株式会社REVOLUTIONによるWeCapital株式会社(ヤマワケエステートの親会社)の子会社化の動き
2024年8月30日に、東証スタンダード市場に上場する株式会社REVOLUTION社がヤマワケエステートの親会社であるWeCapital株式会社を子会社化する方針であるとの情報を開示しました。
株式交付によるWeCapital 株式会社の子会社化に関するお知らせ
買収方式としては株式交付方式のため、
WeCapitalの資本増強などの効果はありませんが、これまで非上場のため決算の開示義務等がなかったWeCapital株式会社が上場企業のグループとなることにより、情報の透明性が増すことは期待できそうです。
【2024.10.12追記】2024.10.11に、株式会社REVOLUTIONがWe Capital社の子会社を完了したことを
発表しました。
We Capitalの株式譲渡の対価はREVOLUTION社の株式341,586,207株ということで、2024.10.11の終値が41円ということで、なんと時価約120億円の価値と評価されたようです。
ヤマワケエステートの立ち上げに要したコストは10億円を超える規模ではあるでしょうが、120億円相当の評価を得られたなら、おそらく大成功ではないでしょうか。
既存のWe Capitalの株主が得たREVOLUTION社の株式には譲渡制限が付与されているかもしれませんが、その株式を担保とすれば、数十億円規模の資金調達ができるかもしれません。
(とはいえ、これはなんらかの新たな資金が会社に入ったわけではなく、あくまで株式と株式の交換があり、子会社化が実施されたということであることは理解が必要ですが。)
ただし、子会社化に先だつ2024.10.8にはREVOLUTION社の第三者割当増資(総額1.45億円と規模は小さいです)を通じてWe Capitalの松田 悠介代表取締役がREVOLUTION社に出資するなど、両者の融合・連携強化が期待される状況ですので、今後サービスに良い変化が起きることを期待したいところです。
親会社の資本力や事業計画について
今回の子会社化において株式会社REVOLUTIONが株式交付方式をとった背景としては、以下のような情報開示がされています。
これを見る限りは、今後も親会社による資本投下や融資等を通じた資金調達余力の拡大などが直接期待できる、という期待は今は持ちにくそうです。
(強いて言えば、取得する株式を担保としたローンによる資金調達の余地は出ると思いますが。)
(1)金融機関からの借入れ
金融機関からの借入れにつきましては、当社の過去の決算状況及び未だ安定的な収益基盤を確立するに至っていないため、買収に必要な資金調達が不可能であることから除外することといたしました。
(2)公募増資
公募増資につきましては、現在の当社の財務状況(2023年10月期営業損失415,142千円)は早急な立て直しが必要な状況であることや買収に必要な資金調達額を鑑みると、引受幹事証券を探すことは困難であること、公募増資を実施することは現実的ではないと判断し除外することといたしました。
一方で、今回の情報開示で、管理人としてはちょっと驚きの情報が掲載されていました。
将来の数字は
あくまで計画ベースとはいえ、2024.6月~9月の4カ月間の営業利益見通しが5.86億円となっています。
■WeCapital株式会社の決算情報(直近4カ月及び将来の見通し)
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2024年9月期 (2024年6月~9月) |
2025年9月期 |
2026年9月期 |
2027年9月期 |
2028年9月期 |
営業収益 |
3,468百万円 |
62,477百万円 |
95,390百万円 |
126,624百万円 |
176,947百万円 |
営業費用 |
2,882百万円 |
59,891百万円 |
90,825百万円 |
120,109百万円 |
166,270百万円 |
営業利益 |
586百万円 |
2,586百万円 |
4,565百万円 |
6,515百万円 |
10,678百万円 |
ヤマワケエステートの派手な広告を踏まえると、ヤマワケエステートのサービス立ち上げには数億円単位のマーケティングコストの先行投資を行っているはずですが、早くも直近4カ月とはいえ営業利益を確保できるという予測数字になっています。
正直、これまで非上場であったWeCapitalの事業内容や決算状況、財務余力などはこれまで把握ができていなかったのですが、黒字化はまだ先では、と想定していたため
まだ予測段階、かつ直近4カ月とはいえ黒字見通しとなっていることは注目すべきポイントでしょう。
ただし、これには
注意点があり、1年間の決算数値ではなくあくまで、「2024年6月~9月」という直近4カ月間での営業利益です。
後程触れますが昨年度までは大きな赤字を計上しており、この4カ月の数字をピックアップしている意図を考慮すれば、2025.9月期も通年では赤字となっている可能性があることは理解しておくべきでしょう。
不動産ビジネスやファンドビジネスにおいては、不動産売買や手数料が入るタイミングが異なるため、短いスパンで決算を判断することは危険ですので、この数字はあくまで、買収先企業の企業価値算定の妥当性を検証する上で直近の事業状況を評価したものであるととらえる必要があるでしょう。
