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TECROWD80号ファンド「Osaka City Data Center」現地レポートとチェックポイント

【2025年4月20日 9:30 PM】

TECROWD80号ファンド「Osaka City Data Center」とは

2025/04/22 18:00〜一般募集を開始する不動産クラウドファンディングです。
ファンドの骨格としては、洪水時の浸水被害エリアに立地する、築40年を超える旧耐震基準ビルの地下1Fスペースをデータセンター用に改修し、年間賃料収入4.8億円を原資に、想定利回り11.5%の配当をめざすインカムゲインファンドです。
立地面からも、建物設備面からもデータセンター用地としての適正が決して高いとは言えない物件ですが、物件取得額4.9億円に対し、30億円規模の大規模な改修工事を実施することでデータセンターとしての収益化をめざす、というかなり大規模な開発行為を伴うハイリスクハイリターン型のファンドと言えるでしょう。

なお、当サイトは、「管理人がこれまでに投資した、または、投資したいサービス」を掲載しており、管理人がサービス事業者の決算や財務面で懸念を感じるケースや、ファンドの事業内容やアセットタイプの理解が難しいものについては掲載しないこととさせていただいているため、これまでのところ、後者に該当するテクラウドについては掲載できていません。
一方、テクラウドについては当サイトの掲示板では複数回の問い合わせがあり、サイト閲覧者の関心が高い様子ですので、難解なファンドに感じるものの、事業内容に関する理解を深めるべく、可能な範囲で調査の上で解説記事を作成しました。
現時点で得られた、理解できた情報の範囲では投資判断が難しいという結論ですが、チェックポイントすべきと感じたポイントをも開設していますので、参考にご覧いただければ幸いです。

<現時点ではテクラウドは掲載していませんが、管理人が実際に投資した、または投資したい厳選36の不動産クラウドファンディング情報>

2025年4月20日 現地視察レポート

対象ビルは大阪の阪急淡路駅から徒歩10分ちょっという立地なのですが、近くを通る機会がありましたので、実際に現地の立地や設備を確認してみました。

現地の状況① 外観と浸水対策

3棟の分譲マンションをまたがる地下スペースの一角をデータセンター化して運用するという計画です。
当該立地は大規模な水害発生時に浸水するエリアとなっており、マンションの1Fスペースは水害にも強い高さにある一方で、ファンドが保有する地下1Fは周辺道路よりも低い位置に立地しています。
一応各方面にシャッターがついてはいるのですが、完全に浸水を止めるようなものではなく、現状は浸水被害に対する十分な対処がされた設備とは言えない状況でした。

外観1
外観1
外観2:浸水への対処状況
外観2:浸水への対処状況

現地の状況② テナント状況

今回のファンドでは、地下1Fの5,530.62㎡分の区分所有権を取得する計画です。
専有面積全体の確認はもちろんできませんでしたが、現地では既に、テクラウドを運用する「TECRA株式会社」のロゴの他、本件ファンドではマスターリース事業者の役割を担う「株式会社 AMATUHI」が運営する訪問看護ステーションが確認できました。
テクラ社のロゴがあったスペースは奥に広いスペースがありますので、現在ロゴがあった部分は、データセンター開設後は入退室ゲートの一つとなるのかもしれません。

また、本ファンドが理解しにくいと感じる点の一つに、データセンター運営事業実績等のない「株式会社 AMATUHI」がマスターリース会社を担うという点があるのですが、拠点を見る限り、データセンターの運営に関するノウハウや人員を抱えている、というようにはやはり考えにくく感じました。

テナント状況
テナント状況
テナント状況 テクラ社事務所
テクラ社事務所
テナント状況 アマネク訪問看護ステーション
アマネク訪問看護ステーション

現地の状況③ 建物外からの入退場ルート

データセンターを開設するためには、巨大でかつ重量もある電源関連設備やラック、ケージ類などの他、入退場者を限定するセキュリティゲートなどの設備の構築が必要となるでしょう。
また、データセンター設備が完成後は、実際にデータセンターを利用する事業者がサーバ類などの精密機械の搬入も行います。
AIサーバ用途だと、かなり巨大な機器を搬入することも想定されますので、当然大きめのサイズの台車を通せる搬入ルートの確保が必須です。
現時点では階段を通るルートの他、地下駐車場ルートも大きな機械類を通すには制約の多いルートしか確認できませんでした。

