「victory fund」とは?
2021年3月にサービス開始以降、当時としては最高水準となる10%代の利回りで注目を集めた不動産クラウドファンディングサービスです。
2023年後半になり、ヤマワケエステートがこれまでの常識を変えるような高利回りを連発して若干めだたなくなってはいるものの、
一般的な不動産クラウドファンディングサービスにおいては、なお最高水準の利回りのファンドを提供するサービスです。
投資家の元本を保護する劣後出資比率が低い他、流動性が低めの不動産の買取再販なども行うハイリスクハイリターン型のファンドとなっていますが、
相応のリターンが期待できるサービスとして、分散投資を前提として、一定の比率の投資を配分する価値はあるファンドではないでしょうか?
(参考までに、ヤマワケエステートは更にハイリスク型となっており、高いリターンを出すにはハイリスク型のファンド設計にはるのは仕方がないでしょう。)
【2024.6.17追記】
松町2丁目プロジェクトPhase2の商品設計や仕入れ価格の設定方法、劣後出資比率を更に低減させている様子などから、
ファンドのリファイナンスが順調に進まない場合などにはファンドの期間延期や売り急ぎによる損失発生、運営企業のキャッシュフロー上の問題などが生じる可能性も考慮し、分散投資を前提とした投資判断をお勧めします。
なお、管理人は本サービスに関わらず、不動産クラウドファンディング投資では1サービスに投資先を集中させるのではなく、分散投資を前提とすることでリスクを限定することを強くお勧めしています。
※不動産クラウドファンディングサービスは、不動産特定共同事業法に基づき提供される不動産投資から得られる利益を原資に配当、元本償還を行う投資商品です。
不動産クラウドファンディングサービス共通の特徴については記事後半で解説します。
「victory fund」を他サービスと比較してみる
まずは、定量的なデータから、他の不動産クラウドファンディングサービスと比較して、サービスの特長や傾向をチェックしてみましょう。
わかりやすい「ハイリスクハイリターン」型となっており、利回りは平均を大きく上回る一方で、投資家の元本棄損リスクを抑制する劣後出資比率は平均を大きく下回っています。
ファンド組成頻度が6カ月で4ファンドとそれなりに投資チャンスが得られるため、例えば総投資予算の5%~10%など、一定の枠を決めて分散投資先候補としてみるのはいかがでしょうか?
なお、「運用終了額」については、victory fundでは、買取転売型で事業期間が長期に渡る不動産を取得し、1年運用のファンドを次ファンドにリファイナンスする形で再組成するケースも多いため、不動産売買で実際に収益を生んだものだけではなく、リファイナンスファンドに売却した、というファンドも含めての件数であることは注意してください。
victory fund ファンド提供状況
項目
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直近6カ月
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累計
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全サービス平均
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利回り
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10.8%
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9.3%
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6.22%
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劣後出資比率
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3.2%
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5.2%
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19.97%
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組成件数
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5件
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28件
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–
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資金調達額
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13億円
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52億1,000万円
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–
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運用終了額
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–
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30億1,000万円
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–
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※2024年10月時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選32サービス」の平均値です。
victory fund」のサービスの魅力、特徴
「victory fund」の特徴は、かなりシンプルに、以下のポイントとなります。
「victory fund」の魅力、特徴
- 不動産クラウドファンディング業界でもトップクラスの高利回り
- 投資家の元本を保護する劣後出資比率は低く、ハイリスクハイリターン型ファンド
- 1サービスに集中投資するのはリスキーでも、分散投資枠の一定比率を配分する価値あり
「victory fund」を運営する「カチデベロップメント株式会社」とは?
