「FUNDI」とは?
2024年11月22日に1号ファンドの募集を開始する、新しい不動産クラウドファンディングサービス(※)です。
最大の特徴は、
今後成長が期待されるデータセンター投資に参画できるというファンドである、という点です。
クラウドサービスや生成AI市場は生活やビジネスに欠かせないものとなってきており、そのサービスを支える基盤としてのデータセンター市場も拡大を続けています。
日本は災害が多い国ではありますが、世界的に見て政治や経済が安定しており、海外ファンドなどは、国内のデータセンター投資に力を入れているのは事実であり、業界では成長市場という見方が確かにされています。
ではなぜ不動産クラウドファンディングで扱われることが少なかったのか?そして、なぜ、FUNDIはそれを扱えるのか?といった疑問点については、想像できることを本記事後半で解説します。
先に結論を書くと、
本サービスは、「ハイリスクハイリターン」の分散投資枠として、損失かアップサイドリターンいずれが出ても困らない投資枠で投資するのは、ありではないか?というのが管理人の考えです。
今回募集するようなデータセンター用地の転売ビジネスは、ビジネスとしての可能性は確かにありえると思います。
契約約款も、COZUCHIと同様、
「売却益の25%または想定配当利回りの高い方」を投資家に配当するという条件となっていますので、利益が上振れた際には、想定利回り12%という高い利回りが、更に上振れる可能性があります。
(この契約約款は実はかなり珍しく、サービススペックを先に定め、計画的に準備をしてきたと想定されます。)
が、
データセンターはマンションなどと違い、売買事例が少なく、それを扱うプレーヤーも極めて限られ、事業プランの検証を外部から行うことが困難である他、事業者が想定していた事業プランがうまくいかなかったときに、リカバリーできるか、という点では、マンション投資などに比べてはるかにハイリスクではありますので、損失が出ても問題ない範囲の投資枠での分散投資を前提とした検討をいただければ、と思います。
なお、管理人の個人的な考え方ですが、不動産クラウドファンディングサービスは、サービス立ち上げに1,000万円規模のシステム投資が必要であり、かつ、初期の投資家の投資募集にかかるマーケティングコストは募集額の10%を軽く超えるケースが多く、サービスを新たにスタートする事業者は投資資金を悪用して逃げても儲からないため、サービスを新たに開始する事業者は中期的な狙いがある、または広告効果を狙うケースが多いと考えています。
ただし、FUNDIの場合、初回でいきなり12億規模を集めることに成功するとしたら、仮に資金を流用して逃げた場合には儲かってしまう可能性はありそうです。
もちろんFUNDIが当初からそのようなことを企んでいる可能性が高いとは思っていないのですが、「性悪説」で疑ってかかった見た時に、当初募集規模が小さいクラファンのケースでは言える「事業者が悪意者であっても今逃げたら儲からない」という構造はFUNDIには当てはまらなさそうです。
管理人は基本的には新しいサービスを本格的に立ち上げるサービスは「ねらい目」と考えるケースが多いのですが、本サービスのような規模ではそうとは言えず、しっかり中期的なサービスの成長ビジョンと、それが実際の収益性のあるビジネスなのかを十分吟味して投資判断する必要性が高いのではないか、と思います。
※不動産クラウドファンディングサービスは、不動産特定共同事業法に基づき提供される不動産投資から得られる利益を原資に配当、元本償還を行う投資商品です。
不動産クラウドファンディングサービス共通の特徴については記事後半で解説します。
FUNDI ファンド提供状況
項目
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直近6カ月
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累計
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全サービス平均
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利回り
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10%
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10%
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6.34%
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劣後出資比率
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5%
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5%
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19.15%
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組成件数
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2件
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2件
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–
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資金調達額
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13億8,750万円
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13億8,750万円
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–
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運用終了額
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–
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0円
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–
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※2024年11月17日時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選33サービス」の平均値です。
「FUNDI」のサービスの魅力、特徴
「FUNDI」のサービスの特徴は、「データセンター投資」という、これまでの不動産クラウドファンディングにはない投資機会を提供する、「ハイリスクハイリターン型ファンド」と言えるでしょう。
サービス開始時に掲載されている事例は、「データセンター用地開発で想定利回り12%」の1号ファンドと、「大手コリビング事業者の物件を取得するインカム型で想定利回り8%」の2号ファンドとなっており、いずれも一定のリスクがあるものの、かなり高いリターンを設定されています。
加えて、
FUNDIの契約約款では、「売却益の25%または想定配当利回りの高い方」を投資家に配当するというパターンとなっており、高値での売却ができた場合に、想定リターンから上振れる可能性があります。
データセンター用地はブレ幅の大きいビジネスですので、
損失リスクはもちろんあるのですが、一方で希少な開発用地を得られた場合、
売却先や売却方法次第では、大きな上振れの可能性があります。
リスクを投資家が分担する分、リターンが大きくなった場合には、投資家にも上振れ分がシェアされる、という、いわゆるセイムボート型となっており、ハイリスクな事業パターンを踏まえた良い契約条件ではないでしょうか。
「FUNDI」の魅力、特長
- 成長が期待されるデータセンターに関わるビジネスに投資可能
- 高い想定利回りのハイリスクハイリターン型ファンド
- リスクがある反面、リターンが上振れれば投資家配当も上振れるファンド設計で期待が更にアップ
データセンター投資とはどんなもの、どんな規模?
