がぐっと違ってきますね。
同様、耐震性の不足程度が低く、軽微な工事で耐震性確保が可能なケースでは、取り壊しではなく、耐震性補強を行うことが求められる可能性もあります。

また、建物の法定耐用年数が十分残っており、修繕状態も良好に維持されている建物についても、どうでしょうか?

再開発プランがある場合より、更地売却の方が難易度が高い

裁判になる場合を想定すると、再開発プランにより、現在の状態より経済価値が高くなることの証明が求められる場合があります。
具体的な建物の設計や収支計画が策定されており、現在の建物より利用価値を高めることが立証されれば、現在の入居者に与える不利益と対比しても社会にとって価値があると判断される可能性があります。

が、建物を取り壊して更地にするまでの計画しかない場合には、再開発による経済合理性の根拠が弱くなります。

まとめ:権利調整(立退き)には一定のリスクがあることを織り込んで投資判断を

権利調整(立退き)は、必ず成功するわけではなく、裁判まで持ち込んでも負ける可能性がある、一定リスクのある取組だということを解説しました。
たまにメディアで取り上げられる悪質なケースも、最初から強引な手段をとったわけではないでしょうが、裁判で勝てる状況が形成できない中、事業収支を確保するために、やむなく強引な手段になっていってしまったのかもしれませんが、投資家としては、自身の出資ファンドでそのような事態が起きることは、想像もしたくないですよね。

不動産クラウドファンディングで多い更地解体までの事業モデルは、ファンド運営事業者が立退きまでのノウハウに強みがあるケースが多いからと考えられますが、この場合には裁判に訴える前に、まず入居者との交渉で合意獲得をめざすことが王道の権利調整業務となるのではないでしょうか。
つまり、本当はテナントの属性(個人か店舗か)やテナントとの調整状況(どの程度の割合で定期借家契約にまき直しが完了しているか、など)、建物の危険性や耐震性などが開示される方が安心感があるのですが、当然住人との交渉においては、情報開示が悪影響を与える場合もあります。
例えば「まだほとんどのテナントが合意していない」ことを開示すると、テナントの残数も裁判の結果に影響するため、住人からすると強気の交渉をしたくなるかもしれません。

ましてや、「自身の転居によって事業者や投資家(ファンド出資者)が利回り●%得られるビジネスになっている」、ということがわかってしまうので、交渉では金銭補償を強く求めたくもなるかもしれません。

入居者も当然自身の権利を最大限主張して交渉したいでしょうし、弁護士などが絡んで金額交渉となるケースもあります。
例えば以下サイトを見ると、立退きに要する金額にも大きな幅があることがイメージできるのではないでしょうか。
参考:弁護士法人ライズ綜合法律事務所 Webサイト

上記サイトを見ていただくとわかりますが、権利調整(立退き)案件では権利調整が失敗したり長期化するリスク以外の他にも、事前の想定よりコストが高くつき、案件収支を悪化させるリスクもあるということです。
ヤマワケエステートの更地解体型ファンドの多くではテナントが存在しているため、権利調整(立退き)が必要と想定しますが、Webサイト上ではそのあたりの情報開示がないケースがほとんど(管理人が見る限りない?)です。
管理人としてはもう少し情報開示を充実させてもらいたいと感じますが、情報開示が限定される状況では、投資家側が権利調整(立退き)に関するリスクがあることを理解した上で投資判断することをお勧めしたいと思います。

まとめ

本記事では、「権利調整(立退き)」について解説しました。
不動産クラウドファンディングでは投資家から高い利回りを求められるため、高利回り案件では難易度の高い権利調整案件も多く扱われています。

管理人の知る限り、ファンドがかかわる案件で悪質な事例が確認されたといったことはありませんが、こういったリアルなリスクや実態も踏まえて投資判断をいただくほうがフェアに思いますので、解説させていただきました。
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