不動産クラウドファンディングは、「面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ」する投資商品です。
投資先を選ぶ際には、ファンド運営事業者の不動産事業のノウハウや財務状況を確認することが非常に重要になります。
そこで、「victory fund」を運営する「カチデベロップメント株式会社」をチェックしてみましょう。
「カチデベロップメント株式会社」の基本情報
「カチデベロップメント株式会社」は、都内を中心に不動産の買取・再販事業を中心に行っている不動産会社で、1997年の創業と、それなりに社歴を有する、業界ネットワークとノウハウを持った会社と言えます。
買取・再販というと不動産業界に詳しい人しかイメージがわかないかもしれませんが、土地や中古マンションなどを買取、バリューアップして販売することで、売却益を得る事業です。
マンションをリノベーションするような事業から、将来道路が開通して価値が向上する予定の土地を先行して取得し、当面は資材置き場などとして活用しつつ、将来の資産価値向上を見越した高値売却を狙うような事業もファンドを通じて行っています。
運営企業情報
項目
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情報
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運営企業名
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カチデベロップメント株式会社
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代表者
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代表取締役 足立和夫
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住所
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東京都中央区日本橋室町1丁目5-15昇賢ビル2F
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TEL
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03-6262-3255
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会社設立
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1997年07月
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「カチデベロップメント株式会社」の決算情報チェック & 業界平均との比較
まず、当サイトに掲載している「カチデベロップメント株式会社」の決算(2024.10月時点)を見てみましょう。
企業の財務の健全性が現れる「BS」を見ると、
自己資本比率が不動産クラウドファンディング事業者の平均より低い水準となっており、年を経るごとに総資産が膨らむ一方で純資産が増加していませんので、財務的に余裕がある状態とは言い難い数字です。
先ほども触れましたが、「カチデベロップメント株式会社」は、都内を中心に不動産の買取・再販事業を中心に行っている事業者です。
このような業態では、不動産を一旦買い取った上で、バリューアップ再販が完了するまで保持する必要があるため、どうしても総資産が大きくなります。
ただ、買取・再販事業では、全ての資産が収益を生むとは限らず、大きな儲けにつながる案件、儲からない案件がある中で、トータルでバランスをとって事業収益を上げていくような業態ですので、総資産の中には一定のリスク資産が含まれる可能性があります。
例えば、将来道路が開通するエリアの土地を購入する事業では、実際に土地が大きく価値を生むのは、道路が開通して、商業用地や宅地などの用途で利用可能になるタイミングですので、それまでの期間に売却する場合に、値上がり益が得られない可能性もありますね。
万が一、保有する不動産が収益を生まず大きな損失が生じるような際の倒産リスクを抑制するためには、総資産に対して一定の純資産や現金(借入余力)が確保されていることが重要な業態、と言えます。
カチデベロップメント株式会社については、不動産クラウドファンディングサービス開始以降は総資産規模が大きくなっています。例えばフェーズ2,3とファンド間売買を継続しているファンドで、
リファイナンス(継続ファンドでの出資募集)に失敗してしまった場合に、元の運用ファンドに対する元本や配当償還ができなくなる可能性がある財務状況であることは理解して投資判断することが重要です。
不動産クラウドファンディングにおいては、資産で損失が生じるリスクは投資家も負担しているため、全てが企業の倒産リスクにつながるわけではないのですが、不動産クラウドファンディングにおいて運営者は法律上、「匿名組合契約の営業者として、不動産運用や売却に関する無限責任を負う」立場になりますので、ファンドの清算までを完遂する企業体力が必要です。
一方で、企業の稼ぐ力が現れる「PL」を見ると、
売上総利益率が25%と業界標準を超えており、経常利益を3期連続でしっかり確保しています。
総資産規模22億円で売上7億代というのは一般的な買取再販型では資産の回転率が低い水準ですので、「事業期間の長い物件を扱っている」という見方もできますが、業界視点で見ると、「売れ残った(しこった)物件を抱えているか確認したくなる」という数字でもあります。
victory fundの場合、総資産の多くを不動産クラウドファンディングが占めているため物件を確認することができますが、流動性が低めの物件を実際に扱っていますので、ある意味納得できますが、いずれかのファンドで期待するような値上り益(転売益)が得られず損失が生じるような場合に運営事業者の財務状況への影響が大きい構造であることは理解しておきましょう。
とはいえ
現状は売上高総利益率25%と高粗利物件の売却に成功しているという事実を理解する一方で、