一般には業者用の荷物搬出入ルートは一般ルートと別に用意する必要がありますので、これ以外に専用ルートがある、または、今後開設することが想定されそうです。

入退場ルート① メインルート
入退場ルート① メインルート
入退場ルート② メインルート
入退場ルート② 駐車場ルート

TECROWD80号ファンド「Osaka City Data Center」のチェックポイント

TECROWDについては、海外の物件を扱うものや障がい者グループホームを20件以上扱うなど、管理人には事業性などを評価することが難しい案件が多いということで、これまでサイトには掲載していません。
今回のファンドは比較的管理人の理解しやすい事業領域であるデータセンター事業であり、かつ、国内物件ということで、本件の動向をウォッチすることで、サービスの理解を深めることができるのでは、と考えて調べてみたのが本件記事の契機です。

ただ、確認を進めていくと、本件データセンターは管理人が知る一般的なデータセンター開発とはかなり異っており、少し特殊な物件である可能性がありそうです。
そのため、このような事業モデルについて十分な知識がない故か、合理的な想定や理解がしきれないことが多々ありますので、現時点ではその理解困難に感じた点を中心に、チェックポイントとして触れさせていただきます。

管理人は現時点でこれらのチェックポイントに関する対処策などを想定し、解説することができなかったのですが、投資を検討する方自身でも、一度考えたり、確認していただければ、と思います。
30億円の投資をする巨大プロジェクトですので、テクラ社独自のノウハウや工夫でこれらに対処していかれることになるのだと想定されます。仮に事業者に問い合わせても、どこまでその独自ノウハウを開示いただけるかはわかりませんが、このビジネスを成功させる秘訣がわかれば、とてつもない価値があるかもしれません。

チェックポイント① 空調に必要な階高/天井高を確保できるか

データセンターの特長として、電力消費の多いサーバ類やストレージを多数設置することで、単位面積あたりの電力消費量と発熱量が非常に大きいという特長があります。
特に「AIデータセンター」と呼ばれるものでは、従来のサーバ類の数倍の電力を消費するため、旧世代のデータセンターでは空調能力が追い付かず、AIデータセンター専用の建物をゼロから開発することが必要になるといったことも実際に生じます。
空調には様々な工夫がされますが、その際に「天井高/階高」は非常に重要な要素になります。

以下にデータセンター用語集の開設リンクを設置しますが、4.4mから6mの階高が必要、とされています。
これは、データセンターではサーバ類を設置するラックの高さが2m程度ある上、高電圧の電源や光ファイバケーブルを敷設するためのフリーアクセス床の深さが必要なことに加えて、排熱を効率的に行うためのエアフロー確保の上で必要になります。
もし、階高が足りないといったことが起きると、十分な空調性能が確保できなくなるため、AIデータセンターにおいては致命的な悪影響(収益性や仕様面の課題)が生じる可能性があります。
(なお、フリーアクセスの高さが確保できない、といった問題が仮に生じれば、安全性や保守性の観点で空調以前のもっと大きい問題になり、データセンターとしての使用自体に問題が生じます。そのため、フリーアクセス化は必須要件だと想定します。)

日経クロステック データセンター用語集

ところが現地を確認すると、共用廊下部分の天井高が2.5m程度とかなり低い作りでした。
もちろん専有部、特に広めのテナントスペースがある部屋の天井はもう少し高い作りになるのだと思いますが、階高自体は設計上決まっている中、改修工事等を通じて必要な天井高やエアフローを確保できるのか、が、データセンターとしての性能や評価に大きな影響を与えそうです。
データセンター化プロジェクトが動き出せば、かなり大がかりな工事実施が必要になることが想定されます。(工事費30億円というのは、このあたりの工事も考慮されているかもしれません。)

なお、この天井高問題は、後述するチェックポイントよりも難易度が高い可能性があります。
というのは、建物の階高は、物理的に後から変更が効くものではありません。
特に本物件は、地上部には3棟のマンションが立地していますので、地上階と地下階の間部分には、下水配管や電力用配管、通信用配管など、マンション全体としての共用設備が存在している可能性があります。
そうなると、地下1Fの専有部の所有者が希望したとしても、天井高の改修には限界がある可能性がありますので、空調性能≒電力容量を十分に確保できる設備に改修できるか、というのは、大きなチェックポイントとなるでしょう。

チェックポイント② データセンターの常識を覆す、超高利益率/低原価率の事業収支計画をどのように実現するか

前述の通り、データセンターでは、サーバを設置する空間自体の提供にかかるコストだけではなく、電力や空調に要するコストが非常に大きくなります。
私も正確な全体の原価管理をした経験自体はないのですが、関わったデータセンター事業においては、概ね提供料金の20%~40%程度が電源・空調関連費用という原価構造でした。
AIサーバが出る前の時代ですから、AI用データセンターとなれば、電源や空調が占める原価率は、もっと高まっているのでは、と管理人は想定していたのですが、TECRAWDが提供する本件データセンター収支を確認すると、なんと、電源関連コストが管理費込でも賃料収入の4.4%という、非常に安く済むというシミュレーションとなっていました。
正直、私の知るデータセンタービジネスとは、「桁違い」に安い電源コストで運営する計画となっています。

