「えんファンディング」とは?
2021年8月のサービス開始以降、30件を超えるファンドを組成してきた不動産クラウドファンディングサービスです。
運営企業が福岡市で「デザイナーズマンション」の開発を中心に事業領域を広げてきた「株式会社えんホールディングス」のため、地方都市の優良資産に対する分散投資が可能という特徴があります。
不動産投資ではエリアや物件タイプを分散させることが重要になりますが、エリア分散では投資先エリアの地域特性も重要です。
福岡市は地方都市の中でも人口増加傾向が続く資産価値の下落リスクが小さいエリアのため、分散投資先としての魅力が大きいと言えるでしょう。
「えんファンディング」は不動産特定共同事業法に基づき提供される投資型クラウドファンディングサービス
「えんファンディング」は、不動産特定共同事業法(以下、不特法)に基づき厳しい規制やルールのもとで提供される、投資型クラウドファンディングサービスです。
不動産クラウドファンディングとは、「不動産特定共同事業法(以下、不特法)」という法律に基づき、国土交通省・都道府県から許可または登録を認められた事業者のみが投資家に提供可能な投資商品であり、以下のようなメリット・強みを持つサービスです。
不動産クラウドファンディング投資のメリット・強み
- 株式のような値動きがなく、堅実な配当利回りが期待できる
- 出資金の使途は対象不動産運営に関するものに限定し、リスクを限定
- 優先劣後構造で、ファンドで損失が生じてもまず事業者が負担
- 契約書は行政の審査を経ており、不当に不利な心配がない
- 面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ
- ただし元本保証はないため、複数サービスへの分散投資は重要!
不動産特定共同事業法は厳しい投資家保護のためのルールを定めているため、サービスやファンド運営を行う事業者は全て、このルールに従って投資家保護に取り組んでいます。
(上記のうち、優先劣後構造については厳密には法律に定める義務ではないため、ヤマワケエステートなど一部該当しない事業者が存在します。)
「えんファンディング」についても当然、サービス提供事業者・ファンド運営者ともに福岡県知事の許可を取得しており、サービスやファンド運営についても行政の監督を受けています。
(株式会社えんホールディングス:不動産特定共同事業 福岡県知事第6号)
不動産クラウドファンディングに共通する特徴や制度については本サイトの
「不動産クラウドファンディングとは?」で解説していますので、ご確認ください。
「えんファンディング」を他サービスと比較してみる
まずは、定量的なデータから、他の不動産クラウドファンディングサービスと比較して、サービスの特長や傾向をチェックしてみましょう。
運営企業がデザイナーズマンションのデベロッパーだけあり、扱っている不動産は福岡市の比較的立地が良く、築年数も築浅~築20年未満の区分マンションが中心のインカムファンドとなっています。
人口増加エリアの駅近マンションということで、資産価値が落ちにくい物件において更に、投資家の元本棄損リスクを抑制するための仕組みである劣後出資比率も業界平均を超える20%となっており、安全性を高めるファンド設計となっています。
安全性を重視した設計となっている分、利回りは平均で3.6%と、他の不動産クラウドファンディングと比べて控えめの水準です。
えんfunding ファンド提供状況
項目
|
直近6カ月
|
累計
|
全サービス平均
|
利回り
|
3.6%
|
4.7%
|
6.07%
|
劣後出資比率
|
20%
|
20.3%
|
18.78%
|
組成件数
|
4件
|
33件
|
–
|
資金調達額
|
4,728万円
|
4億7,192万円
|
–
|
運用終了額
|
–
|
3億7,480万円
|
–
|
※2024年5月時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選23サービス」の平均値です。
「えんファンディング」のサービスの魅力、特徴
「えんファンディング」のサービスの特徴をまとめると、以下のポイントとなります。
「えんファンディング」とは
- 福岡市エリアのデザイナーズマンションに分散投資可能
- インカム型で劣後出資比率20%と、安全性を重視したファンド設計
- エリア分散効果も含め、分散投資先候補としての魅力あり
- 利回りは控えめのため、分散投資を重視する投資家向け
- ファンドの組成頻度は1~2カ月に1ファンドと安定しているが、募集額が小さい
不動産クラウドファンディングでは分散投資が重要になりますが、最優先のファンドとまではならなくとも、分散投資先としてリサーチ対象に加える価値は十分にあるファンドではないでしょうか?
「えんファンディング」を運営する「株式会社えんホールディングス」とは?
