ヤマワケエステートとREVOLUTION社の関係
本題に入る前に、まず、ヤマワケエステートとREVOLUTION社の関係を確認しましょう。
2024年10月11日に、REVLUTION社がヤマワケエステートの親会社であるWeCapital社を子会社化しました。
このことによって、ヤマワケエステート社もREVOLUTION社の連結決算に含まれることとなりました。
不特法では、不動産クラウドファンディングを運営する企業の直近3年間の決算情報の開示義務(ヤマワケエステートのような1号事業者には会計士監査義務も)を定めているものの四半期決算の開示義務はないのですが、上場企業の子会社となったことで、親会社であるREVOLUTION社の決算開示の中で、一定の情報が得られるようになりました。
ただし、連結決算では各子会社の決算を分けて計上されていませんので、あくまで開示情報の範囲での分析となります。
親会社であるREVOLUTION社の開示情報
2025年3月14日に、REVOLUTION社より
2025年10月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)の開示がありました。
第一四半期は2024年11月1日~2025年1月31日までと、ヤマワケエステートとは決算期が異なるため単純比較できませんが、ヤマワケエステ―トの直近のBS/PLよりも4カ月ほど先の事業状況に関する情報が記載されています。
ここにはヤマワケエステート社単独でのBS/PLの記載はありませんが、第一四半期(2024年11月1日~2025年1月31日まで)の業績について以下の記載がありました。
特に注目すべきところは、「
販売用不動産の評価損が1,986百万円計上された」という点ですね。
不動産会社においては、販売用不動産については、「低価法」という基準で評価する必要があるため、取得原価よりも、将来回収可能な額が下回った場合には、評価額を回収可能価額に見直し、その差額が当期の損失計上される、という仕組みがあります。
つまり、今回販売用不動産の評価損をこれだけ計上した、ということは、
社内/監査法人とも丁寧に協議の結果、営業努力しても、取得原価以上の価格での売却が困難と判断された不動産を保有していた、というように想定する必要が有るでしょう。
クラウドファンディング事業における当第1四半期連結累計期間の業績予測は売上高5,356百万円であったのに対し、実績値としては売上高6,020百万円、営業損失1,890百万円となりました。案件の早期売上高計上があり計画値を上回った一方で、販売用不動産の評価損が1,986百万円計上されたことを主因に、当セグメントにおいて大幅な損失を計上する結果となりました。
ヤマワケエステートの決算状況について
ヤマワケエステートの直近3ヵ年の決算(~2024年09月30日まで)について
ヤマワケエステート単体の直近(~2024年09月30日まで)の決算は、以下のような状況です。
ヤマワケエステート株式会社 決算情報(BS)
項目
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2024年09月30日
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2023年09月30日
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2023年02月28日
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全サービス平均
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総資産
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319億1,709万円
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5億9,847万円
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2億835万円
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–
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純資産
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1億8,329万円
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1億1,864万円
|
1億1,086万円
|
–
|
自己資本比率
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0.57%
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19.82%
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53.21%
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18.05%
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運用中資産規模 AUM(※)
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316億3,800万円
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–
|
–
|
–
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AUM÷純資産
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172.61
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–
|
–
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9.54
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現預金
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–
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–
|
–
|
–
|
現預金比率
