「ヤマワケエステート」とは?
2023年10月のサービス開始直後の3号ファンドで「想定利回り84.6%」というような極端に高い利回りのファンドを提供し、大きな注目を集めているサービスです。
これまでに募集したファンドの
平均利回りは14.1%と不動産クラウドファンディング業界でも頭一つ高い水準となっている上、ファンドの組成数が、
直近6カ月間(2025.1時点)で71ファンドと、毎週平均3ファンド程度を組成し続けている、業界でも異質のサービスです。
Googleで検索キーワードを入力すると、「怪しい」「詐欺」などのキーワードもサジェストされることから、高利回りとファンド組成数の大きさに不安を感じる投資家も多いようですが、
サービス開始から1年ちょっとで累計400億円(2025.1時点)を超える資金調達に成功している、投資家の人気も高いサービスとなっています。
本記事では、運営企業だけではなく、運営企業の親会社や協力企業などについても徹底調査します。
「ヤマワケエステート」は不動産特定共同事業法に基づき提供される投資型クラウドファンディングサービス
「ヤマワケエステート」は、不動産特定共同事業法(以下、不特法)に基づき厳しい規制やルールのもとで提供される、投資型クラウドファンディングサービスです。
不動産クラウドファンディングとは、「不動産特定共同事業法(以下、不特法)」という法律に基づき、国土交通省・都道府県から許可または登録を認められた事業者のみが投資家に提供可能な投資商品であり、以下のようなメリット・強みを持つサービスです。
不動産クラウドファンディング投資のメリット・強み
- 株式のような値動きがなく、堅実な配当利回りが期待できる
- 出資金の使途は対象不動産運営に関するものに限定し、リスクを限定
- 優先劣後構造で、ファンドで損失が生じてもまず事業者が負担
【例外:ヤマワケエステート】
- 契約書は行政の審査を経ており、不当に不利な心配がない
- 面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ
- ただし元本保証はないため、複数サービスへの分散投資は重要!
不動産特定共同事業法は厳しい投資家保護のためのルールを定めているため、サービスやファンド運営を行う事業者は全て、このルールに従って投資家保護に取り組んでいます。
「ヤマワケエステート」についても当然大阪府知事の許可を取得しており、サービスやファンド運営についても行政の監督を受けています。
(ヤマワケエステート株式会社:不動産特定共同事業 大阪府知事 第19号)
ただし、上記ポイントにも赤字で記載しましたが、優先劣後構造については厳密には法律に定める義務ではないため、ヤマワケエステートでは、契約書上は、「優先劣後構造」を前提とした条件が記載されているものの、実際には事業者による劣後出資金がゼロ円でファンドが成立する募集条件となっています。
優先劣後構造のファンドでは、ファンドで損失が生じた場合にもまず事業者の劣後出資で損失を負担するため、劣後出資比率までの損失が起きても投資家の元本が守られるのですが、
ヤマワケエステートの場合は損失は全て投資家の出資金で負担することになる点は理解が必要です。
「ハイリスク」に見合うだけの「ハイリターン」が得られれば、投資商品としてのバランスは悪くないことになりますので、これ自体が悪いわけではなく、見極めが必要でしょう。
不動産クラウドファンディングに共通する特徴や制度については本サイトの
「不動産クラウドファンディングとは?」で解説していますので、ご確認ください。
「ヤマワケエステート」を他サービスと比較してみる
まずは、定量的なデータから、他の不動産クラウドファンディングサービスと比較して、サービスの特長や傾向をチェックしてみましょう。
やはり、募集時の「想定利回り」の高さは圧倒的で、当サイトが収集している不動産クラウドファンディングサービスの平均値の2倍以上の水準と、突き抜けたサービスです。
一方で投資家の元本棄損リスクを抑制する「劣後出資」の仕組みを持たないファンドはヤマワケエステートのみとなっており、
「ハイリスクハイリターン」が数字にはっきり表れています。
なお、ファンドで扱う不動産には、「権利調整が必要な権利もの」の他、「戸建住宅を立てるための土地や建築中の建物に投資する戸建ファンド」、「将来値上がりが期待できる不動産の買取再販型」、などが中心となりますが、その他にも、ヤマワケエステートでしかほとんど扱わない、業界でも異質な「転貸型ファンド」というパターンもあるため、後ほど少し補足します。
ヤマワケエステート ファンド提供状況
項目
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直近6カ月
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累計
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全サービス平均
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利回り
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14.1%
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14.4%
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6.44%
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劣後出資比率
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0%
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0%
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18.28%
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組成件数
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71件
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185件
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–
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資金調達額
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200億4,260万円
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419億8,452万円
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–
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運用終了額
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–
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99億2,802万円
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–
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※2025年1月時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選34サービス」の平均値です。
「ヤマワケエステート」が扱う、「転貸型ファンド」とは?