データセンターには多くのパターンがありますが、FUNDIが扱うタイプは、いわゆる「ハイパースケール」または「生成AI用」と呼ばれる、クラウド事業社や生成AI用のサーバ郡を設置するデータセンター用地を取得し、投資ファンドやデベロッパーに土地を再販することで売却益を得るモデルが中心となると想定されます。
この場合、データセンター全体の完成までに必要な投資規模は数百億円~1000億円を超える規模になりますので、不動産クラウドファンディングでは、あくまで土地までを扱うイメージでしょうか。
(都市型の場合は条件が異なりますが、土地代が高く不動産クラウドファンディングの規模では厳しいでしょう。)
FUNDIの1号ファンドでは、18,000坪程度の土地で13億円程度の投資募集をかけるのですが、実際に、海外ファンドが2023年に国内に投資した事例では、類似規模の土地を20億円で取得し、4年間で総額1,250億円の投資をしてデータセンターを開業する計画となっており、開発用地としての適性があれば、こういったビジネスは成り立ちうる数時感ではあります。
データセンター用地に求められることは、地盤の堅牢制や消費地との適度な距離(※)の問題もありますが、やはり安定した電力です。
まず、生成AIやクラウド用では、同じ容積内に高密度にサーバが設置されるため、大量の電力を消費しますので、大きな容量の電源引き込みが必要です。(特に生成AI)
加えて、停電で止まるようなデータセンターなどありえないため、停電時に備えた発電装置や蓄電設備は拠点内に置くにしても、電柱の倒壊や断線に備えた電力の2ルート化など、電力調整にはデータセンター特有の難しさがあります。
FUNDIの1号ファンドは、土地を取得し、この「電力供給契約」の調整を進めることでデータセンター用地としての蓋然性を高め、売却益を狙う、というファンドとなります。
もちろん
このような巨額のビジネスを扱える事業者は多くはなく、海外の投資ファンドや、国内ファンド、大手デベロッパーなどをターゲットとする様子ですが、記載の通り、ターゲットはある程度限られた相手となるため、期待した売値を大きく上回る可能性も大きく下回る可能性もある、そういったビジネスと考えるのが良いでしょう。
逆に、国内にデータセンター適地がたくさんある、というわけではありませんので、土地を欲しい事業者が少し増えれば、競争により大きく価格が上がる可能性はあります。
データセンターの総事業費に対して土地の価格が小さく、かつプレーヤーも土地供給数も限られるため、需給や競争次第で大きく相場が変動するハイリスクハイリターン型のため、「売却益の25%」を配当するというFUNDIの契約条件は、非常にマッチした条件だと感じます。
※他のデータセンターやインターネットバックボーンとは光ファイバーでつなぐとしても、光でも距離遅延は若干は発生しますので、クラウド型では距離遅延の問題は完全には無視できません。
一方で、生成AIは距離遅延より処理時間の影響があり、多少遠くとも良い、といった考え方になるようです。
「FUNDI」を運営する「株式会社FUNDI」とは?