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–
|
–
|
–
|
9.02%
|
※直近1年間のファンドの募集額に運用期間(年換算)を乗じることで、現在運用中ファンドにおける投資家からの出資金規模を算出。(当サイト独自指標です)
ヤマワケエステート株式会社 決算情報(PL)
項目
|
2024年09月30日
|
2023年09月30日
|
2023年02月28日
|
全サービス平均
|
売上高
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63億8,342万円
|
4億8,534万円
|
8,606万円
|
–
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売上総利益
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21億625万円
|
5,890万円
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4,784万円
|
–
|
売上総利益率
|
33%
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12.14%
|
55.59%
|
20.88%
|
営業利益
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2億2,940万円
|
1,317万円
|
464万円
|
–
|
営業利益率
|
3.59%
|
2.71%
|
5.39%
|
5.61%
|
経常利益
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2億1,336万円
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1,156万円
|
174万円
|
–
|
経常利益率
|
3.34%
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2.38%
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2.02%
|
3.79%
|
BSを見ると、直近決算期末での純資産が1億8,329万円となっており、REVOLUTION社連結において、直近第一四半期で生じている評価損(19億86百万円)がそのままヤマワケエステートで生じた分だとすると、
一見すると、「債務超過では?」という疑念をもってしまう方もいそうですが、実際にはそう単純なものではないため、後ほど解説しますので、一旦はこの疑念は払拭しつつ読み進めて下さいませ。
次にPLを見ると、売上高63億円強に大して、売上総利益が21億円と、売上総利益率が33%水準となっています。
この意味するところも、素直に「不動産ビジネスで33%も粗利がある」と呼んでしまいそうですが、実際には、「不動産クラウドファンディングの営業者としての粗利が33%」と読む必要があります。
不動産クラファンの営業者であるヤマワケエステートは、ファンド組成時に受け取る営業者報酬や、ファンドの利益が大きければ、劣後出資者として残利益が得られます。
ファンド運営事業者(不特法1号事業者)は、ファンドを自らのBS/PL内に取り込んでいるため、ファンド運営者(クラファンサービス事業者)の数字と、投資家の出資金で運営しているファンドの数字両方が計上されてしまいますので、これを正確に分けて把握することが開示情報だけでは難しいのです。
ファンドで生じた収支は、基本的には出資割合に応じてファンド運用終了時に出資者に帰属する形となるため、ヤマワケエステート自体の決算を分析するには、運用終了時にファンド出資者の帰属となる分(運用中ファンド)を差し引いた影響を見ていく必要があるでしょう。
そこで、次に、ヤマワケエステート自体の事業や決算の構造を分析していきたいと思います。
ヤマワケエステートの事業構造
ヤマワケエステート単体決算において、ファンド運用からの収益で大きいものは、
①ファンド組成時の報酬(最近のファンドだと募集額の4.5%など/初期はゼロ円のものも)
②ファンド運用終了後、投資家配当後に残った利益分
となっています。
①についてはファンド運用結果に関わらず、組成時に計上される収益のため、ファンドでの資金調達額が大きくなるほど先に利益計上されます。
①の報酬額はサービス開始当初のゼロ円から、今は4.5%とヤマワケエステートにとっての大きな収益源となっており、
全てのファンドで4.5%の報酬を設定できれば、「300億円のファンド組成で13.5億円の粗利」が稼げることになります。
REVOLUTION社が
決算において計画している「12億34百万円」という営業利益計画を考慮すると、この組成報酬がサービス提供事業者としての利益において大きな影響を与えますので、ヤマワケエステートにとっては、ファンド組成額というのは重要なKPI指標の一つであると見てよいのではないでしょうか。
一方で
ファンド運用中の不動産運営については報酬を設定していないため、予定より運用期間が長引くと、無報酬に対して自社の社員稼働(=人件費)が発生する、という構造。
ファンド運用終了後に②の収益が残るかは、ファンドの対象不動産の賃料や売却益次第ですが、
ファンド運営事業としては、しっかり運用を終了させていくことが重要な構造です。
この①、②がヤマワケエステートの重要な収益モデルになっていますが、2025年3月17日時点では、ファンドの新規組成が1ヵ月以上ストップしていますので、当初計画で計上していた売上・粗利計画に大して未達規模が大きくなっていそうです。
早期の信頼回復と、新たなファンド組成を軌道の載せていくことが、当初計画達成や事業再建において非常に重要、という事業構造となっています。
ちなみに、不動産クラウドファンディングでの資金調達のためには非常に大きなマーケティングコスト(大規模サービスの立上げ期ほど高額になる)が発生するため、サービス開始当初の事業収支は厳しくなりがちですが、ヤマワケエステートでは既に数万人規模の会員を確保しており、これらの会員からの信頼を再確立できれば、今期以降は過去に獲得した会員からの投資募集を中心にすることで広告費を押さえることが可能になります。
ファンドでの資金調達縮小は大きな痛手になりえる構造ですが、逆にサービスを立て直し、再度軌道に載せることができれば、高い利益率の事業に成長させられる可能性はありそうです。
もちろん、ファンドで大きな利益が上がれば、②でヤマワケエステートが得られる残利益が大きくなる可能性はありますので、①の想定収益以上の利益を狙うことは可能な事業モデルとなっています。
ヤマワケエステートの債務超過の可能性は?
