REVOLUTION社の2025年10月期第一四半期決算から見えたこと
上場企業の連結子会社となったことで、ヤマワケエステートやヤマワケ(ソーシャルレンディング)の決算数値に関する情報が掲載されていますので、記載を抜粋します。
クラウドファンディング事業における当第1四半期連結累計期間の業績予測は売上高5,356百万円であったのに対し、実績値としては売上高6,020百万円、営業損失1,890百万円となりました。案件の早期売上高計上があり計画値を上回った一方で、販売用不動産の評価損が1,986百万円計上されたことを主因に、当セグメントにおいて大幅な損失を計上する結果となりました。
特に注目すべきところは、「
販売用不動産の評価損が1,986百万円計上された」という点ですね。
不動産会社においては、販売用不動産については、「低価法」という基準で評価する必要があるため、取得原価よりも、将来回収可能な額が下回った場合には、評価額を回収可能価額に見直し、その差額が当期の損失計上される、という仕組みがあります。
ただ、「将来に渡って回収可能ではない」というのは、損失が出るしかない、とあきらめる、ということですから、私の知る限り、多くの不動産会社では、事業として成立する可能性がある限りは監査法人に対して回収可能である事業シナリオを説明し、損失計上せずに済むようぎりぎりまで足掻くのが一般的だと思います。
つまり、今回販売用不動産の評価損をこれだけ計上した、ということは、
社内/監査法人とも丁寧に協議の結果、営業努力しても、取得原価以上の価格での売却が困難と判断された不動産を保有していた、というように想定する必要が有るでしょう。
さすがに1円の価値もないという評価になるものは多くはないでしょうから、仮に平均で30%分の評価損があったとすると、評価損が1,986百万円ということは、6,620百万円の保有資産が評価損によって4,634百万円の資産価値に見直しをされた、という計算になります。
ヤマワケエステートが運用中のファンド保有資産が300億円程度(当サイト独自収集に基づく大胆な試算)だとすると、2割くらいの保有資産で評価損があった、という可能性があります。
もちろんこの試算は、以下のような「大胆な仮説」に基づくため、具体定期な数値は推定の域を出ませんが、運営事業者と監査法人の協議の結果として、現時点では一定の損失が出る可能性があります。
<大胆な仮説>
・評価損が出た資産がヤマワケエステートの保有資産である
・評価損の割合が取得原価の30%である
<2025.3.14 20:00追記>
あくまで一般論ですが、私の知る限り、多くの不動産会社では、決算で黒字(税金支払い)が大きすぎるなどの場合を除くと、販売用不動産については、損失計上しないで済む可能性(売却シナリオ)があるうちは、評価損を計上せず、ぎりぎりまで営業努力、工夫を重ねます。
そのシナリオが監査法人にも納得いただければ、評価損を計上しないままで済む場合もあります。
その結果どうなるか、というと、うまく利益確定できればもちろん良いのですが、努力してなお、最終の売却決定時に損失が出てしまう場合もあります。
この場合は、評価損というプロセスを経ずに、売却時に初めて損失が計上される場合もあります。
つまり、現時点では、監査法人が「これはどうやっても回収可能性がないよね」と納得しなかった分だけ損失計上されているだけで、全体としてはなお大きな損失リスクが販売用不動産内に内在している可能性は否定できません。
不動産会社の販売用不動産(なんと流動資産に計上されます)には、このようなリスクが内在されていますので、この点はご注意下さい。
なお、上記と異なるシナリオ想定としては、「悪い情報を小出しにするとよりイメージが悪化するため、今回のタイミングで悪材料を全て出しきるため、あえて積極的に損失出しをする方向で協議した」、という可能性も否定しきれませんので、予断はあまり持たず、この先の状況を見ていきたいと思います。
ヤマワケエステートのファンド出資者にとっては望ましくない情報になりますが、評価損を計上することを運営事業者も納得した、という事実があることは理解するしかないでしょう。
もちろん、
評価損を計上したとはいえ最終的に高値売却できる可能性はゼロではないですし、その対象不動産が自身の投資ファンドの対象物件であるかは現時点では全くわかりませんので、今は、ファンドの運用終了、清算(配当や償還)結果を待つしかありません。
私自身も投資家の立場ですが、自分なりの視点で運営事業者や対象ファンドのリスクやリターン期待を見た上で、それなりにリスクがあることも承知で最終的な投資判断をしているわけですから、慌てず、結果を待ちたいと思います。
第一四半期決算は、元々の計画から見るとどうなのか?
過去に開示されている
2024年10月期決算について補足説明では、WeCapital社の上期は、88.6百万円の営業利益、▲42.6百万円の経常赤字という計画でした。
また、下期では大きく売り上げ・利益を拡大し、1,145.5百万円の営業利益、454.7百万円の経常黒字化という計画をたてています。下期にかなりの業績改善を計画していた、ということになります。
では、その計画に対して今回出た第一四半期の数値はどうでしょうか?
まだ上期のうちの半分(第一四半期)までしか経過していませんので計画比での進捗を判断することはできないのですが、上期で88百万円の営業利益計画に対し、第一四半期では営業損失▲1,890百万円と、かなり計画との乖離(マイナス)が大きい状況となっています。
現時点では計画の見直しや着地見込みの開示はありませんので断定はできませんが、ヤマワケエステートの出資者の視点でも、REVOLUTION社の株主視点でも、なかなか厳しい数字という見方をする必要があるのではないでしょうか。
今後、サービスの信頼回復とファンドサービスの収益性確保を料しつつ、投資家とWin-Winの関係を再構築できるのか?
そのためにも、まずは、現在運用中のファンドにおいて、どのような運用結果を確定しきることができるのか?
まだまだ予断が持てませんが、今後の動向を注意深くウォッチしていきたいと思います。