不動産クラウドファンディングは、「面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ」する投資商品です。
投資先を選ぶ際には、ファンド運営事業者の不動産事業のノウハウや財務状況を確認することが非常に重要になります。
そこで、利回り不動産を運営する「株式会社FUNDI」をチェックしてみましょう。
株式会社FUNDIの基本情報
まず、株式会社FUNDIの基本情報を確認します。
2018年創業の不動産会社です。
企業ホームページを確認すると、不動産クラウドファンディングの他、不動産賃貸・売買を取り扱っている企業です。
が、後述する企業決算も含めてみると、
不動産クラウドファンディングで扱うような不動産の買取再販(用地転売)や、収益不動産の管理運営などの実績は全くない企業です。
当然、1号ファンドで行うとしているデータセンターに必要となる大きな電力量の供給契約や、電力供給ルートの調整などの経験を積んだ企業、ということもないでしょう。
決算については後程解説しますが、社員への給与支払いを含む「販売費および一般管理費」が直近年度でも1500万円程度と、専属社員が2ー3名いるかいないか、といった企業で、期末保有不動産はありません。
その割に、資本金1億円を投資し、その資金が余っている分は有価証券に投資している、という決算状況。
つまり、これまでは
不動産仲介やコンサルなどで一定の収益を稼ぎながら、不動産クラファン事業のスタートに向けた不特法許可の取得や、システムやマーケティング準備などを行っていた会社、とみるのが自然でしょう。
データセンタービジネスという大きな事業構想を持ちつつ、地道に事業化の準備を担ってきた会社とみるとしても、データセンターに関するビジネス経験は全くない会社であるという点は、理解しておく必要がありそうです。
一方で、この不動産クラウドファンディングサービスは、サービス開始までに十分な準備期間を持ち、ハイリスクハイリターンに対応した利回りが上振れる契約約款の取得や、用地取得などの準備を進めてきたはずです。
用地取得やビジネススキームを立ち上げてきたのは株式会社FUNDIの社員数名、とみるよりは、株式会社FUNDIのオーナーや関連企業、スポンサー等が主体となってこの事業を立ち上げ、その事業の一部であり、不特法クラファンの事業主体が株式会社FUNDIである、という見方をするのが適切なのではないでしょうか。
実際、用地を売却する側の立場では、必ず買い手の信用力チェックを行います。株式会社FUNDIや、まだ始まっていないサービスであるFUNDIの信用力だけではなく、FUNDIのオーナーや関連企業、スポンサー等に信用力がなければ、この物件の仕入れは実現できないと考えられます。
更に複雑なことに、FUNDIのファンドでは、「SPC」と連携してビジネスを行っていることが明記されています。
ここでいう「SPC」とは、投資家から出資を募るためのファンドの器としてオーソドックスな方法になるのですが、このSPCにも当然、出資者とファンド運営者(いわゆるAM会社)が存在しているはずです。
今回のデータセンター用地転売といった規模のビジネスを扱うSPCはそれなりの資本やAM会社がついていないといけませんが、それがどういった企業や資本なのかは、FUNDIサイト上では確認できません。
株式会社FUNDIに本件ビジネスに関する実績がない中、SPCのスポンサーやAM会社が不明、という点では、投資家の立場では、誰に自身の投資資金を預けるのかわからない、といった状態になることは理解の上で投資判断が必要です。
管理人個人的には、本件のビジネスの可能性自体は感じますので、利回りの上振れチャンスも一定あるように感じますが、同時に、大きな損失が出ることも覚悟の上での投資判断が必要なファンド、と考える必要があると考えています。
運営企業情報
項目
|
情報
|
運営企業名
|
株式会社FUNDI
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代表者
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代表取締役 佐藤 悠大
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住所
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東京都渋谷区広尾1丁目3-18広尾オフィスビル3階
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TEL
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03-4500-2660
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会社設立
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2018年09月
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「株式会社FUNDI」の決算情報チェック & 業界平均との比較
次に、当サイトに掲載している「株式会社FUNDI」の決算を見てみましょう。
企業の財務の健全性を確認できる「BS」を見ると、自己資本比率が高く見えますが、それもそのはず、不動産クラウドファンディング事業に必要な資本金1億円に対して、不動産を何も保有していないのです。
一方で、1億円強の純資産において、1号ファンドでいきなり12.8億円の不動産を取得、運用するということで、現状の決算を見ても何もわからない、というのが実態ですね。
企業の利益を稼ぐ力があらわれる「PL」を見ると、売上高に対して売上高総利益率が100%となっています。
これは、要は不動産を仕入れて再販する、という買取再販型の事業は全く行っていない、ということでしょう。