今回、REVOLUTION社の第一四半期決算で、クラファン事業の販売用不動産(≒ヤマワケエステート分)での評価損が19億円強計上されています。
では、同じ基準でヤマワケエステートのBS/PLに反映すると、一体どのような状態になっているのでしょうか?
シンプルに「販売用不動産」の評価損19億円がBSに反映されると、直近期末の純資産1億8,329万円を大きく上回る損失であり、債務超過という数字になる可能性があります。
評価損がそのままPLに計上されると、前述の①ファンド組成時の報酬額である13.5億円(300億円調達時)も吹き飛んでしまう、というように見えるかもしれません。
しかし、では、ヤマワケエステートの次期決算で債務超過になるか、というと、そう単純ではありません。
というのは、
ファンドでの損失は、ファンドの運用終了時点で優先出資者=不動産クラファン投資家に分配されるため、全ての損失がヤマワケエステート本体のBS/PLに計上されるわけではないからです。
ヤマワケエステートのファンドは極めて劣後出資比率が低く、
運営事業者が負担している損失リスクは限定的ですので、ファンドの運用終了により、一旦自社BS/PL上に一時的に取り込んでいた損失は、投資家に帰属させることが可能です。
ファンドへの投資家にとってはリスクとなる「劣後出資比率がない」構造は、ヤマワケエステートという事業者の事業にとっては当然、リスク抑制効果を発揮します。
ということで、REVOLUTION社の決算にて記載された販売用不動産の評価損などは、仮に今時点でヤマワケエステートの決算を締めればBS/PLに計上されるとしても、年度末締めまでにファンドを運用終了するこ とで、自身のBS/PLから切り離すことができます。
逆にいえば、決算期末時点で終了できていないファンドの損失は、ヤマワケエステートの期末時点のBS/PLに計上されてしまうため、ファンド運用終了で整理ことが急務ですので、売却活動について手を抜かず、全力でやりきろうとしてくれることは期待できるのではないでしょうか。
なお、これは会計監査法人との調整が必要かもしれませんが、「ファンドの運用延長」ではなく、「運用は終了させ、償還を遅延」する状態にすることで、仮に損失が生じていいてもヤマワケエステートの本体のBS/PLから切り離せるかもしれません。
債務超過を回避するために契約延長ではなく契約終了後の償還遅延が増える、といったことになると困るのですが、かといって、運営事業者が債務超過で決算を閉じるというのはいろんな意味での信用リスクに直結しそうです。
投資家の立場では、サービスや信頼の立て直しを期待するのが得策、という状態かもしれません。
ヤマワケエステートが上場企業の子会社となったことの価値
最後に、投資家にとって少し安心材料になりそうな、上場企業の子会社になったことのメリットをいくつかさせていただきます。
分別管理に関する監査チェック
不特法では、投資家の出資金は、「ファンド単位で、専用口座に分けて管理」されています。
これは、「信託保全」のように事業者の倒産時にも投資家に優先的に返還されるということにはならないのですが、ファンド間の資金流用などができない制度です。