「賃貸型ファンド」は、不動産の所有権を持たず、所有者から賃借して、それをテナントに転貸するモデルです。
ヤマワケエステートの場合は、飲食店やアミューズメントの新規出店希望者をテナントとして、店舗の内装工事や看板の設置を行い、その分賃料を高く設定することで収益化をめざすタイプのファンドがこれまでに複数件登場しています。
これには
以下のような注意点がありますので、不動産の所有権を取得するファンドとの違いをしっかり理解して投資判断してください。
(1)不動産の所有権がないため、土地や建物が値上がりしても、ファンドには売却益が入らない
(2)ファンドの主な収益は、転借で得られる賃料の他、ファンドが施行した内装や外装を、テナントや不動産所有者に売却することで得られる利益のみ
(3)テナントの経営が店舗経営が良好でなくなった場合、施行した看板や内装などの買い取り手がなくなる可能性
このケースでは、
店舗の予約権などが出資者に付与されているケースも多いため、「純粋な投資」というよりは、テナント店舗のファンが、店舗の出店や事業拡大をサポートするという、「応援型クラウドファンディング」という意味合いも含めて、ファンドの価値を評価する必要があるのではないでしょうか。
「ヤマワケエステート」のサービスの魅力、特徴
ここで、「ヤマワケエステート」の特徴を改めてまとめてみましょう。
「ヤマワケエステート」の魅力、特長
- 高い利回りを期待できる不動産クラウドファンディングにおいても、突き抜けた利回りの高さ
- ファンド組成頻度も月平均12ファンドを超えており、投資チャンスも多い
- 投資家の元本棄損を保護する劣後出資がないため、ファンドで損失が出れば投資家の元本がダイレクトに棄損
- 「転貸型」ファンドのように特殊なファンドもあるため、投資先ファンド個々の見極めが重要
- 「ハイリスクハイリターン型」であることを理解の上なら、分散投資先としての魅力有り
管理人はヤマワケエステートへの投資には「かけ」という一面があると判断していますが、リスク相応以上のリターンの可能性を感じ、2ファンド150万円に投資した結果、現在1ファンドが予定通り運用を終了し、満額配当の上で償還されました。
ヤマワケエステートのファンドは不動産ビジネスの種別や協力会社が多様なため、過去の実績が良いから今後のファンドについても安心できる、といった見方はしにくく、個々の物件やビジネスの特性、提携先などを見極めて投資判断する必要はあるものの、リターンは他のサービスに比べてかなり高いため、
リスク覚悟で投資したい投資家には魅力の高いサービスではないでしょうか?
「ヤマワケエステート」を運営する「ヤマワケエステート株式会社」とは?