売上は仲介フィーやコンサルフィーなどで利益を上げている状態になっていますが、これから行う不動産クラウドファンディングビジネスはこれまでの事業とは全く異なるため、現状のPLを見て稼ぐ力を判断することも不可能です。
逆にいえば、これまでの事業と、ファンドで行う用地再販ビジネスでは規模が全く異なるため、この企業に投資する、というより、1号ファンドが行うデータセンター用地の再販ビジネスに投資するかどうか、という判断をするのが良いでしょう。
(運営企業のコーポレートリスクとファンドのリスクがほぼ一体の関係、という意味では、実質上、株式会社FUNDI自体がFUNDIという不動産クラファンサービスを担うSPCのようなもの、ですね。)
※本サービスではあまり参考になりませんが、一般的な不動産会社の決算の見方については、別記事「
不動産クラウドファンディング事業者の決算チェックポイント」で解説していますので、興味を持った方はご欄下さい。
株式会社FUNDI 決算情報(BS)
項目
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2023年09月30日
|
2022年09月30日
|
2021年09月30日
|
全サービス平均
|
総資産
|
1億1,976万円
|
1億984万円
|
1,702万円
|
–
|
純資産
|
1億1,328万円
|
1億209万円
|
1,088万円
|
–
|
自己資本比率
|
94.58%
|
92.94%
|
63.93%
|
20.03%
|
運用中資産規模 AUM(※)
|
13億8,800万円
|
–
|
–
|
–
|
AUM÷純資産
|
12.25
|
–
|
–
|
10.79
|
現預金
|
766万円
|
2,091万円
|
1,698万円
|
–
|
現預金比率
|
6.4%
|
19.04%
|
99.72%
|
9.88%
|
※直近1年間のファンドの募集額に運用期間(年換算)を乗じることで、現在運用中ファンドにおける投資家からの出資金規模を算出。(当サイト独自指標です)
株式会社FUNDI 決算情報(PL)
項目
|
2023年09月30日
|
2022年09月30日
|
2021年09月30日
|
全サービス平均
|
売上高
|
1,539万円
|
1,927万円
|
157万円
|
–
|
売上総利益
|
1,539万円
|
1,927万円
|
157万円
|
–
|
売上総利益率
|
100%
|
100%
|
100%
|
17.98%
|
営業利益
|
7万円
|
423万円
|
42万円
|
–
|
営業利益率
|
0.49%
|
21.97%
|
26.9%
|
3.77%
|
経常利益
|
1,625万円
|
164万円
|
44万円
|
–
|
経常利益率
|
105.57%
|
8.55%
|
28.19%
|
2.62%
|
※2024年11月17日時点。比較対象は当サイトが収集対象としている「管理人が投資対象候補としたい厳選33サービス」の平均値です。
まとめ:「FUNDI」について
最後に
ここまで「FUNDI」の魅力と留意点をご説明しましたが、総括すると、
これまでのサービスにはないような事業構想や夢の大きさ、元々高い想定利回りが上振れる、というアップサイド期待はあるものの、
データセンター用地というハイリスクな案件を扱い、かつ、投資判断に本来必要な情報が不十分(運営者の経験やSPCのスポンサー、AM情報など)という特性のある、ハイリスクハイリターン型のサービス、です。
繰り返しですが、この規模のデータセンター開発は、買取が可能なプレーヤーも用地の供給量も限られるため、価格の変動が大きく、流動性も低いという構造です。
安定した投資先ではありませんので、
リスクを承知の上で、上振れる可能性にかけてみたいといった投資資金を、他サービスにも分散投資することを前提に投資検討されることをお勧めします。
「FUNDI」は不動産特定共同事業法に基づき提供される投資型クラウドファンディングサービス
「FUNDI」は、不動産特定共同事業法(以下、不特法)に基づき厳しい規制やルールのもとで提供される、投資型クラウドファンディングサービスです。
不動産クラウドファンディングとは、「不動産特定共同事業法(以下、不特法)」という法律に基づき、国土交通省・都道府県から許可または登録を認められた事業者のみが投資家に提供可能な投資商品であり、以下のようなメリット・強みを持つサービスです。
不動産クラウドファンディング投資のメリット・強み
- 株式のような値動きがなく、堅実な配当利回りが期待できる
- 出資金の使途は対象不動産運営に関するものに限定し、リスクを限定
- 優先劣後構造で、ファンドで損失が生じてもまず事業者が負担
- 契約書は行政の審査を経ており、不当に不利な心配がない
- 面倒な不動産運用はファンド運営事業者にお任せ
- ただし元本保証はないため、複数サービスへの分散投資は重要!
不動産特定共同事業法は厳しい投資家保護のためのルールを定めているため、サービスやファンド運営を行う事業者は全て、このルールに従って投資家保護に取り組んでいます。
(上記のうち、優先劣後構造については厳密には法律に定める義務ではないため、ヤマワケエステートなど一部該当しない事業者が存在します。)
「FUNDI」についても当然東京都の許可を取得しており、サービスやファンド運営についても行政の監督を受けています。
(不動産特定共同事業 東京都知事 第173号)
不動産クラウドファンディングに共通する特徴や制度については本サイトの
「不動産クラウドファンディングとは?」で解説していますので、ご確認ください。
鈴木 万里夫(仮)
株式投資歴20年以上を経た後、株式・投資信託との分散投資先として不動産クラウドファンディング投資をスタート。
不動産クラウドファンディング投資実績10ファンド / 1,000万円以上。今後もコンスタントに年間10ファンド程度に分散投資を継続予定。
投資検討のために自身が欲しい情報を集約できる投資サポートサイトとしてInvestor’s EYEを企画し、現在管理人として運営中。
【保有資格】 不動産証券化協会認定マスター / 宅地建物取引士