口座からの出入金には証跡が残りますから、上場企業の子会社として監査法人や監査役のチェックを受ける構造になっていることで、目的外での資金流用リスクが大きく抑制されることは期待できるでしょう。
今後新たに、特定のファンドで遅延や元本棄損が生じたとしても、だからその他のファンドにおける遅延や元本棄損リスクが高まる、というわけではありません。
個々のファンドは独立して管理されていますので、自身の投資対象以外の案件情報に一喜一憂せず、自身の投資先ファンドに関するファンドレポート(定期的にヤマワケエステートがマイページに掲載するもの)をしっかり確認し、そのレポートで疑問点があればヤマワケエステートに問い合わせてみると良いでしょう。(運用状況の説明義務は課されているので、業務妨害などとの疑義が生じない適正な範囲であれば、問い合わせには対応してもらえることが期待できます。)
【参考】不動産特定共同事業法 (財産の分別管理)第二十七条
不動産特定共同事業契約に係る財産を、自己の固有財産及び他の不動産特定共同事業契約に係る財産と分別して管理しなければならない。
棚卸資産や固定資産に関する監査チェック
REVOLUTION社の決算で販売用不動産(棚卸資産)の減損処理が行われたように、保有不動産に関しても監査法人や監査役から一定のチェックが実施されます。
収益不動産の回収可能性チェックについては、正直両者にも限界がある部分はありそうですが、それでも、第三者によるチェックが入ることで、ファンド運営状況の透明性が増すことが期待できます。
運用中ファンドについては対象不動産の売却、ファンドの運用終了、清算まで投資家収支(損得)が確定するわけではありませんし、結局待つしかないのですが、一定の情報開示が得られるようになりました。
これから投資を検討する投資家にとっては、運用途中のファンドに関する情報も加味した投資判断ができるというのは、大きな意味があるのではないでしょうか。
おまけ:WebやSNSで流れる不確かな情報について
現在のWebやSNSを見ていると、不安を抱えた投資家と、それを煽る非投資家の存在により、不確実な情報や誤った情報が拡散されやすい状況が生じているように感じます。
もちろん善意でのコメントや情報発信も多いのですが、二次情報、三次情報の形で伝聞される中で、当初の発信者の意図と異なる形で広がるケースも生じているように感じます。
当サイトの情報も、想定や仮説をそのまま事実であるように発信されているように感じる部分もあり、表現の難しさや拙さも痛感しております。
そこで、いくつか気になった点を最後に補足コメントさせていただきます。
おまけ①:ファンド保有不動産を担保に資金調達できるか?
ファンドの保有不動産を担保に資金調達(銀行融資等)をできるか、というと、シンプルにできません。
不特法に基づき、匿名組合出資者(投資家)の資金で調達しているものですので、これに新たな担保設定することは法律上も契約上も許されません。
そんなことが可能であれば、不特法クラファンなんて誰も怖くて投資できませんね。
事業者の倒産時には破産債権などとなり、売却によって得られた現金は企業全体の債権者への清算原資に組み込まれる可能性はもちろんあるのですが、そういったケース以外では、ファンドで定めた用途以外への流用は禁止されています。
おまけ②:出資者は、途中で解除、解約はできるの?