不動産クラウドファンディングは、「面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ」する投資商品です。
投資先を選ぶ際には、ファンド運営事業者の不動産事業のノウハウや財務状況を確認することが非常に重要になります。
そこで、「えんファンディング」を運営する「株式会社えんホールディングス」をチェックしてみましょう。
「株式会社えんホールディングス」の基本情報
1999年に創業した老舗不動産会社で、福岡市でデザイナーズマンション「エンクレスト」シリーズを開発するデベロッパーです。
「ホールディングス」という名称の通り、グループ会社には不動産の賃貸管理から建物管理、不動産管理に関するシステム開発を行う企業など、デベロッパー事業に関わる不動産関連事業を展開しています。
エンクレストは既に120棟を超える供給実績を持っており、福岡県下の分譲マンション販売実績ランキングで長年首位を堅持している福岡エリアの有力デベロッパーです。
地元で人気のある福岡ソフトバンクホークスのオフィシャルスポンサーを務めるなど、地域密着で実績と知名度を積み上げてきていますね。
運営企業情報
項目
|
情報
|
運営企業名
|
株式会社えんホールディングス
|
代表者
|
代表取締役 原田透
|
住所
|
福岡県福岡市博多区住吉3-12-1 えん博多ビル
|
TEL
|
092-260-5300
|
会社設立
|
1999年11月
|
「株式会社えんホールディングス」の決算情報チェック & 業界平均との比較
まず、当サイトに掲載している「株式会社えんホールディングス」の決算(2024.5時点)を見てみましょう。
運営企業の財務の健全性が現れる「BS」を見ると、意外に自己資本比率が当サイトの不動産クラウドファンディングサービス事業者の平均を下回っています。
マンションデベロッパーはどうしても、土地の仕入れや建築コストがかかる一方で、その資金はマンションの売却終了時期まで回収できないため総資産が膨らみがちになるものではありますが、平均を下回っている状態ということは理解しておく必要はありそうです。
次に、運営企業の稼ぐ力が現れる「PL」を見ると、不動産開発自体の収益性がわかる「売上総利益率」は業界の平均を超えているものの、2022年度の決算では営業利益がマイナスとなっています。
経常利益ベースではプラスとしており、直ちに問題という数字でもないと思いますが、決算データについては継続的にウォッチしておく必要はありそうです。
※決算の見方については、別記事「
不動産クラウドファンディング事業者の決算チェックポイント」で解説していますので、興味を持った方はご欄下さい。
株式会社えんホールディングス 決算情報(BS)
項目
|
2022年12月31日
|
2021年12月31日
|
2020年12月31日
|
全サービス平均
|
総資産
|
323億6,303万円
|
326億2,497万円
|
298億8,126万円
|
–
|
純資産
|
49億4,347万円
|
42億9,172万円
|
42億8,656万円
|
–
|
自己資本比率
|
15.3%
|
13.2%
|
14.3%
|
23.42%
|
運用中資産規模 AUM(※)
|
1億2,300万円
|
–
|
–
|
–
|
AUM÷純資産
|
0.02
|
–
|
–
|
8.13
|
現預金
|
–
|
–
|
–
|
–
|
現預金比率
|
–
|
–
|
–
|
8.66%
|
※直近1年間のファンドの募集額に運用期間(年換算)を乗じることで、現在運用中ファンドにおける投資家からの出資金規模を算出。(当サイト独自指標です)
株式会社えんホールディングス 決算情報(PL)
項目
|
2022年12月31日
|
2021年12月31日
|
2020年12月31日
|
全サービス平均
|
売上高
|
50億346万円
|
71億8,714万円
|
98億4,549万円
|
–
|
売上総利益
|
11億4,142万円
|
14億5,269万円
|
14億5,269万円
|
–
|
売上総利益率
|
22.8%
|
20.2%
|
14.8%
|
18.64%
|
営業利益
|
9,673万円
|
1億3,334万円
|
1億3,334万円
|
–
|
営業利益率
|
-4.1%
|
1.9%
|
1.4%
|
2.95%
|
経常利益
|
9,673万円
|
1億3,334万円
|
1億3,334万円
|
–
|
経常利益率
|
1.3%
|
2.4%
|
1.8%
|
1.44%
|
※2024年5月時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選23サービス」の平均値です。
まとめ:「えんファンディング」とは?
「えんファンディング」は、有力な地方都市である「福岡市」のデザイナーズマンションに分散投資が可能な、分散投資先として魅力のあるサービスです。
好立地の区分マンションのインカム収入を配当原資とする安全性に加えて劣後出資比率が20%とファンドでの損失リスクはかなり低く抑えられており、投資先が見つからず浮いている余剰資金の投資先候補としてウォッチしておく価値は十分にあるでしょう。
運営企業の財務面ではGALA FundingやT’s Fundingなどに若干だけ見劣りするものの、1999年創業の福岡市でもトップの実績を持つマンションデベロッパーが運営しており、不動産クラウドファンディング事業者の中では安心感を持てるのではないでしょうか?
最後に
ここまで「えんファンディング」の魅力と留意点をご説明しました。
不動産クラウドファンディング投資は堅実な利回り投資が期待できる投資商品ですが、万が一の運営事業者の倒産リスクの可能性も踏まえ、分散投資が非常に重要になりますので、新たな投資先候補として検討されるのは、いかがでしょうか?
なお、当サイトではリスク分散の観点で、複数のサービスに対する分散投資を強く推奨しており、投資先サービスやファンド探しに役立つ情報の収集、掲載に努めていますので、他サービスについても是非ご確認下さい。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績10ファンド / 1,000万円以上。今後もコンスタントに年間10ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士