不動産クラウドファンディングは、「面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ」する投資商品です。
投資先を選ぶ際には、ファンド運営事業者の不動産事業のノウハウや財務状況を確認することが非常に重要になります。
そこで、「ヤマワケエステート」を運営する「ヤマワケエステート株式会社」をチェックしてみましょう。
「ヤマワケエステート株式会社」の基本情報
2018年創業の不動産会社ですが、「ヤマワケエステート株式会社」については
公式ホームページで得られる情報が極めて限定されており、ホームページからは企業の実態がわかりません。
親会社である「WeCapital株式会社」のサイト上に設置されており、実態上はWeCapital株式会社の子会社として、親会社と共同で事業展開しているのでしょう。
また、親会社であらうWeCapitalは2024年に上場企業である株式会社REVOLUTIONの子会社となっており、上場企業グループという位置づけになります。
もっとも、上場企業といっても、ヤマワケエステートが保有・運用する不動産ビジネスに対して十分な資金力がある、といった状態とも言えないため、上場企業グループであるものの、やはりハイリスクハイリターン型クラファンという見方をすることをお勧めします。
運営企業情報
項目
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情報
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運営企業名
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ヤマワケエステート株式会社
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代表者
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代表取締役 芝清隆
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住所
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大阪府大阪市中央区北浜2-3-14小谷ビル3階
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TEL
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050-3662-7301
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会社設立
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2018年05月
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「ヤマワケエステート株式会社」の決算情報チェック & 業界平均との比較
まず、当サイトに掲載している「ヤマワケエステート株式会社」の決算(2025.1時点)を見てみましょう。
まず、運営企業の財務の健全性が現れる「BS」を見ると、2023年9月30日から2024年9月30日にかけて、総資産が300億円以上増加しています。
ヤマワケエステート開始前は不動産保有、転売ビジネスをほぼやっていなかった企業が、ファンドサービス開始と同時に巨額の資金調達により不動産の取得運用を行う状態となったことが、数字からも確認できます。
自己資本比率は0.57%と、通常の不動産会社としては考えられないような低い水準ですが、ヤマワケエステートのファンドでは基本的にファンドに対する劣後出資がなく、ファンドでの損失は投資家が負担するため、
ヤマワケエステートでは、保有する不動産資産300億円近くに対するリスクは直接的には負担していませんので、通常の不動産会社とは異なる見方をするべきでしょう。
ただし、不動産クラファンでは、ファンド運営事業者は匿名組合出資における営業者として、投資家になり替わって不動産の運営や売却を行う無限責任を負います。
つまり、
ファンドの損失自体は負担しないものの、ファンドが保有する不動産の運営や売却、投資家への配当や元本清算の責任自体は負います。
個人投資家にはイメージがわきにくいかもしれませんが、流動性の低い不動産の売却や不動産開発には営業稼働やプロジェクト管理稼働などが発生するため、保有不動産を膨らませると、相応のリソース負担が発生しますので、
純資産2億円弱の規模で300億円の不動産を保有、運用しているという状態であることは理解の上で投資判断する必要があるでしょう。
もっとも、ヤマワケエステートの場合、
不動産の運営や開発、売却などに協業先の不動産会社がかなり大きく関わるケースもあると想定されるため、ファンドごとに設定されている協業先の能力なども投資家は見極めていく必要があります。(とはいえ、投資家の契約先はあくまでヤマワケエステートであり、協業先は投資家に対する責任を直接的には負っていない構造であることも注意が必要ですが)
次に、運営企業の利益を稼ぐ力が現れる
「PL」を確認すると、売上総利益が33%と、かなり高い水準となっています。
ヤマワケエステートが扱う不動産ファンドの利回りはかなり高いですが、きちんと利益が出る不動産を扱えていることが確認できそうです。
営業利益、経常利益は業界標準水準となっていますが、投資家への高い配当を支払った上で、利益が残せているというのは、なかなかすごいことではないでしょうか。
もちろん、現在の総資産額が300億円に対してこれまでに売却に成功した資産がまだ60億円規模というのが現状ですすので、300億円の中に大きな不良資産が混在していないことの確認ができるまでには後1年待つ必要はありそうですが、サービス開始から1年間の成績としては、決して悪い数字ではないと感じます。
利益率の高いビジネスは、もちろんリスクも相応にあると捉える必要はあるものの、サービスの持続可能性を感じさせてくれる決算でもありますので、今後もハイリスクハイリターン枠の投資先として、一定の投資比率を配分する価値はあるのではないでしょうか?