また、事業利益はなんと、賃料収入の84%水準と、原価率が16%程度で運営できるという非常に高い利益率をめざす計画となっています。
これは運営事業者報酬5%(2,400万円)を含めたコストですので、それを除けば、なんと利益率は89%に近い水準と、非常にローコストでデータセンターを運営してしまうという事業計画となっていますので、どのようなコスト低減化工夫がされるのか非常に関心が惹かれるポイントですが、残念ながら私の知識ではとてもその実現手法は思いつきませんでした。
火災保険や固都税を見てもレジ系物件水準となっていますが、巨額の投資により構築する固定資産の税金や保険が必要になる2年目以降にはこうはいかないはずですので、これ以上の収入計画を立てる必要が出る可能性が高いのではないでしょうか。

若干余談ですが、本ファンドの運営者報酬はランニング部分だけではなく、初期のファンド組成時の報酬が大きく、なんと組成時点で2億円を事業者が報酬として取得します。
資金調達額の約7%水準のコストを、ファンド組成の瞬間に支払うということですが、こういったファンド組成時のコストを比較的高めに設定しているヤマワケエステートの場合で、3.5%から高いもので4.5%ですから、本ファンドでは組成時の事業者が報酬が大きいファンドと言えます。(ちなみに私募ファンドなど、プロ向けファンドにおける取得時報酬は1%などといった水準で、それらと比べても非常に高いです)
運営事業者の劣後出資金が1.75億円ですので、拠出した劣後出資金以上を組成直後に事業者が報酬として2億円受け取る構造ということは、実質的に劣後出資ゼロのファンドという構造とみる必要がありますので、非常にハイリスクハイリターン型のファンドという理解が必要です。

年間料金 構成比
賃料収入 480,000,000円
管理費・水道光熱費 21,000,000円 4.4%
固都税 4,100,000円 0.9%
火災保険料 1,000,000円 0.2%
支払い利息 12,031,831円 2.5%
15,000,000円 3.1%
営業者報酬 24,000,000円 5.0%
残利益(配当原資) 402,868,169円 83.9%

チェックポイント③ マスターリース会社の役割と事業収支構造、配当原資

本ファンドでは前述の通り、「株式会社 AMATUHI」という企業がマスターリース会社となるようです。
一方、当サイト閲覧者がテクラウド者に問い合わせたところ、以下のような回答を得たとのことです。

・データセンター化工事終了までに約1年かかる
・賃料収入を安定化させること等を目的に「株式会社 AMATUHI」によるマスターリースを採用

ということは、ファンド組成後1年間の配当原資として、「株式会社 AMATUHI」が支払う約4.8億円の賃料収入を、一時的に「株式会社 AMATUHI」が負担する構造となることが想定されます。
(データセンターが完成していないため、データセンター利用者からの実際の収入が入らないのに、投資家への配当原資4.8億円の支払いがなされる)

株式会社AMTUHIにとっては、この巨額の4.8億円賃料支払い原資を、どのように創出するのか、という大きな課題が生じるはずです。
加えて2年目以降も、4.8億円を超えるデータセンター運営収益を稼ぐことができなければ、ファンドに支払う賃料を賄えず赤字運営となってしまいます。
賃料収入安定化を目的にマスターリース事業者をかませる場合には、その支払い余力、創出できるキャッシュフローが支払い賃料水準を大きく上回っていないと意味がありませんが、この4.8億円という賃料支払いを保証できる企業なのか、投資家自身の目でも評価、判断することが望ましいでしょう。

ただ、管理人が知りえる限りの情報からは、正直信用力について十分な情報が得られないのが実情でした。
例えば「株式会社 AMATUHI」とテクラ社がこれまで手掛けた障がい者グループホーム事業では、3.5億円の不動産をテクラ社が構築し、年間賃料4,800万円でAMTUHIに賃貸する、といった事業でファンド組成しており、決して「株式会社 AMATUHI」がキャッシュリッチで手元資金を潤沢に抱えているわけではない可能性を感じました。
というのは、現在の拠点開設においては高配当の不動産クラウドファンディング事業者に建物を建築してもらい、それを賃貸している事業構造ですが、年間5億規模の余剰キャッシュフローが出るくらいに事業が安定しており、かつ、手元にも余剰キャッシュを潤沢に抱えているのであれば、建物の取得に際して低金利の銀行融資を引ける可能性があります。
これだけハイリスクなマスターリースを引き受けるだけの高い事業性を持つといった情報は公開情報の範囲では管理人は見いだせていませんので、管理人としては、本ファンドに出資判断を行うことができませんでした。