結論から言うと、難しいと私は考えます。
ヤマワケエステートの約款(契約)上は、以下のような記載があり、「やむを得ない事由があれば解約可能」という考え方を持つ方がいます。
が、ファンドが償還延期となったことや、投資家が経済的に困っているなどの事由は、監督官庁が想定する「やむを得ない」には含まれていません。
行政における監督に当たっての留意事項についても後半に記載しますので、この方針に基づき事業を監督している行政期間に相談したとしても、投資家の自己責任、といった判断がされる可能性が高いでしょう。
■ヤマワケエステートの約款記載
(本契約の解除等)
第 12 条
1. 本出資者は、やむを得ない事由が存在する場合には、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。また、本出資者が死亡した場合又は後見開
始の審判を受けた場合には、その相続人又は成年後見人は、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。
2. 本出資者が破産手続開始の決定を受けた場合には、本契約は当然に終了する。
3. 本事業者又は本出資者は、以下各号のいずれかの事由が生じた場合、本契約を解除することができる。
(1)本契約の申込に際し、本出資者の申込事項又は本事業者の説明事項に虚偽又は重大な誤りがあったことが、本事業者又は本出資者において判明し、当該虚偽又は重大な誤りにより本契約を継続することが困難な場合。
(2)本出資者が第 2 条第 1 項に規定する期日までに出資金の支払義務を履行しなかった場合。
6. 本出資者及び本事業者は、本事業に対して出資を行う匿名組合契約の解除が多発したときは、本事業を継続できなくなるおそれがあることを確認する。
■
不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項(国土交通省)
<やむを得ない事由に該当するもの>
・不動産特定共同事業契約上の重要な義務を正当な理由なく履行しない場合
・当該義務を履行することができなくなった場合
・重大な法令違反がある場合
<やむを得ない事由に該当しないもの>
・事業参加者が重篤な病気に罹患した場合や重傷を負った場合
・地震・火災等に罹災した場合等の事業参加者の自己都合
後者、「事由に該当しないもの」に、ファンドで損失や遅延が生じた、といった事例記載がないのは、元本保証のない投資商品として当然すぎることなので書かれていない、と解釈するのが適当でしょう。
地震や火災の事例があるのは、投資時点で必ず「余剰資金である」ことを本人確認されており、損失リスクは覚悟していることを大前提とした上で、例え投資家の事情が変わったとしても、それでも解除事由には該当しない、ということが記載されています。
では、どういった場合に解除を行政が求めるか、というと、過去に
「みんなで大家さん」に対する行政指導について解説した記事も参考としていただければと思いますが、
・事実と異なる告知をしていた
・土地の資産性に影響を及ぼし、事業参加者等が投資判断を行う上で重要となる事項の説明がなかった
といった事象が、行政処分実施の理由としてあげられています。特にこの件で問題とされたのは、事業に大きな影響を及ぼす、マスタープランの変更を伝えられていなかった投資家が存在したことですので、その対象ファンドの出資者の解除は、「重大な法令違反(不実告知など)」での解除を争える可能性が高い、というのが行政の判断ということではないかと思います。
(最終的には司法の場での判断に委ねられることになると思いますが。)
契約約款の6に記載されている通り、不動産クラファンでは、投資家の出資金は運用中は主に不動産に変わっており、現金が多く残っているわけではありません。
投資家の大量解除が生じて現金を返還するためには、結局、対象不動産を売却することで事業全体を終了し、精算する以外になくなります。
結局、不動産が売却できないと清算がされない、という可能性は、不動産クラファンの本質的なリスクとして受容するしかないのが実情です。
もちろん例えば、出資前段階での個別問い合わせを通じて不実告知を受けた、といった特別な事実がある投資家であれば、それを元に契約解除や契約の取消を荒そう余地があるかもしれませんので、法律や契約を踏まえ、なお解除を争える余地があると感じる方は、WebやSNSで相談せず、弁護士への無料相談を活用しましょう。
「初回相談無料」という弁護士も探せば出てきますので、相談することで、自分なりのスタンスを定められるのではないでしょうか。
おまけ③:REVOLUTIONのBS/PLからヤマワケエステートの決算を想像できるか?