なお、来期以降の計画を見ると、ヤマワケがこれまでも発信してきた通り、
次年度以降は、不動産クラウドファンディングだけではなく、金商法に基づくソーシャルレンディングなどへの更なる事業展開を通じて事業を拡大するという計画となっていることも確認できます。
売上高が600億円規模ということは、ファンドの資金調達を通じて手数料を得るビジネスではこの規模は難しいと想定されるため、直接ファンドで資産を保有、運用、売買するようなモデルでの事業拡大をしていくことも想定されるため、
資産規模も大きく膨らませる、相応のリスク資産も保有する形での事業になる可能性はありそうです。
もちろん
新事業が計画通り収益を生むという保証はありませんが、投資回収に長期間をかけるような事業シナリオではなく、短期間で収益を生むシナリオを持っているというのは将来に対する期待感も感じさせる内容ではないでしょうか。
ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングなど、個人投資家からの資金調達を行う事業でしっかり利益基盤を確立できている事業者はまだかなり限られる(「基盤確立」まで言えばいるのか?)状況ですが、今後、この事業計画の蓋然性や達成状況には注目していきたいところです。
■WeCapital株式会社の決算情報(直近3か年)
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2021年9月期 |
2022年9月期 |
2023年9月期 |
純資産 |
△20,439千円 |
135,719千円 |
820,487千円 |
総資産 |
8,024千円 |
145,432千円 |
1,339,952千円 |
売上高 |
1,818千円 |
ー |
222千円 |
営業利益 |
△3,078千円 |
△147,889千円 |
△561,653千円 |
経常利益 |
△3,253千円 |
△151,027千円 |
△565,080千円 |
当期純利益 |
△3,323千円 |
△151,317千円 |
△566,207千円 |
なお、この事業計画や将来性、リスクをどう見るか、については、なかなか判断が難しいところではあると感じます。
上記の
直近決算からは、純資産が8億円規模に対して純損失が5.66億円と、赤字からの脱却が完遂できなければ資産が底をつく状況ですので、事業計画の将来予測を確実に実現していくことが必須の状況です。
一方で新規事業の事業計画が達成できるかは正直今段階で断定することは難しく、大成功する可能性も、大きな軌道修正が必要になる可能性もあるという前提で見るのが良いのではないでしょうか。
とはいえ、今回の情報開示が上場企業が子会社化を検討する前提で開示しているものであることは、管理人としては価値を感じます。
子会社化の際には
外部の専門チームによるデューデリジェンスを経て対象企業の決算や保有資産、キャッシュフローはもちろん、将来の事業計画や主要な契約まで全てチェックして隠れたリスクを洗い出した上で、企業価値の算出を行いますし、それを監査法人からもチェックされるため、管理人の感覚では、非上場企業の決算情報よりよほど信頼性が高いものだと考えています。
もちろん、長年企業を見てきている監査法人ならではの強みもあるでしょうし、買収される側の企業は自社の企業価値を高く評価させるため、精いっぱいのお化粧はして情報開示をするので、買収側企業や専門家チームの専門性などにも依存はするので絶対とは言えませんが、監査法人と違って、買収側としては、懸念があればそこで検討ストップできるという立場の違いがありますので、一定の勝算がなければ買収しないという選択が取れます。
まぁ、今回のタイミングでは、買収側企業の決算状況や株式市場での評価もあまりよい状態ではないこともあり、株価対策としてあえてポジティブな見せ方をしたい、成長可能性を訴求したい、といった誘因が買収側にもあるため、今回の開示を全面的に信じるのではなく、そういった成長可能性シナリオもある事業であることを投資判断の材料にするくらいが適切な姿勢でしょうか。
子会社化のタイミング
現時点では子会社化は完了しておらず、2024年10月11日が効力発生となっています。
それまでにおそらく契約に定められているであろう停止条件に抵触するケースや、表明保証に疑義が生じるケースなどで子会社化の効力が発効できなくなる、といった可能性はゼロではありません。
とはいえ、本件の子会社化による資本増強等があるわけではなく、子会社化がされること、されないことが直接短期的なヤマワケエステートの事業に影響を与えるとも断定できませんので、ヤマワケエステートの投資家にとっては、これまで把握が難しかった親会社WeCapital株式会社の決算状況や将来の計画をすることができる良い機会であった、ととらえればよいのではないでしょうか。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績10ファンド / 1,000万円以上。今後もコンスタントに年間10ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士