また、株式会社AMTUHI社がデータセンター運営においてどのようなノウハウを持ち、どのような役割を担うについても、管理人の情報収集能力では全く想定ができませんでした。
データセンターの運営には固有のノウハウが必要ですが、株式会社AMTUHI社は障がい者グループホームの運営や、本ファンド隣接拠点で運営する訪問看護ステーションなど、看護福祉領域の事業者という色合いが強いように感じます。
エンドテナント、または、データセンターオペレーターとの賃貸借契約には、かなり高度な専門性が必要ですが、そのような人材の配置やテナント折衝を行う人材を確保しているのか、できるのか、が今後問われることとなるのではないでしょうか。

チェックポイント④ マスターリースにより、事業動向が視えなくなるというファンド設計

最後に、マスターリース事業者が入ることで、投資家にとっては賃料の安定性というメリットが得られる一方で、その安定性は事業者の信用力以上の価値は生まない他、エンドテナントの情報が視えなくなるため、ファンドが行う事業の透明性を損なうというデメリットも有ります。

前述の通り、当初1年間の収入がなくともマスターリース会社が4.8億円の賃料支払いを実施することからもわかるように、ファンドの目の前の配当は、実際の事業で収入を生まない状態でも入るという構造となり、データセンター事業が計画通り立ち上がっているのかを表さない構造となります。
例えば、エンドテナント(データセンター利用者)の情報を仮に事業者に問い合わせても、事業者にとっては直接のテナントが株式会社AMTUHI社であり、その先のエンドテナントの情報開示はできない、という回答となってしまいますので、ファンドの運営がうまくいっているのかを知るすべがなくなる、という意味あいがあります。

ファンドが行う事業の透明性という観点では、本ファンドは非常にわかりにくいファンドとなっています。
マスターリース形態となっていることのメリット、デメリットについては、個々の投資家自身が、投資判断時に考慮、判断してもらいたいと思います。

チェックポイント⑤ 電源構成など、事業計画の重要ポイントが未定の可能性

前述しましたが、当サイト閲覧者がテクラウド者に問い合わせたところ得られた回答の中で、以下の記載がありました。

・無停電電源装置(UPS)のスペックは現在検討中
・当面は高圧受電(6.6kV受電、契約電力1,999kW)を想定しているが、特高受電(22kV受電、契約電力10,000kW)に増強することも検討

データセンターでは、電力とそれに伴う空調は設備仕様や原価構造に非常に大きな影響を与えるのですが、それがファンド募集開始時点で決まっていない、という可能性があるようなのです。
投資を検討するあなた自身がもし、本データセンター事業の決裁者だったとして考えてみてください。
5億円弱で不動産を取得し、そこから30億円の改修工事等の設備投資を行う事業計画稟議がまわってきたとして、その時点で主要仕様である電力仕様が決まらないまま決裁できそうでしょうか?

私なら、電力と空調設計を実施の上で、その投資回収に資する顧客を確保できるだけの販売計画までをトータルで見てはじめて、決裁承認サインをしたいところです。
30億円という投資計画ですから、それなりの規模の会社であっても、取締役会付議であったり、上場企業でも中堅以下の不動産会社なら、開示基準に該当してしまうくらいの事業なので、このような検討中段階で投資判断がされているというのは、管理人が理解しにくさを感じる要因の一つです。

まとめ

これまで大阪でデータセンター立地といえば、IX設備や、インターネットバックボーン事業者や携帯キャリア等のNW事業者との接続点が集中する拠点の他、上町台地という地盤が堅牢と言われる立地(断層もあるのですが)などが好まれましたが、本件では、そのどちらも外した立地において、築40年を超えるビルの地下街に大規模改修を行う、というかなり特殊性の高いプロジェクトです。
浸水災害対策に加えて、古い設備仕様のビルの電源や空調をデータセンターで求められるグレードに改修する、という一大事業をこの立地で行うということで、同業者視点でも非常に興味が惹かれるプロジェクトだと感じます。

が、このような特殊な事業には極めて高い専門性が必要なのか、管理人には結局、高い収益を生むデータセンター事業を成り立たせるだけのこの物件や立地の優位性や合理性などを想定することはできませんでした。
私の力不足が大きく残念ですが、事業構造が理解できるというにはほど遠い結果であったため、当サイトへの掲載は、今後も見送り、という結論とさせていただくこととしました。

とはいえ不動産クラウドファンディングには数多くのサービスがあり、テクラウドほどの高利回りサービスは多くはありませんが、リスク分散の観点でも、複数サービスへの分散投資をお勧めしております。
他サービスにも興味がある方は、当サイトのファンド情報を参考にご覧いただければ幸いです。

<現時点ではテクラウドは掲載していませんが、管理人が実際に投資した、または投資したい厳選36の不動産クラウドファンディング情報>
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