仮に全てのREVOLUTION社本体やその他の連結子会社の決算が見えている方なら分計することである程度の推理ができるかもしれませんが、正直かなり難解だと感じました。
WeCapital社が自身の子会社であるヤマワケエステート他のいわゆるクラファン、ソシャレン事業者のシステム投資やマーケ運用などを一括で業務委託されている可能性もありますが、このマーケコストの負担割合や条件がどうなっているか一つとっても、単体決算が異なりそうです。
不動産会社デベロッパーや買取再販事業者の決算であれば、売上と売上総利益率からある程度案件の粗利率を推定することもできるのですが、不動産クラファンの売上には前述の報酬(ファンド組成対価や清算後の残利益など)が加わるため、ファンドで行っている事業自体の収益力を図るのは第一四半期の情報だけでは私には難しそうです。
投資家配当をどの科目で処理しているかも不動産クラファンサービスごとに異なっているような実態も有りますし、REVOLUTION社の昨年の決算では直接原価のほどんとかからない仲介手数料で1億円以上の収入を得ているなどの振れ幅もあり、確からしい推定をするには情報不足ではないか?というのが、私の結論でした。
継続的に開示情報などから事業内容を詳細に追えている長期安定株主などなら違うのかもしれませんが、私の知識では不確かな推定で皆様の混乱を招く危険性が高そうです。
(正直、この規模の上場不動産会社の中でも、特に決算から事業状況が見にくい企業だと思います。この規模の不動産会社は私の株式投資のターゲット候補で、現在2社の株式を長期保有しているのですが、ここは事業が難解で私には株はとても買えませんでした。)
おまけ④:REVOLUTIONで何か起きたらどうなるの?
ヤマワケエステートにとって、REVOLUTIONは親会社の親会社ですので、親会社が事業運営方針についても影響を与える可能性があります。
この影響は正直断定しきれないのですが、大きく2つの影響が生じます。
・親会社が立てた計画達成は、ファンドの組成件数や調達額、ファンドにおける運用手数料(ヤマワケ側の粗利)に影響する
・親会社に財務余力があれば、WeCapitalやヤマワケエステートが経営危機に陥った場合にも救済余力が高まる
一方で、親会社が仮に倒産したからといって、ヤマワケエステートが即倒産する、というわけではありません。
仮に親会社が苦しい状況に陥った場合に、株主から経営改善などを求められることで、ヤマワケエステートのサービス運営方針の見直しや改善(株主にとって)を求められる、といった影響が生じる可能性があります。(これは既に一定起きているかもしれません)
また、その際にヤマワケエステートがしっかり利益をあげていける状態であれば、ヤマワケエステートの株式を外部売却(M&A)する可能性はありますので、新たな親会社の経営方針の影響を受ける可能性はある、といった影響が生じます。
その際にヤマワケエステートは、新たな親会社とともに、改めて事業運営方針の見直しを迫られる可能性はありますが、その際にもヤマワケエステートが利益成長を遂げて、企業価値が高まっていれば、新たな親会社にとっても、既存事業やこれまでの事業運営方針を尊重することの価値が大きくなります。
ヤマワケエステート自らが事業を再構築し、利益を生み出していくことがサービスや投資家を守ることにつながる、という構造だと言えるのではないでしょうか。
その他、ヤマワケエステートの事業が成長しないと、親子関係の見直しにつながる可能性があります。
2024年10月期決算について補足説明 に情報掲載されていますが、以下の通り、WeCapitalの企業価値が200億円以上に成長しない場合には、WeCapitalのオーナーまたはWeCapital側は、REVOLUTIONに対して一定の費用や株式の返還が求められるとの条件が定められているようです。
万が一WeCapital社がIPO時に200億円以上の企業価値を達成できなかった場合に備え、当社が付与した当社株式を返還してもらう逆アーンアウト条項を締結しております。この条項により、200億円未満の場合にはM&Aに費やした費用の半分が返還される仕組みです。
この点についてもこれ以上の詳細情報の開示はされていない様子ですので詳細な影響把握は困難ですが、仮にWeCapital(ヤマワケエステートやヤマワケ)の成長が順調に行かない場合に、子会社であるWeCapitalやヤマワケエステート株式会社の経営にも影響が出てくる可能性があります。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績10ファンド / 1,000万円以上。今後もコンスタントに年間10ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士