将来については「現在資産として抱えている不動産が利益を生むか次第」という構造であることも合わせて理解して投資判断をお願いします。
※決算の見方については、別記事「
不動産クラウドファンディング事業者の決算チェックポイント」で解説していますので、興味を持った方はご欄下さい。
カチデベロップメント株式会社 決算情報(BS)
項目
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2024年03月31日
|
2023年03月31日
|
2022年03月31日
|
全サービス平均
|
総資産
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22億9,681万円
|
14億7,299万円
|
5億6,885万円
|
–
|
純資産
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1億6,021万円
|
1億4,930万円
|
1億4,395万円
|
–
|
自己資本比率
|
6.98%
|
10.14%
|
25.31%
|
21.39%
|
運用中資産規模 AUM(※)
|
21億2,000万円
|
–
|
–
|
–
|
AUM÷純資産
|
13.23
|
–
|
–
|
9.73
|
現預金
|
2,914万円
|
1,713万円
|
7,204万円
|
–
|
現預金比率
|
1.27%
|
1.16%
|
12.66%
|
11.31%
|
※直近1年間のファンドの募集額に運用期間(年換算)を乗じることで、現在運用中ファンドにおける投資家からの出資金規模を算出。(当サイト独自指標です)
カチデベロップメント株式会社 決算情報(PL)
項目
|
2024年03月31日
|
2023年03月31日
|
2022年03月31日
|
全サービス平均
|
売上高
|
7億3,870万円
|
9億5,717万円
|
8億5,000万円
|
–
|
売上総利益
|
1億8,608万円
|
1億4,755万円
|
2億3万円
|
–
|
売上総利益率
|
25.19%
|
15.42%
|
23.53%
|
19.88%
|
営業利益
|
1,849万円
|
2,971万円
|
3,809万円
|
–
|
営業利益率
|
2.5%
|
3.1%
|
4.48%
|
3.96%
|
経常利益
|
1,729万円
|
1,029万円
|
1,605万円
|
–
|
経常利益率
|
2.34%
|
1.08%
|
1.89%
|
2.71%
|
※2024年10月時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選32サービス」の平均値です。
まとめ:「victory fund」とは?
「victory fund」は、不動産クラウドファンディング業界においてもかなり高い利回りが得られる一方、一定のリスクがあることも理解が必要な「ハイリスクハイリターン」型サービスです。
とはいえ、不動産クラウドファンディングに限らず、どのような投資にも元本保証はなく、リスクとリターンのバランスが取れていることが重要です。
「victory fund」はリスク相応の高いリターンを設定しているファンドですので、ハイリスクハイリターン型の投資であることを理解の上で、分散投資先として検討する価値が十分あるサービスではないでしょうか?
最後に
ここまで「victory fund」の魅力と留意点をご説明しました。
不動産クラウドファンディング投資は堅実な利回り投資が期待できる投資商品ですが、万が一の運営事業者の倒産リスクの可能性も踏まえ、分散投資が非常に重要になりますので、新たな投資先候補として検討されるのは、いかがでしょうか?
なお、当サイトではリスク分散の観点で、複数のサービスに対する分散投資を強く推奨しており、投資先サービスやファンド探しに役立つ情報の収集、掲載に努めていますので、他サービスについても是非ご確認下さい。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績10ファンド / 1,000万円以上。今後もコンスタントに年間10ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士
「victory fund」は不動産特定共同事業法に基づき提供される投資型クラウドファンディングサービス
「victory fund」は、不動産特定共同事業法(以下、不特法)に基づき厳しい規制やルールのもとで提供される、投資型クラウドファンディングサービスです。
不動産クラウドファンディングとは、「不動産特定共同事業法(以下、不特法)」という法律に基づき、国土交通省・都道府県から許可または登録を認められた事業者のみが投資家に提供可能な投資商品であり、以下のようなメリット・強みを持つサービスです。
不動産クラウドファンディング投資のメリット・強み
- 株式のような値動きがなく、堅実な配当利回りが期待できる
- 出資金の使途は対象不動産運営に関するものに限定し、リスクを限定
- 優先劣後構造で、ファンドで損失が生じてもまず事業者が負担
- 契約書は行政の審査を経ており、不当に不利な心配がない
- 面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ
- ただし元本保証はないため、複数サービスへの分散投資は重要!
不動産特定共同事業法は厳しい投資家保護のためのルールを定めているため、サービスやファンド運営を行う事業者は全て、このルールに従って投資家保護に取り組んでいます。
(上記のうち、優先劣後構造については厳密には法律に定める義務ではないため、ヤマワケエステートなど一部該当しない事業者が存在します。)
「victory fund」についても当然東京都知事の許可を取得しており、サービスやファンド運営についても行政の監督を受けています。
(カチデベロップメント株式会社:不動産特定共同事業 東京都知事 第149号)
不動産クラウドファンディングに共通する特徴や制度については本サイトの
「不動産クラウドファンディングとは?」で解説していますので、ご確認ください。