※決算の見方については、別記事「
不動産クラウドファンディング事業者の決算チェックポイント」で解説していますので、興味を持った方はご欄下さい。
ヤマワケエステート株式会社 決算情報(BS)
項目
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2024年09月30日
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2023年09月30日
|
2023年02月28日
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全サービス平均
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総資産
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319億1,709万円
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5億9,847万円
|
2億835万円
|
–
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純資産
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1億8,329万円
|
1億1,864万円
|
1億1,086万円
|
–
|
自己資本比率
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0.57%
|
19.82%
|
53.21%
|
17.21%
|
運用中資産規模 AUM(※)
|
305億9,500万円
|
–
|
–
|
–
|
AUM÷純資産
|
166.92
|
–
|
–
|
9.12
|
現預金
|
–
|
–
|
–
|
–
|
現預金比率
|
–
|
–
|
–
|
9.02%
|
※直近1年間のファンドの募集額に運用期間(年換算)を乗じることで、現在運用中ファンドにおける投資家からの出資金規模を算出。(当サイト独自指標です)
ヤマワケエステート株式会社 決算情報(PL)
項目
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2024年09月30日
|
2023年09月30日
|
2023年02月28日
|
全サービス平均
|
売上高
|
63億8,342万円
|
4億8,534万円
|
8,606万円
|
–
|
売上総利益
|
21億625万円
|
5,890万円
|
4,784万円
|
–
|
売上総利益率
|
33%
|
12.14%
|
55.59%
|
19.97%
|
営業利益
|
2億2,940万円
|
1,317万円
|
464万円
|
–
|
営業利益率
|
3.59%
|
2.71%
|
5.39%
|
4.65%
|
経常利益
|
2億1,336万円
|
1,156万円
|
174万円
|
–
|
経常利益率
|
3.34%
|
2.38%
|
2.02%
|
3.46%
|
※2025年1月時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選34サービス」の平均値です。
ヤマワケエステートの償還遅延問題
サービス開始からおおよそ1年がたった2024年に、ヤマワケエステートでは複数件のファンドで不動産の売却が予定期間に終了せず、ファンドの期間延期を実施しました。
加えて、一部ファンドでは一旦期日通り運用を終了し、元本と配当を償還予定という旨を開示した後に、償還予定日直前で、償還遅延となる旨を投資家に通知しました。
これを契機に、不動産クラファンファンの間に様々な憶測や不安の声が生じました。
その後、2025年3月19日にファンド組成を再スタートさせていますが、ヤマワケエステートは親会社であるWeCapital、その親会社である上場企業REVOLUTIONの経営方針や財務状況が事業に影響を与える可能性がありますので、以下の関連記事もご覧ください。
償還遅延について:
ヤマワケエステートの償還延期問題の経緯・問題点と不動産クラファンの注意点
親会社(REVOUTION、WeCapital)との関係について:
ヤマワケエステートの償還遅延等がREVOLUTION、WeCapitalに与える影響は?
まとめ:「ヤマワケエステート」とは?
まとめると、以下のような特長を持つ
「利益率の高い物件を扱うハイリスクハイリターン型ファンド」として見れば、分散投資先としての魅力を十分に持つサービスではないでしょうか。
親会社である
WeCapital株式会社が描く事業構想の第一弾という位置付けからは、更なる発展を遂げる可能性も秘めたファンドかもしれません。
・業界でも突き抜けて高い「想定り利回り」を設定しつつ、劣後出資のない「ハイリスクハイリターン型」ファンド
・運営企業である「ヤマワケエステート株式会社」は、サービス開始前と現在で全く異なる姿となっており、運営実績は不明
・親会社の提携企業である「エムトラスト株式会社」や多様な協業パートナーが仕入れから案件の目利きまでに参画するが、ファンドにおける責任や実態はよくわからない
管理人個人としては投資先としては面白いと感じるのですが、リスクも未知数のため、
損失覚悟で投資できる範囲の分散投資先としてお勧めします。
あくまで投資は「自己責任」の範囲、ということでお願いいたします。
最後に
不動産クラウドファンディング投資は堅実な利回り投資が期待できる投資商品ですが、ヤマワケエステートのファンドが堅実とは、言いにくいです。
万が一の運営事業者の倒産リスクの可能性も踏まえ、分散投資が非常に重要になりますので、新たな投資先候補として検討されるのは、いかがでしょうか?
なお、当サイトではリスク分散の観点で、複数のサービスに対する分散投資を強く推奨しており、投資先サービスやファンド探しに役立つ情報の収集、掲載に努めていますので、他サービスについても是非ご確認下さい。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績10ファンド / 1,000万円以上。今後もコンスタントに年間10ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士